社長の後継者候補、どこまで入れる?ーー「サクセッションプランニング」の対象範囲とは
「社長も高齢だし、そろそろ後継者を誰にするか考えないと…」
人事や経営企画の皆さんにとって、後継者選びはガバナンスの一環として、年々重視されています。
一方で、その対象範囲をどこまで拡げるかは悩ましいところ。
どこまで対象を広げると良いのでしょうか?
理想は経営トップから若手まで対象範囲を一気通貫で行うこと。ただ、現実は…
サクセッション・プラン(Succession Plan)とは、社長をはじめとする重要なポジションの後継者を見極め、育成する計画を指します。簡単に言えば、各階層における重要なポジションの後継者を選び、育てることです*1。
さて、さっそくですがサクセッション・プランの理想的な対象範囲を考えてみましょう。
言わずもがな、理想としては、若手から経営トップに至るまで一貫して行うことが望ましいでしょう。
具体的には、
・社長の後継者を取締役や執行役員層から見極める
・取締役や執行役員層の後継者を部長級から見極める
・部長級の後継者を課長級から見極める…
といった形で、最終的には若手から順に体系的に人材プールを作り、最終的に経営層までの育成を目指すことが理想です。
しかし、現実はどうでしょうか。
プライム市場上場企業76社を対象とした調査によると、社長ポジションの後継者選定が進んでいるのは39.5%、経営陣幹部ポジションでは48.7%にとどまっており、どちらも半数に達していません*2。
ガバナンスの観点からも、サクセッション・プランは非常に重要であるにもかかわらず、現状では一番重要である社長の後継者選出の仕組みでさえ未整備なままなのです。
では、なぜこのような現状が生じているのでしょうか?
サクセッション・プランでの難しさは、「誰を選ぶか?」以上に「どんな人がふさわしいか?」
サクセッション・プランが計画通りに進まない理由には、さまざまな要因が考えられます。
例えば、経営アジェンダとしての優先度が低いこと、現職の経営層の関心が高まっていないこと、さらには経営戦略自体に長期的視点が欠けていることなどが挙げられます。
こうした要因の中でも特に注目すべきは「人材要件の曖昧さ」です。
先述の調査でも、「人材要件が曖昧である」ことが最大の問題として挙げられており、実に71%の企業がこの点を課題と感じています*2。
実際、経営人材の人材要件を設定している企業の割合として
・社長ポジションで42.1%
・経営陣幹部で28.9%
にとどまっており、その難しさがうかがえます。
後継者を選定するには、基準を明確にしなければサクセッションプランはなかなか進まないということです。
以上、ここまでサクセッションプランについて見てきましたが、改めて感じるのは「誰を選ぶか?」以上に、「どんな人がふさわしいのか?」ということの方が難しいということではないでしょうか。
結局のところ、後継者育成における成功の鍵は、明確な基準の設定にあるのかもしれません。
(参考情報)
*1 日本の人事部「サクセッション・プラン」https://jinjibu.jp/keyword/detl/148/(2024年10月2日アクセス)
*2 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「「サクセッションプラン」に関するサーベイ結果【2023年度】について」https://www.murc.jp/news/information/news_240419/(2024年10月2日アクセス)
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