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日本の電車でホッコリ、偏見アップデート

GWの東京。

旦那さんと電車に乗った。混んでいなかったが、立っている人もちらほら。三人がけシートの真ん中だけ空いていた。優先座席でないことを確認して、私が座った。旦那さんは私の前に立つ。

私の右側におばさんがいた。その人は壁にもたれかかって爆睡。左側には若い男性が座っていた。

観光地に行ったことを振り返って、旦那さんと話していた。すると、隣の男性がスッと立ち上がった。彼は扉の前に移動した。彼自身が今座っていた3人がけシートのすぐ横だ。反対側の液晶モニターを見ている。「次で降りるんだろう」と察した旦那さんが、私の隣に腰をおろした。

旦那さんの方を向くと、私からはその男性も見える。3、4駅過ぎても降りない。彼はスマホを見たり、液晶モニターに目を向けたりしている。うちらがうるさくて席を立ったのなら、もっと遠くに行くよな。降りる駅を間違えているならもっと焦りそうだし。

私の目線を追うように、旦那さんもその若い男性に気がついた。旦那さんは慌てて腰をあげて、その人に声をかけた。

「もしかして席、譲ってくれはったんですか?」

男性は声をかけられて驚いたようだが、首を縦に振った。若い男性は、照れたように「どうぞ(座ってください)」と言った。ほんまにええの?みたいなやり取りが続いた。

「めっちゃ優しいやん。ありがとうね。」

旦那さんは男性に頭をさげて、再び席についた。私も男性に向かってお礼を言った。彼は照れくさそうにうつむいた。20代前半くらいだろうか。しっかりしてるな〜。

東京にいる間も、カナダに帰って来てからも、旦那さんとあの男性の話をするときがある。なんでここまで感銘を受けているのかが分かった。

席を譲るって行為は、お年寄りや体のしんどい人限定じゃないんだ。楽しそうな人らが一緒に座りたいかもしれんから席を譲る。それも「親切心」なんだな。その想像できる彼が素敵だと思ったんだ。自分があの年代の頃なんて、自分さえ良ければいいって考えだった。

男性が女性に席を譲る光景は見かけるが、男性が元気な男性に席を譲るのは初めて見たかも。私もつい、年齢が上の人や子供ばかり見ている。元気そうな若い男性なら席を譲る考えには至らない。

日本の電車に乗ると、私は肩が重くなる。一触即発のような殺伐とした雰囲気に包まれている。仕事、人間関係、恋愛、育児、健康やお金などの問題に追われて、電車くらいゆっくり座りたいんだろうな。だから人に席を譲る余裕もない、人と目を合わせるのが嫌でスマホに釘付けなんだろうか。どの人も疲れ切って、スマホを見る目はどこか虚ろ。そのせいか、手首とスマホが鎖で繋がれているみたいに見える。

あの若い男性のおかげで、私は自分が嫌なものに目を向けすぎたんだと分かった。「東京の人は冷たい。」と思ってたけど、本当に人による。

電車の中にも笑顔があるし、はしゃぐ声も聞こえるし、優しい人はたくさんいる。スマホを見ている人の中には、電子書籍や新聞を読んでいる人もいるかもしれないし、勉強している人もいるかもしれない。

私もまだまだ凝り固まった偏見があるんだな。偏見は無くすことはできない。だからアップデートしていく。

席を譲るのは、年齢も性別も関係ない。自分がしんどくなくて、譲ってあげたい人に譲る。私ももっと周りを見て、良いこと探しもしよう。

そしてあの男性に、サチャレ


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