【後編】「大きな志」と「志に向かって挑戦した数」~ソウルドアウト創業から、これから目指すもの~
『「大きな志」と「志に向かって挑戦した数」』の【後編】です。
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ソウルドアウトの創業と挑戦
2009年、私が36歳のとき、ソウルドアウトを創業しました。夢と希望にあふれ、社会の貢献に、日本の発展に!と考え、高揚感に包まれていました。
ただ、創業時は多くの人に「中小企業を相手にして何が楽しいの」「上手くいくわけがない」「儲からないんじゃないの」と揶揄されました。外部のほとんどの方がこういった感想だったと思います。
その度に私はこう思うのです。「まあそう思いますよね。トラックレコードがないですもんね。誰も成功していないので、正しい感想だと思います」って。私は、掲げた理念に真っすぐ突き進みたい、そういう想いですから、心配意見は参考意見と捉え直しました。そうして賛同いただけた仲間とともに船出をしました。
その後、計画通り事業は拡張し、順調に立ち上がりました。会社も少しだけ大きくなりました。スケールしたことで、提供できるサービスが増え、お客様が喜んでくれました。とっても幸せでした。
理念に則り、地方営業所を作りたいと考えました。そのときは「失敗するに決まっている」「市場なんかないよ」と馬鹿にされました。確かに、ネット広告の市場は東京が88%の構成比。皆さんの意見は正しく、地方への進出は非効率だという意見はメチャメチャ正しい。ただ市場は創造するものと考えていたので、結局は出店しました。結果、地方は伸び、お客様のネット広告意欲も上がり新市場を創造することが出来ました。
ネット広告を通じてお客様の業績が伸びる、業績が伸びると会社が大きくなる、地方で雇用を生むことができる。幸せな光景でした。私は自分たちを単純なネット広告会社だとは思っていません。この頃から、我々は事業を通じて社会課題に貢献できているんだ、誇り高い仕事が出来ているんだ、と確信できるようになりました。
事業も拡張しはじめたとき、中途だけではなく新卒採用をしたいと考えました。多くの人に「100%子会社で、中小企業を相手にしている会社で、広告運用中心の事業している会社に、優秀な新卒が集まるわけがない。採用できるわけがない」と笑われました。しかし採用活動を始めてみると、東大や京大をはじめとした優秀で理念の合致した新卒採用ができました。現在のソウルドアウトグループの成長の中心に新卒の皆さんが多数います。
さらに地方に進出しようと考え、幸いなことに電通さんとジョイントベンチャーを立ち上げることができました。このときには、会社のサイズや企業文化が違いすぎて、周りに猛反対を受けました。しかし広告会社のチャンピオンであり、時価総額1兆円超の電通さんと一緒にお仕事をすると、当然ですが強烈に優秀な方ばかりで学びが多数ありました。結局は地方に13拠点を出店することが出来ました。すべての経験が血肉となり、経営に生かすことができました。
次は、ネッパン協議会という社団法人を立ち上げました。この社団法人を通じて、地方銀行50行と連携することができました。「地銀と連携して上手くいくわけがない」と笑われました。確かに、社団法人の経営は難しい局面が多々ありましたが、多くの地方人脈を得ることができ、グループ全体としては前進することができました。
またヤフーさんと資本業務提携を結ぶことができました。今後、マーケティングの民主化はさらに進む。より多くの中小企業、そして地方企業がその恩恵を受けることができる、両社でそのように考えていました。その実現を成し遂げるべく目的を共有し合ったことで、両社でガッツリと協業することができました。大きく飛躍できたのは、この志をともにできたからだと思っています。批判や冷めた声も多々ありましたが、その声や雰囲気は両社が持つ情熱で溶かしちゃいました。
さらに「日本発世界」の事業がやりたくて、シリコンバレーに飛び出張所を構えるべく準備しました。「外需の稼げる中小企業」「日本製品を海外へ」そういう大義を持って、1社でも多く実現させたい!その想いを持って突き進みました。加えて中国への越境EC事業も立ち上げました。しかし海外案件は簡単ではなく、上手くいかず両方とも事業を撤退してしまいました。しかし多くの挑戦者であるベンチャー企業の皆さんと取引ができ、それ自体が資産となっています。
また連結経営を実行すべく挑戦しました。単体経営と連結経営は難易度が何十倍も異なります。グループ会社でテック中心の企業をつくりたく動きました。多くの人から「エンジニアが入社するわけがない」と言われました。しかし現在も、優秀なエンジニアの皆さんが続々と入社してくれています。エンジニアの皆さんのお陰で、我々はオリジナルプロダクトを生み出せる会社に発展することができました。
そんな中、2013年から2年間、大学院に通いMBAを取得しました。目が回るほど忙しかった時期でしたが、経営の基礎を学ぶことができました。体系的に学ぶことの重要性が理解できました。また恩師・田中洋先生との出会いもあり、新しい多くの友人もできました。
IPOを目指す際も「できるわけない」と笑われ、反対されましたが、社員一丸となって突き進み、2017年7月12日、東証マザーズへ上場することができました。上場審査というプロセスを経て管理部門も強くなり、本質的な成長の礎を築くことができたと思います。
ソウルドアウトの拡大と強いチーム作り
経営チームの内外部比率は50%がベストだと考え、外部の優秀で価値観の合う素敵な方々に声をかけ、参画してもらうことに成功しました。皆さんの参画により、我々は格段の成長を遂げることができました。内部昇格だけではない経営チームづくりは、外部の新しい価値観が混ざり、新連結となって多数のアイデアが生まれていきます。加えて、テックとマーケの分野については、さらに強化すべき箇所と考え、経営チームだけではなく顧問を創設し強化していきました。
そんな挑戦を続けていたら、東証一部に上場することができるようになっており、2019年3月22日、市場変更することができました。
一方、ずっとやりたかったクラウドファンディングへのチャレンジは、志半ばで断念しました。仲間を集め、事業計画を作り、準備万端でしたが諦めました。
その後も理念実現のため、一社でも多くの企業様を支援するため、挑戦の手は緩めていません。M&Aでメディアエンジン社が仲間に加わってくれました。彼らが仲間となってくれて、我々と連携を強化していきました。お客様へ対して提供するサービスがまた一つ増えました。連携が功を奏したこともあり、メディアエンジン社も大きく成長することに成功しています。
コロナ禍では、事業会社さんの広告控えもあり、営業利益が下がってしまいました。株主さんからは心配され、株を売られ離れていってしまった方も多数いたと思います。ただ我々は必ず復活します。信じて株を持っていただいている皆さんに必ず還元したいと思っています。
また社内においても、構造改革やガバナンス強化にもテコ入れしました。取締役会をスリム化し、社外役員比率を上げました。今当社にとって必要なTech分野とIRの領域で知見のある2名に今年から新たに加わってもらっています。より一層、取締役会が活性化しています。
また、経営と執行を分離する上で「カンパニー制」にも挑戦しています。創業メンバーである山家や伊藤にグループ執行役員になってもらい、遠心力経営にチャレンジしています。遠心力はバラバラになるリスクがあります。そのためグループ・パーパスを設定し、グループ全体の根底に流れる文化をつくる、サンドイッチ型の新しい連結経営の形をマネジメントすべく挑戦しています。こういった変革を通じて、グループである意味が生まれ、鉄の結束が成し遂げられると考えています。
新たな企業文化を構築する
コロナに加え、2020年7月、コンプライアンスに反したことで、悲しい出来事が起きてしまいました。辛くて苦しくて、涙も枯れ果てました。自己否定を繰り返していました。会う人皆に、「元気がない」と言われました。おっしゃる通り、全く元気は湧いてこないし、モチベーションを維持するのも大変でした。この件については原因を追究し、対策を施し、二度と起こしてはいけないと強く決意し、多くの時間を割きました。「八方よし」を全社員が理解して考えることのできる企業文化に変えなければいけない、そう考え実行に移しました。自社利益第一の1.0、顧客主義が2.0だとしたら、八方よしは3.0。ステークホルダー資本主義に近しい考え方。
これら自分の考えていること、この悩みもがいた過程を全社員に開示すべきであり、理解してもらいたいと思いました。そのため会長大学を開催しました。会長大学とは、メンバー約20人を集め、約5時間実施します。参加者に徹底的に伝え対話します。八方よしの理解を促進してもらおうと、5時間全力で説明します。それを合計20回実践します。自分の言葉で伝えることで腹落ちしてもらい、皆で同じ方向を向けるよう、一致団結していきたい。
そして2020年に起きたことを学びとして捉え、サステナビリティ経営に着手しはじめました。社是も「自他共栄」に変更し、中長期目線での経営を実行すべく挑戦しています。サステナビリティ経営については、まだまだできていないことが多いです。ただ、新しいベンチャー企業の形はサステナビリティ経営にあると考え、これから改革しまくっていこうと思っています。そして今まで以上に社会に必要な企業へ発展していきたいと思います。
以上が、私自身の社会人生活の挑戦と失敗の体験です。
ベンチャー企業であることの使命
皆さんに伝えたいことは、成功とか失敗とか、そういう小さな話ではなく、重要なことは「大きな志」と「志に向かって挑戦した数」なんだということです。俺たちベンチャーなので。
誰かがやったことやるというよりも、誰もやっていないことをやる。そういう使命があるベンチャー企業は、常識人から反対しかされません。そんなの想定範囲です。むしろ一つのアドバイスと考えればいいと思います。正義の反対は正義だと考えればいいと思います。
多方面から反対されたことも怒られたことも、無理だと笑われたこともありましたが、信念に基づいて、戦って戦って戦い尽くしました。熱意をもって取り組めば、花が開くこともあります。でも傷だらけです(笑)。しかし、だからこそ今、私はここに立っていることができているのだろう、と思っています。
こんなアホな僕を鉢嶺さんはいつも温かく、ときにはメッチャ厳しく見守ってくれました。いつもグサッと刺さる助言をしてくれます。本当に心から感謝しています。
これからも社会から必要とされる、応援される企業になっていきたいと思います。設立から10年、これからの10年。未来も理念実現に向け、戦って戦って突き進んで、市場を創造したいと思います。そして社会課題に向き合い、貢献していきたいと思います。
これからもブレずに真っすぐ生きていきたいと思います。
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