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書籍【サステナブル資本主義~5%の「考える消費」が社会を変える】読了

https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/4396617658

◎タイトル:サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える
◎著者:村上誠典
◎出版社:祥伝社


「サステナブル資本主義」という言葉を初めて聞いたが、非常に共感できる。現状のシステムはすでに限界だ。
現代の資本主義は、一部の大金持ちを生み出す一方で、大多数の貧困層を生み出してしまうという、構造上の課題がつきまとっている。
金持ちは益々金持ちになってしまう仕組みのために、格差を生み出し、その差は広がる一方となる。
一度貧困に落ちてしまえば、そこから抜け出すことは非常に困難で、実際には「無理ゲー」と言える状態であることは間違いない。
本来であれば、国家が主導して、大金持ちから更に税金を取り、貧困層に対して適切に配賦することで格差を是正すべきなのだが、正直「格差是正」までには至っていない。
一部の賢い大金持ちたちは税金を巧みに逃れているし、大金持ちほど政治に対する影響も大きいために、さらに税金を取ろうと画策する政治家に対して、様々な手を尽くしてその前に立ちはだかる。
だからなかなか格差是正は進展しない訳であるが、本書での主張は「国家だけに任せるのではなく、消費者自らが少し考え方を変えるだけで、サステナブルな社会を作り出せるはずだ」というものだ。
これは非常に納得できる。
著者は、消費者自身が先ず「投資家マインド」を持つべきだと説いている。
商品を購入する消費者とした場合、自身の都合のためだけに安いものを買うのは止めよう、ということだ。
購入時に、目の前の商品について、大局観で考えを巡らせることが、実はものすごく重要なのだと思う。
自分の利益だけを考えるのは、まさに資本主義の考え方であり、1円でも安い商品を買えればいいという考えに陥りがちだ。
しかし、そこで投資家マインドを持ち、「この商品価格は適切なのだろうか?」と批判的に考えることが大切なのだと思う。
近年ようやく「フェアトレード」という言葉が浸透してきたが、まだまだ十分とは言えない。
消費者が多少高くてもきちんとした商品、社会にとって良いと思われる商品を選択して購入していく必要がある。
消費者自身が地球にとって何が必要か、持続的な社会はどういうことかをもっと真剣に考えれば、世の中の不平等は今のシステムでも充分に解消されていくはずなのだ。
企業は労働者から搾取した安い賃金でビジネスするのではなく、きちんと適切に、まさにフェアトレードであるが、相手に充分な対価を支払って取引をすることが重要なのだ。
企業が適切なビジネスで、それで収益を上げれば、その収益をさらに次の投資に回し、ビジネスを正しく拡大していくことができる。
何でもかんでも闇雲にビジネスを拡大しろということではなく、社会にとって良いやり方、最適なやり方はどういうことなのかを、企業も社会も真剣に考えていくべきなのだ。
現在は、CO2の削減が実質的に出来ない企業は、カーボンクレジットの購入という形で、炭素を減らすことを金銭で代替えするということがある。
カーボンクレジットの考え方自体に賛否はあるようだが、個人的には、現時点の現実解としては良い仕組みだと思っている。
実際、地球環境は待ったなしの状況であり、化石燃料を掘り出してそれをもとに安く商品を作るという現状は、よくよく考えれば資源を使い果たしているだけで、地球全体で考えれば決してサステナブルではない。
いつか資源は枯渇し、減った資源を再び取り戻すには莫大な時間がかかる。
この「再び取り戻すのに、コストはどれくらいかかるのか」を算出して、販売価格に上乗せしていく、もしくはCO2削減が出来ない企業に購入してもらうというのは、理にかなっていると思うのだ。
これはある意味、フェアトレードと言えるのではないだろうか。
消費を投資と考えるのは当然だが、労働も投資と考えると、働いて給与を得ることだけではなく、その会社で働くと将来社会に対してどういう影響があるのかをきちんと考えなければならないということだ。
もちろん、国民全員がそういう意識になれば社会は変わると思うが、著者は全体の5%でもそういう考え方の人が出てくれば、社会は変わると言っている。
キャズム理論として、アーリーアダプターを超えるための谷について有名であるが、それに近い状態だと思う。
全体の5%と言えるアーリーアダプターが、社会にとって良いこと、サステナブルな社会をどう作るかを考えるだけで、きっと世界は良い方向に向かっていくはずなのだ。
本書で記載されているが、現状の資本主義は行き過ぎていると思う。
販売されている製品は、すでに機能差がほとんどない状態になっている。
コモディティ化されてしまった商品を、今でも大量生産し、消費者に対して販売し続ける。当然売れ残った商品は在庫となり、いつか廃棄されてしまう。
この状況がいつまでも続くとはとても思えない。
すでに「顧客の課題がない」からこそ、製品はコモディティ化されてしまった訳であるが、企業は顧客の声を聞き過ぎではなかろうか。
これがマーケティングの限界と感じるが、間違っているだろうか。
顧客の課題はすでに解決されて、一方で社会課題は益々増え続けている。
「課題がない」訳では決してない。
顧客の課題ではなく、社会課題は解決されずに、今でも課題として残り続けてしまっている。
これを何とかしないことには、、サステナブルな社会なんて来るはずがないと思う。
サステナブル資本主義という考え方は、従来の資本主義を全否定するものではない。
資本主義のバージョンアップ版、ほんの少し考え方を変えるという派生版かもしれない。
地球環境を守って、誰もが豊かに暮らせる社会を実現するための新しい経済システム。
この構築はこれから必須である。
結局は、我々一人一人の意識を変えることが重要であるが、それに留まらず、実際に行動していくことが重要だと思うのだ。
(2024/6/12水)


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