2022年自選10首

八十年夫婦でいるか八百年友達でいるか選んでほしい

今のところ、人生でいちばんの作品がこれだと思う。19歳の自分が超えられなくて、くやしい。
創作技法論Iで、「私だったら720年友達をやって、最後の80年間夫婦でいたい」と言ってくれた受講生のことが忘れられない。


朦朧の中で最後に見えたのはわたし以外に駆け寄るだれか

ありがちな絶望


しぬ七日前に会いたいと思ってるおそーしきには来なくていいから

「しぬなのか」というふうに開くかどうかずっと迷ってい          る


ひそひそと話すなよ大教室で なんか猫背になっちゃうじゃんか

女子大で他学科の講義を受けていたときのこと。

千羽鶴さっさと飛べよ甘えんな ぶら下がりながら祈るだなんて

でも千羽の鶴が一斉に羽ばたいたとしたらきっともうそれは叶っている

幸せなひとを見る目が好きでした まるで劣等の挿絵のような

口語詩句では「幸せなひとを見る目が好きでした/劣等の挿絵のようでした」で出した。「まるで劣等の挿絵のような」のほうがおさまりがいいと思って、改作。

生麦と生姜を見間違うように私のことを思い出してね

なまむぎとしょうが、似てませんか

性善説 飢えているから空耳と気づいていたって感謝を怒鳴る

聞き間違いでも感謝していきたい 大きな声で

感動も成功も努力も「今です」と答えたいわよ膝を揃えて

就活の面接、今がんばってるんですけど……になっています、毎回

塩分は鎮痛剤になりうるか 涙なんかより透いた清湯

淡麗なスープが美しいラーメンを食べているとき。涙って清湯に比べたらぜんぜんしょっぱくないし温かくない、時代はラーメンスープ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?