書籍【職場のメンタルヘルス・マネジメント】読了
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◎タイトル:職場のメンタルヘルス・マネジメント~産業医が教える考え方と実践
◎著者:川村孝
◎出版社:ちくま新書
上司も部下も、役割を演じることだけを求められているのだと思えば、職場環境は大きく変わっていくと思う。
確かに、特に上司は「上司の役割」をきちんと演じることが大事だ。
本書では「ここは仮面舞踏会。自分を役者だと思え」と説くがあながち間違いではない。
しかし、本当にそれだけで上手く行くとも正直思えない。
著者は産業医であるから「上手く行かないこともある。その時は産業医に任せてほしい」とも書いている。
これも本音だろう。
普通の病気と同じで、素人が自己判断で治療すると後が大変ということ。
もし自分の判断が間違っていて、かなり悪化してから医者に診てもらっても、施しようがない場合だってある。
結局は予防することが一番なのであるが、これがなかなか難しいのが「メンタル」というものなのだろう。
いくら自己防衛を心掛けても、結局他人との関係性において影響を受けてしまう。
事前の予防にも限界があると言えるのではないだろうか。
所詮、人間の悩みなんてほとんどが「人間関係の悩み」つまり「他人との関係性」だ。
確かに「仕事そのものの悩み」ももしかするとあるかもしれないが、実際は少数ではないか。
やはり「働きやすい」という環境ならば、悩みは相当に軽減されると思うのだ。
その上で、さらに自分の得意を活かせ、周囲から褒められることがあれば、自己肯定感は大きく上がるだろう。
もし自分の目指していた理想の仕事に就けたとして、それでも周囲との関係性においてメンタルが病む時があるのだから、職場の全員が注意しなけばならない。
私自身も今現在人事関連の仕事をしているが、いまだに現場からパワハラやセクハラの疑惑が上がってきたりする。
昔は許されても今は絶対にNGであるし、しつこいくらいにハラスメントセミナーなど研修を繰り返しているにも関わらず、そういう訴えが現場から上がってくる。
本当に不思議に思うのだが、それだけ人間関係が複雑化し、仕事が複雑化していることが、これらの原因を作っているような気がしてならない。
会話の量が少ない部署は、それだけで仕事のパフォーマンスも低く、メンタル疾患が出やすいことも分かっている。(実感としても当然のことだと思う)
テレワークが増えたことで、会話の量を増やすことは難しくなった。
言葉にならない職場のちょっとした情報についても、テレワークで感じ取ることは難しいだろう。
だからと言って、今更全員出勤を強要することは余計に難しい。
(そういう企業もあるということは理解しているが)
職場社員のメンタルヘルスが、結果的にエンゲージメント向上につながることになり、企業の事業継続性にも影響する。
これらすべてをバランス取りながら経営者は舵取りしていくのだから、本当に難しい時代になったものである。
だからこそ、人事も現場も「ホワイトな企業体質」を作っていかないと、確実にその企業は将来生き残れない。
会社側に「安全配慮義務」があることは理解しているが、きちんと働ける状態をお互いに作ることが大切だ。
つまり社員側も、働ける状態を安定して保つことが大切。
「言うは易し行うは難し」であるが、人事担当者としてここは固い信念で実行していきたいと思う。
(2023/6/11)