
差別化する意味をあらためて考えてみる
既存の市場に参入するときに、大切なのは差別化です。でも、すでに売れている競合商品がたくさんあるのに、それらの真似をせず、差別化しなければいけないのは何故でしょうか?今回は、差別化の意味について説明してみたいと思います。
ポジショニングとは何か?
下の図を見てみてください。ある市場に、すでにいくつもの商品が存在しています。丸の大きさは売上規模だと考えてください。
この市場にこれから参入する場合、あなたは①~④のどこを狙いますか?
よくあるのが、Pが一番売れているから、最大の市場を狙うために③を選ぶパターン。また、たくさん商品があるけどあまり強い商品がないため勝てそうな④を選ぶパターン。これらの考えは、気持ちはわかりますが、戦略的にはどちらも良い手ではありません。
ここで、選ぶべきは、競合商品のいない①になります。ただし、ここに競合商品がいないのは、たまたまなのか、ここにはお客様のニーズが無いのかは確認する必要があります。
この図では2つの軸によって、市場が4つのカテゴリーに分かれています。
ポジショニングとはこのように市場をカテゴリーに分割することを意味しています。①のカテゴリーには商品が無く、②のカテゴリーにはQ、③のカテゴリーにはP、④のカテゴリーにはR、S、Tの3商品があります。
現状、この市場には5つの商品がありますが、カテゴリーで考えると3つのカテゴリーに分かれていると言うことができます。
差別化の意味とは?
では、なぜ①を選ばなければいけないのか考えてみましょう。
それは、①のカテゴリーには競合がいないからです。つまり、①に商品を出せば、A’とB’をどちらも求めているお客様は、自社商品でしかニーズを満たせません。①のカテゴリーを自社が独占することができます。競合商品とはカテゴリーが違うので戦う必要がありません。これまでこの市場には、3つのカテゴリーがありましたが、新たに①という新カテゴリーを創出することができます。
②~③に商品を出すと、競合商品とお客様を奪い合うことになります。基本的に、同じカテゴリーに後から商品を出すと、それは先行商品の類似品、模倣品と見られますので「ニセモノ」と考えられて選ばれません。つまり、同じカテゴリーでは先行している競合に勝つことはできません。
ポジショニングが埋まっている場合はどうするか
では、このように、全ての象限に競合商品がいる場合はどうすれば良いでしょうか?あなたは①~④のどこを狙いますか?
この場合、①~④のどのカテゴリーにも競合商品が存在します。
こういう時は、どこも狙いません。A、Bとは違う軸を考えることで、競合のいないカテゴリーを見つけ出します。
このように、新たな軸Cを考えると、ポジショニングが変わり、①の象限には競合商品が存在しないことが分かります。これで、競合のいないカテゴリーが見つかったので、①を狙った商品を開発します。
差別化が市場に与える影響
既存市場に新商品で参入する時は、このように、競合のいないカテゴリーが見つかるような軸の組み合わせを考えていきます。
この軸はお客様のKBFで設定します。例えば、「性能」「品質」「簡便性」「嗜好性」「ステイタス」など様々です。
このように、軸を考え、新たなカテゴリーに自社商品を発売できました。
それによって、この市場のカテゴリーは3つから4つに増えます。その分、お客様が増えることになります。そして他のカテゴリーとは差別化されているので、他のカテゴリーのお客様を奪うこともありません。つまり①のカテゴリー分、この市場の規模が拡大することになります。
このように、カテゴリーを増やすことで、市場は拡大します。量販店のような流通も市場拡大は歓迎です。自社商品を取り扱うことでこの市場全体の売上が増えるなら、積極的に採用してくれます。棚が限られている場合は、カテゴリーのかぶっているTとQ、PとRをどちらか一つに絞り、自社商品の場所を空けてくれます。(説明は割愛しますが、この場合はRが不要になりそうです。)
差別化の注意点
あなたがトップ企業でない限り、基本戦略は差別化です。とにかく、競合商品とかぶらない、新しいカテゴリーを創出して市場を拡大してきます。
ただ、以下の点には注意が必要です。
1.必要としているお客様がいるか
競合がいないカテゴリーでも、お客様がいなければ無意味です。
2.十分な市場規模があるか(将来的に見込めるか)
お客様がいても、ごく少数では事業として成立しません。
3.実現可能か
商品化のハードルが高いために競合がいない場合もあります。
4.ニーズに応えられているか
お客様が満足できる商品力がなければ意味がありません。
5.お客様視点のポジショニングになっているか
ポジショニングの軸を判断するのはお客様です。
お客様視点で意味のある軸(KBF)でないと伝わりません。
まとめ
今回は差別化の意味について考えてみました。
差別化することは、競合との戦いを避けることであり、新カテゴリーを作り出して市場を拡大することであり、お客様を囲い込むことです。
差別化されていることが、自社商品が市場に存在する意義です。差別性を高めることで存在価値を高め、独自のポジショニングを確立しましょう。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。