【夫婦巡礼】無職の夫婦が800km歩いてお店を出す話【旅物語】⑯
巡礼9日目
ナヘラ ~ サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ
■荷物のトランスポートが便利!
翌朝、ライアンとヨンチャンは出発前に荷物をトランスポートに出したらしい。「身軽でスゴいラク~♪」とご機嫌で歩いている。
これ、長い道を歩く巡礼者たちにとってはスッゴいオススメらしい。
【トランスポート】要するに、巡礼者の荷物を次の目的地まで運んでおきますよ。と言うサービスなのだ。
大抵は前日宿泊したアルベルゲで手配ができる。手配すると言っても簡単で、「明日荷物を送りたいんだけど」とホスピタレロに伝えれば、専用の用紙をくれるのでそれに記入し、お金を払い、あとは荷物を所定の場所においておくだけ。そうするとその日の午後には目的地に先に届けてくれると言うわけだ。
巡礼者は日々重たい荷物を背負って20kmも30kmも歩くことになる。
これって一日二日なら耐えられても、何日も何日も歩き続けるのは流石に厳しい。ましてや雨の日、体調が悪い日なら尚更だ。そんな時は負担を軽くして歩くに越したことはない。
■トランスポートの注意点
とは言え、荷物を全て運んでしまうと
「あ!持っておけば良かった!」
と言う物も出てくる。例えば財布など【貴重品】はもちろん必要。万が一荷物が届かなかった!無くなったと言うときに取り返しがつかない。その他【日焼け止め】【レインウェア】のような、天候の変化によって必要になる物は、無いと急な雨や強い紫外線に苦しめられ事になる。
メインザックに入れて負担にならない小さなサブバッグがあると便利だと思った。
※ちなみに僕達は、妻がトランスポートを利用するときに運んでほしいものを妻のザックにまとめて、必要なものを僕のザックにまとめて持ち運びすることで対応した。
■カミーノ人間模様
カミーノの途中、本当にたくさんの人に会う。出会った人とお喋りするのは勿論楽しいけど、良く会うけど会話のきっかけが無い人達の人間模様を見ているのも面白い。
誰と誰が仲が良いとか、
誰が誰に気がありそうだとか、
誰が今日ちょっと元気ないなとか。
そんなちょっとした人のやり取りや様子が、その後の関係を生んだりするわけだから、なかなか周りを見ておくと言うのも良いことかもしれない。
ここ数日見ていて面白いのは、「誰がキャメロンと歩くか」と言う、女性を巡る男性達のポジション争いだった。
キャメロンは、勝手に僕達が名付けた仮名の女性。キャメロン・ディアスに似ためっちゃセクシー美人さん。
そのキャメロンを、最近毎日のように朝からアプローチしている男性が数名。
背の高いヒゲのスキンヘッドの男性と、カッコいいヒゲのスキンヘッドの男性。三人ともこの段階では名前も知らないから、背の高い方を【髭の人】カッコいい方をジェイソン・ステイサムに似ていると言うことで【ジェイソン】と呼んで皆の動向を見守っていた。
三人とも、そのうち親しい仲になっていくのだけど、それはまた後々のお話。
■巡礼者達のリズム
サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダのアルベルゲに到着したのは午後2時頃。今日は20㎞程度だったので到着も早い。
僕達の手前でアジア人の巡礼者が受付を済ませていた。話してみると二人は香港から来たようで朝早く出て、ゆっくりゆっくり少しずつ歩いているのだと言う。
カミーノでは、本当に驚くほど人それぞれ時間の使い方、旅のスピードが違うと感じる。
毎日ビュンビュン歩く人
少しずつ歩く人
何度かに分けて歩ききる人もいれば
一度の巡礼で歩ききるひともいる。
全てがカミーノ(巡礼)で、どの形も正解だ。
色んな国から来た人が、様々な時間の使い方で、十人十色の旅をする。ただ、皆歩く道は同じ。目的地も、サンティアゴデコンポステーラと共通している。
だから、旅の時間が増えれば増えるほど、仲間は家族のように思えてくる。
■今日はモモちゃんが頑張る日
今日の夕食はモモちゃんが作ってくれた。
皆で買い出し。ついでに僕は薬局で足につける外用消炎鎮痛薬を買い(ジクロフェナクと言う成分のもの)、妻はキャメロンに帽子を選んでもらっていた。凄く羨ましい。
キッチンでヨンチャンがご飯を炊くのを手伝い、僕はついででトマトソースを作り、モモちゃんは一生懸命5人分のオムライスを作った。
頑張って作ってくれたオムライスはやっぱり美味しくて、嬉しかった。自分より一回りも年下の子達がちゃんと料理して、偉いなぁと感心しきりだった。僕が学生の頃だったら、こうはいかないだろうな。
食後にワインを貰った。リオハワイン!
巡礼中良く挨拶をするドイツのお姉さんがくれたもの。実はロンセスバージェスのディナーの時に、同じテーブルで食事していた人。
色んな国の言葉が飛び交うなか、乾杯の掛け声も様々だ。お酒は万国共通の嗜みだから、掛け声を覚えておくのも楽しい。
優しくしてくれて有り難う!
「Prost!」
■巡礼者達のマナーとは…
部屋に戻ると、真っ暗で驚いた。
周りの話を聞くと、19時には完全に真っ暗になっていて、香港の巡礼者カップルが休むために消灯したとのこと。なるほどそういうことか。
後から帰ってきたグループが支度をしながらお喋りしているのが耳障りだったのか、香港の二人はわざとらしく咳払いをして睨み付けている。
それに気づいたグループも、だからなんだと言わんばかりに灯りまで付けてお喋り始めたところで空気が悪くなったが、香港組が怒って何か呟き、寝袋を乱暴に被って寝る。
そういう一幕。
うーん、どっちもどっちな感じだと思った。
アルベルゲで決められた消灯時間は22時で、それでも十分に早い。ただ人のリズムは様々だから、早く寝る人がいるのも仕方ない。
寝ている人がいるなら周りが静かにするのもマナー。でも消灯前に寝るならば、当然「起きている人もいる」ことも理解して、耳栓なりアイマスクなり準備するのもマナー。
寝る準備も明日の準備もしていないのに私たちは明日早いからと電気を消されても、確かにどうにもならんと言う気持ちもわかる。
お互いのことをもっと気遣えたら良いのになぁと残念な気持ちになってしまった。
ただこのグループ(後に僕達はスペイン交響楽団と呼ぶのだが)が夜中おならとイビキで大演奏をしていたり、向かいのベッドでおじさんが半ケツで寝ていたりとやりたい放題だったことについては、怒りも忘れて笑ってしまわずにはいられなかった。
個人的には、良き街、良き宿で最高な夜を過ごしたと思う。笑
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ナヘラ ~ サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ
歩いた距離 :21km
サンティアゴまで残り 約580km