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【夫婦巡礼】無職の夫婦が800km歩いてお店を出す話【旅物語】⑰

巡礼10日目

サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ ~ ベロラド

■今日の空

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「スペインの空は、どの時間が一番好き?」

と聞かれたら、悩んで悩んで悩んだ末に

「んー、朝かなぁ」

って答えると思う。

真っ赤に燃える朝日が昇り、少しずつ薄紫がかっていく空と、淡い露草色の空のバランスが幻想的で好きだ。

巡礼中、何度も見た朝の空。

朝早く起きて朝の空を拝みながら歩き、早朝のバルで飲むカフェコンレチェ※1は、もはや僕達のルーティーンになっていて、

それは日頃日本で慌ただしく生活する日常とはかけ離れた、もうひとつの日常になりつつあった。

※1 カフェコンレチェ(Cafe con leche)

coffee with milkの意味。濃いめのコーヒーに暖かいミルクを混ぜた、巡礼中の定番の飲み物。

■病気と安全な巡礼

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僕は実家で犬を飼っていたこともあって、犬の扱いは得意だと言う自負がある。

逆に、妻は猫を飼っていた経験から、猫の可愛がり方がすごく上手。

海外での動物の接し方は、注意が必要だ。

特に、動物と触れ合う時に日本人が忘れてしまいがちな病気が狂犬病。

目の前に小さな犬猫がいたら、絶対可愛がってしまうから。(特に僕は)

注意は必要だけど、出来るだけそこに神経質にならずに旅がしたいなら、事前の準備が大切だと思う。


狂犬病以外の疾病、感染症や治安情報について、また海外旅行用の保険も【事前に知る】【対策する】ことで、旅をしている期間の楽しみ方が全然違う。

これは、誰かのブログを参考にすればいいと言うだけの話じゃない。

「誰かが言っていたから」と、鵜呑みにするのではなく、自分で調べて、確信を持って対策することに意味があると思う。

特に今世界を混沌とさせているウイルスの影響もあり、今後世界を旅するなら公衆衛生と、自己防衛の意識は必ず必要になるから。「自分で調べる」意識が広まれば良いな。

僕を含めて体験ブログに書かれている内容はその時の体験でしかないから。リアルタイムでどうなっているかまでは、責任が持てない。自分の旅は、自分で作るべきだ。

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安全に、楽しく旅をするのが一番!

■ベロラドにて、神との再会

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いつの間にかリオハ州が終わり、カスティーリャ・イ・レオン州に入っていた。

目的地のベロラドには午後2時半頃には着いていた。昨日同様、歩く距離がさぼど長くなかった分の余裕を持って街歩きが出来そうだ。

アルベルゲでは女性のホスピタレラ(男性がホスピタレロ、女性はホスピタレラ。呼び方が変わる)が一人で切り盛りしていた。

「任せて。私が全部やってあげるわ」

そう言って掃除、洗濯、ベッドメイクと料理まで皆一人でやっていた。シーズン前の落ち着いた時期とは言え、本当にスゴい。

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妻とベッドルームに行くと、懐かしい匂いがした。

一昨日も感じた、汗のうーん、感じ。

「これはもしかして…」と二人で話していると、なんとシャワー室からスモークを炊いた神(と呼ばれる巡礼者)が現れた。

その神々しさにたじろいでしまったが、スモークかと思ったのはシャワーを浴びた後の湯気か…今日もイビキの覚悟はしないといけないな。

そんなことを思ったが、不思議ともはや嫌な感じもなく、笑い話に出来るような余裕があった。これもひとつの縁かと思うと不思議だ。

■モモちゃんの災難

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しかしこの神についてさらに笑ったのはモモちゃんの話だった。

モモちゃん実は僕達と同じ宿なのだが、僕らよりも先にベロラドに到着してアルベルゲを探していた。

すると、モモちゃんの前に神がいる。彼もまた、アルベルゲを探していた。

先日彼女を悩ませたイビキの記憶が蘇り、どうしても神との遭遇を避けたかったモモちゃんは、こう考えたそうだ。

「神に先にアルベルゲに入って貰おう。」

つまり彼女は、神を泳がせて、アルベルゲに入るのを見届けた後に別の宿に入ってしまえば、夜の安眠を確保できると考えたのだ。


策士である。


そして神が宿に入ったのを確認し、無事今いるアルベルゲにチェックインをした。

「これで夜は安心して眠れるぞ」

そう安心してベッドに荷物をおろしちょっと席をはずしたそうだ。

次にベッドに戻ったとき、モモちゃんを待っていたのは無情な現実だった。彼女の前には、彼女が先ほどそうしたように、荷物を下ろし一息つく神の姿があった。

神との遭遇を避けようとした策士ですら、神の定めた運命には抗えなかった。と言う話。

モモちゃんが可愛すぎたのと、あまりにがっかりした姿に、その話を聞いて笑わずにはいられなかった。

そして加えれば、この日の宿にはイビキの魔人と、スペイン交響楽団も入ることになり、無事にイビキの大きい三本柱が勢揃いしたのである。

■ブルゴスの宿がなくなる!?

夕食にレストランでメヌーを食べ、

アルベルゲに戻ると、モモちゃんはおじさん達にパエリア作るから一緒に食べようと誘われていた。

ホスピタレラにお願いしていた洗濯物を受け取り、寝る準備をしようと言うところで

不穏なウワサを聞き付けた。

「どうやら明後日ブルゴスの宿は全部閉鎖されてしまうらしい。」

このまま行くと、明後日僕達は大都市ブルゴスに辿り着くが、その日のアルベルゲが無いかもしれないと言うのだ。

そんなことがあり得るか?とにわかに信じがたい話だが、どうやらイースターが影響しているらしい。

困ったなぁ。でも、詳しい話も知らないし…とりあえず今日はもう休んで、明日皆に聞き込みして考えよう。

明日明後日と天気がだんだん悪くなる予報だから、明日は少し長めに歩こうかな。

そんな計画をたてつつ、僕達は周りの皆よりもほんの少し早めに眠ることにした。

もちろんそれは、イビキの大演奏会を聞かずに体を休めるためだ。

お陰さまで今夜は良く眠れた。やっぱり、やり方次第だと言うことなのだ。

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サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ  ~ ベロラド

歩いた距離 23km

サンティアゴまで、残り約560km

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