みそぎ池
江田神社を抜けた先にある「市民の森」は宮崎市の公園です。
実は私もこの土地には浅からぬご縁があり、10年ほど前に毎日この市民の森駐車場に来ていたことがありました。
なつかしいな。
朝から晩まで働いて、自分の体が一体どこにあったのか分からなかったあの時期。
全く未経験の仕事と立場に立つことになり、人の3倍働かないといけないと思い込み、いろんな業務をしていました。
あんな時からこんな今へ。
今になって振り返ると、この江田神社からみそぎ池への道をすんなりとバスツアーに入れられたのも、この阿波岐原とみそぎ池の地域を身近に感じていたからに他なりません。
うっすら曇ってきた空は見上げるのにちょうどよい光量で、空へとと伸びた枝や葉を見上げて自然のきれいな空気を思いっきり肺に入れ込むことができます。
その路傍に佇む万葉集の歌碑もまた、いい味を出してくれています。
家にあれば笥(け)に盛る飯(いひ)を草枕(くさまくら)
旅にしあれば椎(しい)の葉に盛る 有馬皇子
まるで日本全国をお人形とともに旅から旅のくまちゃんを詠んだ歌のよう。
はるか昔の祖先に想いを馳せ、いつの時代も私たちは日本人だという心を思い出させてくれるような森の小径でした。
「私は宮崎はハワイになれる可能性があると思っています!」
「そうかい。それはなんで?」
私の思いつきで唐突に始まるおしゃべりも、くまちゃんは丁寧に掬い上げてくれます。
「だって気候も似ているし、こんなに自然も多くておおらかで。こうして歩いているだけでも気持ちがすっきりしていい気分になりませんか?」
「ほんとそうだよね〜気持ちいい!」
「やっぱりハワイの人たちは自分たちの出自をしっかりと伝えていて、そこに誇りを持っているところが宮崎の人たちと決定的に違うかも知れないと感じました」
くまちゃんはじっと聞いていてくれます。
「ハワイの人たちは神話もとても大事にしているし、神様のこともみんな好き。誇り高い民なんだって思っているから自分たちを安売りすることはありません。自分たちがホクレアを目印に海をわたってきた民だって知っている。
だけど宮崎の人は自分たちがどこからきて、どんな場所に住んでいるかもよくわかっていない。どれだけこの場所が残っていることの奇跡を感じられるのかな。
私はやっぱり、子供にも大人にも、自分がいまいる背景を知ってもらいたい。
そうしたらみんながハワイの人ように、誇りを持った生き方ができそうな気がする」
そういうお話をしながらみそぎ池を目指していました。
正直私はまだこのツアーの序盤ではこのくらいの認識でした。
くまちゃんはこのときの私の言葉を否定をするでもなく、また肯定するでもなく、にこにこ笑顔で森林浴のお散歩を楽しんでいます。
このバスツアーがおわったときに私の中にはっきりと据えられたこの先の人生の羅針盤ようなもの。
そういうものが得られるツアーであるということを、主催者の私ですらまだこの時は知りませんでした。
黄泉の国とみそぎの神話
みそぎ池に残っている伝承は、記紀をご存知の方でなくてもおなじみのものかもしれません。
先ほど参拝した江田神社のイザナギノミコトとイザナミノミコトは日本最初の夫婦神。
それはそれは仲睦まじく、たくさんの神様を産み育ててきたのです。
だけどある日イザナミノミコトは火の神様を産んだショックで亡くなってしまい、イザナギノミコトは悲しみにくれる日々を送ることになります。
一目でいいから会いたい。。。
その願いを叶えるためには海の向こうにあるとされる(←地底ととらえる説もありますが私はこちらで認識しています)根の国、つまりこの世とはちがう異界へ行かなければなりません。
ここにいけば愛し君にまた会える。
そう一念発起したおとうちゃんは危険も顧みず、アポも取らずにおかあちゃんに会いにいくわけです。
突然おしかけられたイザナミノミコトはびっくり。
え、ちょ待って!
今支度してくるからこっち見ないでね!!
とご丁寧にお約束を立てまして。
読者の期待通り、そこは押すな押すなの精神でお着替えタイムを覗いちゃうイザナギ様。
そこにいたのは、変わり果てた姿の妻でした。
ひぃ!!
これは…
なかったことにしよう🥹
黄泉比良坂(よもつひらさか)の道を一目散に走るイザナギノミコト。
これには怒髪天をぬく勢いのイザナミさま。
見るなって言ったのになんで見るねん!
美しい姿だけ見せてたのに、なんでわざわざ秘密を暴くねん!
恥かかされて傷つけられたこの誇り、決して許すまじ!
生きては帰させぬゆえ…!!!
こうなるともう泥仕舞い。
やさしい思い出に浸って明日も美しい朝日に感謝して生きていたらよかったのにね。(えらそうに言うな)
女性には好きな男性に見せたくなくてひた隠しにしている瞬間って実はたくさんあるんですよ。
その努力をただの好奇心で台無しにしてほしくないですよねえ。わかる。
神代の時代から意識の高いイザナミさまに私は同情してしまいます。
一方魔物に追われ、また魔法でそれをすり抜けて、命からがらこの世へ戻るイザナギさま。
ちなみにこのときの魔法というのは、孫悟空のように軍隊を出して激しく迎え打つのではなく、投げたものから果物がなって、追っ手がそれを食べている間に逃げちゃおうっていう、めちゃくちゃかわいらしい魔法です。
だから古事記大好き🍇☺️
最後に黄泉比良坂で桃を3つ投げてレースは終了、イザナギさまの勝ち。
ただ勝ったとはいえ、奥様も変わり果てていたし、なんかえらいな魔物に追われたし。
一念発起したわりにはいまいち救われない気分のイザナギさま。
しっかりと身を清め、またこの世で生きていこう。
モヤる気持ちを認めつつ、穢れのついた身も心も洗い流すことに決めました。
そのとき左目からは天照大神(あまてらすおおみかみ)が、右目からは月読命(つくよみのみこと)が、そして鼻からは素戔嗚尊(すさのおのみこと)がお生まれになったのです。
三貴神の誕生と言われています。
そして身も心も清める(身をそそぐ)行為を「禊」と言うようになったんですね。
そうかそうか…
ていうかさ。
神様産むのは、ひとりでできるもんなのね。
しかもSSクラスの超ビッグネーム神。
わざわざ異界まででかけていった労力ぅ🥹?
と思ってしまったのはきっと私だけではないはず。
そういう矛盾もね、いいんですよ古事記。それが魅力。
まあなにはともあれ、それこそが「みそぎ」のはじまり。
体を清め、貴いものを生み出すプロセス。
その発祥の地が今でも残るみそぎ池なのです。
みそぎ池
そこで見た風景は、とっても平和でした。
湖面には咲いたばかりと思われる淡い黄色い睡蓮。
親子でなくても手を繋いで周りを歩く大人と子供。
走る子供達にすわる大人たち。
みんなが笑顔でとってもリラックスしています。
それぞれが思い思いに今をたのしんでいるなあ〜🥹
たぶんこの中でバスを呼ぶタイミングをはかりながら携帯を握りしめ、どう考えても予定通りに目的地につかないぞと焦って目が白黒になって焦っているのは私だけ。
変な汗をかきながら、この先の言い訳と時間配分を考えながら、くまちゃんのお話を聞くのは相当に難しかったんですが、じつはこの時もまた素晴らしいお話をしてくださっていました。
そこに参加した方からの質問を受け取り、それはね。。。
と、軽快に応えるくまちゃん。
なんでそんなにいろいろ知っているんだろう。
私は次のバスの目的地にいる人が怒っているか笑っているかすらわからないのに。
まあどう考えても9割方怒っているだろうし、残りの1割は呆れているんでしょうけど。
それでもその場でしか出てこない感情と質問と回答に、たくさん頷き、さあ次は西都だよ!とみんなは意気揚々とバスに乗り込み、無事に祝詞と禊を体感したのでした。
バスの車内のお楽しみ
私自身、行き先や内容を決めながらも実はいちばん楽しみにしていたのはバス車内。
宮崎ってとにかく車がないと生きていけない土地なのだけど、だれかとどこかに行く時に私の車に乗っていく率が高くなることからいつも私はハンドルを握りしめているのです。
私の車がちょっとばかし大きいから他の人が運転することはあまりないし。
だから車の中でゆったりとお話ししているだけで目的地に着くとか最高すぎる案件なのです。
さらにくまちゃんからどんな話が飛び出るのかも興味津々。
そしてバスの中で食べるおやつがとっても楽しみだったんです✨
とはいっても、私が用意していたのは午後のおやつだけ。
あとは欲しい方々はお好きに持ってきて食べてください思っていたのですが…
お好きにどころかとんでもないおやつの数々が届けられておりました。
ツアーの前々日、私の職場に今から行っていい?!と聞くお友達。
実はあらぬことかツアー前に体調くずしまして、10月に入ってからはまともに動くことができていなかったんです。
すぐ帰るから!と言いながらきてくれた彼女の用事は、私におやつを届けることでした。
みるときれ〜〜〜いにラッピングされたお菓子たちがどどんとたくさん!
しかも小さい子が喜んで手にするであろうアンパンマンのおせんべいとか、からだにやさしそうなお野菜使ってる感じのスナックとか、大人も好きなショートブレッドとかがたくさん入っているんです。
「ものすごくツアーに参加したかったんだけど、残念ながらお仕事で。でもバスっていったらおやつかなって思って、これくらいしかできないけど持っていってほしくて・・・」
なんてやさしいんでしょう😭
そんなにバスツアーのことを気にかけてもらってるとも知らなかったし、袋菓子をがさがさっっともってくるわけではなくきれいにラッピングもしてくれてるこの手間の愛😭
他の人のイベントのために、こんなことできるぅ?!
驚天動地の差し入れです。
だけど実はまだまだこれでは終わらなかったみなさんのやさしさ。
お次は前泊で宮崎に来てくださっていた参加者さん。
旅行の前日に、お天気などお聞きになった際に「いま焼いてるよ〜」って、なんと手作りおやつの差し入れ予告!!
まじですか!!!
しかもこの方の作り出すおやつは100%体によいものを使っている、食べるとみんなが笑顔になるすごいおやつなのです。
わざわざ飛行機に乗ってきてバスに乗るのに、しかも時間が許さず涙を飲んだ1日だけの参加なのに、みんなのおやつ手作りとか…
なんでそんなにしてくだるのですか。。。
ちと愛が過ぎやしませんか😭😭😭
ちなみにこの方、帰られてからも皆の度肝を抜くサプライズギフトと最高すぎる言葉の贈り物まできっちりくださいました。
最高すぎるでしょう。。。
それにひきかえツアー前に体調こわしてヘロヘロになっていた私の矮小さよ。
なんか本当にすんません🙏
そしてやっぱり特製チーズケーキおいしかった🥹
愛の波動がいつまでもお口の中で響いて、しあわせの味がしました。
そして関西からご参加の、いつでも私のイベントを告知したり底支えしてくださる最高にナイスで楽しいお方からのおみやげも最高でした。
バスの中で茶の間をつくりたいと思っていた私は、キティちゃんの描かれている赤くて四角いかわいい缶カンをもってきていて、それに前々日もらったおやつを入れて〜と言ってバス後方にお願いしていたのだけど、後方に行くとやたらとおやつが山盛りなっている!?
「せやねん」とか「まいど」とか書いてるクッキーとか食い倒れ太郎とかなんかとにかく関西風味!
あの方がおやつにってたくさんもってきてくださったから缶にあけました!という後方スタッフ。
え、ちょいまち。
尋常じゃないよこの量。
さらにバスに乗り込む前にいけないけどがんばってね〜って見送りに来てくださった友人から差し入れの日向夏ジュース。
お昼ごはんのときにいろんな味の地元飲料をみんなに飲んでもらうためにひとつひとつ袋に入れて、わざわざクーラーボックスを運んできてくれたSUNsのみんな。
参加するしない関係なくみんながありえない量のおみやげを持ち寄ってきてくれて、みんなの笑顔につながっていて、私はびっくりと感謝であいた口がふさがらなくて、みなさまのやさしさに体が溶けてなくなりそうになっておりました。
バスの車内でいちばんサプライズを受けたのはきっとこの私でしょうね。。。
そんなすてきな時間を過ごしながら、小一時間程度でバスは次の目的地の西都原古墳群へと到着しました。
つづく