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御社の評価会議、どう進めている?

人事評価のシーズンです。

毎年このシーズンになると、「この進め方で本当に評価ができているのだろうか?」と悩むことはありませんか?

人事として、社員の納得感を高めながら、経営の意図を反映した評価を実現するのは簡単ではありません。

評価の仕組み自体は整っていても、評価会議の運営次第で、結果は大きく変わります。

過去振り返ってみて、個人的に大切だった観点を紹介します。


ポイント① 評価分布にバラツキはないか?


評価会議でしばしば悩みとして出るのが「評価の分布が偏っていないか?」という問題です。

たとえば
・営業部は毎回S評価が多いのに、開発部はB評価ばかり
・A課長は甘めで、S評価をつけがち。一方、B部長は厳しくてA評価がほぼ出ない
・ほとんどの社員がB評価。優秀な社員の貢献が正当に評価されていない
などです。

こうしたバラツキが出ないようにするには、会議前に評価分布を可視化することが大事です。

私が過去取り組んだものだと、
・ヒストグラムで評価の割合を確認(S/A/B/Cの比率を可視化)
・前年と比較し、評価の増減傾向を分析
・評価者ごとの傾向をチェック(特定の評価者だけS評価が多すぎないか)
などがポイントだと考えます。

こうした分析結果を評価会議の冒頭で共有することで「今回の評価はバランスが取れているか?」という議論の前提を作ることができます。

ただし、注意点として、無理な評価調整は逆効果であるのも念頭に置くことが大事だと考えます。

私も過去やってしまいましたが、評価分布のバラツキをなくそうと動いたものの、ふと「バランスを取るために無理に評価を調整するのは本末転倒ではないか」と思い直したことがあります。

新米人事の方も、分析を進める中で
「全体のバランスを取るために、本来A評価の人をBに下げなければ!」
「○○部門は評価が甘めに見えるので、意図的にS評価を減らそう」
など、バランスを取ろうとしがちです。

私は決して間違いだと思わないのですが、それが目的化してしまうと、本当に頑張った社員が報われない事態にもなりえます。

評価の目的は、「全体の分布を整えること」ではなく、社員の貢献を正しく評価し、納得感を持ってもらうこと。

評価会議では、データをもとに議論しながらも、「納得感のある評価」を最優先することを意識することが大事です。

ポイント② 評価のズレを減らす努力はしているか?


評価会議で「Aさんはこの評価で本当にいいのか?」という議論が出ることは珍しくありません。

同じ成果なのに、評価者によって評価が異なることはしばしば起きます。

なぜ評価のズレが生じるのか。主な原因として、以下が考えられます。

原因① 評価者ごとに基準が異なる
たとえば、「Aマネージャーは成果を重視するが、Bマネージャーはプロセスを重視する」などは典型例です。何を基準に評価するのかを擦り合わせましょう。

原因② 被評価者のアピールの仕方が異なる
たとえば、「自己評価が高い人はS評価を得やすく、控えめな人は過小評価されやすい」などです。こうならないためにも、評価者はしっかりその人の活躍を理解することが大切です。

原因③ 評価者にバイアスがある
たとえば、「直近の成果が強く印象に残り、前半の業績が見落とされる」などは典型例です。こうした認知バイアスが起こらないように、評価者の評価スキルを上げることが重要です。

このようなズレを減らすためには、いわゆるキャリブレーション(評価基準のすり合わせ)が大事だと考えます。

具体的には、評価対象者の事例を複数人で検討し「このレベルならこの評価」という目線を統一したり、前回の評価結果と照らし合わせ「同じレベルの社員に一貫性のある評価がついているか」をチェックするなどです。

その他、過去の評価データを活用する、評価者・被評価者に具体的なフィードバックを行うなど、データとともに評価者・被評価者が「何を基準に評価されているのか」の理解を深めることが重要だと考えます。

とはいえ、言うは易く行うは難しで、評価のズレは単年の評価会議で揃うものではありません。長年の経験が積み上がってくることで、評価が適正に行われていきます。この地道な努力が必要だと思っています。


ポイント③ 個々の評価結果を最終チェックする手間を省いていないか?


評価会議が終盤に差し掛かると、「やっと終わる…」とホッとしますよね。

でも、疲れもどっと出てきて、細かい確認が疎かになることがあります。

このとき、この最後チェックを怠ると、後から「この評価、本当に正しかったのか?」という問題が発生することも。

たとえば、しばしば見かけるケースとして、次のものがあります。

ケース① 評価コメントにムラがある
意外にもありがちなのが、このケースです。「A評価をつけた社員のコメントが短く、B評価の社員のほうがポジティブなコメントになっている」など。社員に評価を返すときに、お互いの評価結果を共有することは少ないものの、油断はしてはいけません。最後まで全力でやりましょう。

ケース② 昇進・昇格との整合性が取れていない
今後、昇進・昇格させる社員の評価がネクストステップと合致していないケースです。たとえば、「昇格候補の社員がB評価のままになっている」「会議では『この人は昇格に値する』と話していたのに、評価が据え置きのまま」などです。まだ組織規模が小さい場合は気合いで何とかやれてしまいますが、100名を越えてくると、人事の手には負えなくなるので、ケアレスミスが発生しないような仕組みを考えることが重要だと考えます。

ケース③ 前回の評価とズレているが、理由が明確になっていない
最後にありがちなのがこのケースです。「前回A評価だったのに、今回はC評価」はしばしば起こりえます。これは本人のパフォーマンスではなく、評価者の解釈の違いが原因であることが多いので、キャリブレーションや評価者トレーニングがなおさら重要です。

このように、評価会議の最終チェックは、つい省略しがちですが、ここでのひと手間が評価の納得感を大きく左右します。

「評価結果を伝えた後にトラブルになる」ことを防ぐためにも、評価コメントの整合性、昇格との整合性、評価のバランスをしっかり見直したいですね。


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