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書籍【天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす 問題解決の4ステップと15キーワード】読了

https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B09MQDL4XF

◎タイトル:天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす 問題解決の4ステップと15キーワード
◎著者:オードリー・タン、黄亜琪、牧髙光里(訳)
◎出版社:文響社


氏の一言一言が、その奥深さを感じさせる。これからの時代に必要な能力とは、こういうことなのかと思う。
氏が大臣就任にあたって、いくつか条件を出したのだという。
そのうちの1つが「出席する会議のすべて、イベント、メディア、納税者とのやり取りは、録音や録画をして公開すること」ということらしいのだが、こういう点でも氏の非凡さを感じるところだ。
この条件だけでも、簡単な話ではない。
自分自身をさらけ出すのは勇気がいる行為だ。
間違った発言をするかもしれないし、他者から責められることもあるかもしれない。
それらのことも含めて、全て公開するのだという。
当時総統に就任した蔡英文氏もよく了承したものである。
大臣の任を断るための条件提示とは思えないので、心底「国民のためには、こうすべきだ」という強い考えから出したものなのだろう。
氏は徹底的に、フラットな立場を貫く。
「ブロードバンドへのアクセスは、人権である」という発言についても、意味深いと思った。
最近でこそ、日本でも「デジタルデバイド(情報格差)」が問題として挙げられているが、その解決の道のりは遠い。
もはや今の社会は、インターネットへの接続が前提になっていて、それを使いこなせないと、生活が成り立たない。
当然、回線は貧弱なものでは困るわけで、大容量が前提となる。
テキストよりも画像よりも「動画」の方が情報が伝わりやすいという点を見ても、当然のことだ。
使う側のリテラシー向上も勿論必要となる。
「単にインフラを整備しましょう」ということではなく、「人権」とまで言い切るところが強い。
インターネットは民間から生まれたもので、元々国家が監視して戦略的に発展してきたものとは違うものだ。
ここが有限の電波を利用している放送などと異なるところではある。
国の関与がほとんどなく、私企業が管理しているインターネットインフラを「人権」と発言するのは相当氏の気持ちが入っている。
これは、現実として、国民が実際そう思っているからなのだ。
国民は、インターネットが繋がらなければ、現実的に生活に困るのだ。
これは単に1人の生活者の話だけではない。
どんな田舎にある店舗だって、今はインターネットに繋がっていなければ、顧客サービスの品質が低下してしまうだろう。
デジタル化によって付加価値が生まれるのがDXとも言えるが、そもそもインターネット回線がなければ、DX化も成り立たない。
そういう意味でも、より豊かな暮らしを維持するためにも必要なのであるし、それを奪う(もしくは与えない)という選択肢はないということなのである。
そして、本書内で氏が語っている「大切にしている姿勢」に共感した。
3つのFを意識しているということで、そのFが「Fast(素早く)・Fair(公平に)・Fun(楽しんで)」なのだが、これは確かにその通りだと思う。
「素早く」は、企業でも行動指針として掲げている会社があるくらいなので、分かりやすい。
今の時代は特に、時間をかける事の方がマイナスに働く場合が多い。
素早く動くことで、間違えた時は方向転換もしやすいというのがある。
「公平」は、前述している「情報公開」や「ブロードバンド接続は人権」の話にも繋がるが、これも分かりやすい。
今の社会では特に必要な考え方だと思う。
「公平と平等が何が違うのか」はよく語られる問いであるが、精神的に豊かな社会こそ、公平性が担保されていると思うのだ。
世界の中で見ると、国によっては不公平も不平等も蔓延っているところがあるが、我々の社会が成熟してより良いものを目指していくためには、「公平性」はものすごく大事なところだと思う。
そして「楽しんで」を最後にきちんと入れているところが、氏の人柄が出ている部分だと思った。
自分が楽しむということもあるが、むしろ参加する人に楽しんでもらいたい。
一過性で終わるのではなく、続けていくためには、関係者全員の「楽しさ」は非常に重要な要素だ。
それこそ、精神的に豊かな社会になるためには、笑顔は欠かせない。
人々が下を向いて暗い顔をしていたら、健全な社会とはとても言えないだろう。
楽しさがあれば、「問題をみんなで解決しよう」というモチベーションにも繋がるはずだ。
ここでも、1人の天才が社会を変えるという発想はない。
みんなで価値を創り上げることが重要で、そのために常に相手の立場を意識できるかが大切なのだ。
本書内でも「1つの視点に偏ると、ゼロサム思考しか生まれない」と説かれている。
より良い社会とより良い未来を創るために人々を巻き込んで、よりレベルの高い結果を出す。
もちろん私は天才ではないし、氏ほど考えが及ばないのも事実だが、見習うところが沢山ある。
特に、ユーモアが足りていないのは自覚している。
公平性を意識して、楽しんで、周囲も楽しませて、日々の生活を送っていきたいと思った。
(2024/7/21日)


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