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時間がかかってもいい。諦めず進もう。『手のひらの音符』の感想

昨日書いたことを早速有言実行し、1冊読み終えた。人に宣言したり、公の場に書いたりすると、頑張って行動するものだな。時間を自分で作ったらちゃんとできた。


本の基本情報

  • タイトル
    『手のひらの音符』

  • 著者
    藤岡陽子

  • ジャンル
    ほっこり

  • 評価
    ★★★☆☆

  • 補足
    いわた書店の一万円選書の本

あらすじ

デザイナーの水樹(45)は、自社が服飾業界から撤退すると知らされた。結婚もせずに何より愛してきた仕事。途方にくれる彼女のもとに、中高の同級生から、恩師の入院を知らせる電話が。お見舞のために帰省中、懐かしい記憶が蘇る。幼馴染の三兄弟、とくに信也のこと。人生に迷う人に贈る物語。

はじめに

読む前は、仕事や恋愛で「生きがいを探す話」かなと思った。恋愛要素がメインになるかと思いきや、実際には辛い子供時代を一緒に乗り越えた幼馴染との再会するまでの話が軸となり、そこから主人公は新たな決断をする。という内容だった。仕事も全てうまくいく、のではなく希望のあるスタートを切る感じで終わった。

水樹の現在と過去の回想が交互になって、お話が進む。最初は高校時代の体育祭、子供の頃の夏祭り。それがどんどん不穏になっていき、水樹と幼馴染三兄弟の仄暗い過去が見えてくる。

『手のひらの音符』というタイトルはドレミの歌とジューズバッグが、この物語のキーになっているような気がした。関西弁なので馴染みがある私は読みやすかった。

ギャンブル、死別、貧困、シングルマザー、障害、不倫、ヤングケアラー、いじめといったトピックも出てくる。最後は救いがあるからよかった。これで誰も救われなかったら、後味が悪かったと思う。

印象に残ったシーン

森嶋三兄弟は、しっかりものの長男・正浩、やんちゃだけど優しい次男・信也、ちょっと「変わった」三男・悠人。

悠人は周りと「違う」ことでいじめられる。信也は弟を強くしようと特訓するが、やり方を間違えて悠人を萎縮させてしまう。そこに長男の正浩が、悠人に合うやり方で立ち向かう方法を実際に見せて教える。

「人によって、闘い方はそれぞれ違うんや。だから、自分の闘い方を探して実行したらええねん。」

闘い方だけでない。いろんなことに向き合う時、自分に合う方法を見つける。そうやって、自分が少しでも息をしやすい方へ進んでいくように思う。

森嶋兄弟は、重い問題を抱えている。水樹は、そんな三兄弟の光のような存在だったと思う。そのおかげで、三兄弟は自分なりの方法で困難を乗り越えていく。

一方、水樹は水樹で、家庭の事情や進学のことで悩んでいた。でも恩師と母親の後押しがあって、今の水樹は自分の仕事に誇りを持てるようになった。

人は関わる人によって、良くも悪くも変わる。

悪い環境から抜け出すのも容易じゃない。でも手を差し伸べてくれる人の手を取れば、諦めずに前を向けば、必ず環境は良くなると思う。

「時間がかかってもいい。簡単に諦めんなよ。」

「諦めるって気持ちは、周りの人間に伝染するんだ。」

自分の経験と重なる部分

この物語の子供たちを見て、自分の子供時代を思い出した。私も家庭環境が良くなくて、6歳下の妹と10歳下の弟の親代わりをした。

あの時は子供でいる余裕なんてなく、「明日は平穏に過ごせるか」ばかり考えていた。その結果、人に頼る、甘える、感情を表に出すのが苦手になってしまった。旦那さんに出会えて、正しく頼る、甘えるを覚えた。

この本を読みながら、「子供は子供らしく生活してほしい」と改めて感じた。明日のおやつと友達と何して遊ぶかで悩んでほしい。と同時に、大人になった私に、あの頃の自分のような子供たちに気がついてあげられるのかなという疑問も湧いた。

読後の気づきとこれからの自分

「人なんてわずかな時間を生きているのだから、いまこの瞬間にある本当の心を大切にしなければ、なんのために生きているのかわからなくなってしまう」

このセリフが心に響いた。

年齢、学歴でいろんなことを諦めてしまう大人もいる。もちろん、世の中には年齢制限があってできないこともたくさんある。でもそれ以外で、本当に自分がワクワクすることを学ぶ、始めるのは何歳からでもできると思った。人生は一度きり。どうせなら、可能な範囲でワクワクすることを選んで行動したい。

さいご

この本から私は、「諦めずに進むこと」「自分のやりたいことを見つける大切さ」のメッセージを受け取った。

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