パスタのお話
彼女と同棲を始めてから、料理を作る機会が増えた。元々料理をすることが好きだったので、マイキッチンがあるというのがとても嬉しい。
料理の中でもパスタを作るのが一番好きだ。
ぐつぐつと沸騰したお湯の中に広がるパスタ、細かく切ったニンニクをオリーブオイルでじっくりと加熱する。キッチンの周りにはなんとまいえない匂いで充満する。パスタが茹で上がるまで、近くに置いているスマートスピーカーでラジオを聴いていると、昔好きだった曲がふと流れる。いいものです。
パスタで思い出したんですけど、イギリスに留学をしていた時、同じクラスのイタリアの学生の子とカルボナーラについての話になった。
「僕もよくパスタを作るんだよ。カルボナーラを作るんだ」と僕が少し自慢げにいうと、彼は、
「チーズは何を使うんだい?パルミジャーノレッジャーノか?ペコリーノロマーノ、それともグラナパダーノ?」と本格的な話になった。
「僕はよく売っているチーズをつかうんだけど」というと、真剣な眼差しで
「だからチーズの種類は??」と突き詰めたれた。
僕が「ごめんだけど覚えてないよ。けど牛乳とコンソメを入れてるよ」というと
「ミルク?!何を考えているんだ!コンソメなんてスープで煮込むものだろ?Are yoh really??
カルボナーラってのはねまずはパルメジャーノレッジャーノと……」
と10分くらい説教された覚えがある。どうやら僕の今まで作っていたパスタはパスタではなかったようで、イタリアの人たちからすると論外なのだそうだ。
おそらく、僕らが寿司に謎の具材を巻いて食べる、あのカルフォルニアロールを見て、「あれは寿司ではない」と少し怪訝な顔をして文句をいう感覚と似ている気がする。
それ以来、できる限りカルボナーラを作る時はパスタと卵とチーズのみで味をつけるようにしている。牛乳やらコンソメやらで味をつけると、イタリアの人たちからこっそりと攻撃を受けそうな気がするからだ。コンソメ入れると美味しいのにね。
最近は和風パスタにハマっている。彼女から好んで食べてくれるからだ。今思うと和風パスタなんて作って、あのイタリア人たちに食べてもらうとするならば、「何だいこれは?!ふざけるんじゃない!ソイソース??それはスシにでもつけてろよ。気が狂ってる食べ物だね」とお説教を受けるのだろう。
結局のところ美味しければそれでいいんですけどね。