![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/150258376/rectangle_large_type_2_7fcfeb0b14bb1f54743952efffcc4fc7.png?width=1200)
書籍【情弱すら騙せなくなったメディアの沈没】読了
![](https://assets.st-note.com/img/1723291725947-aayep4xbTj.jpg?width=1200)
https://booklog.jp/users/ogawakoichi/archives/1/B09KL775BD
◎タイトル:情弱すら騙せなくなったメディアの沈没
◎著者:渡邉哲也
◎出版社:徳間書店
民放地上波テレビ局のメインとなる収益構造は、今でもCMという時間枠を販売し広告収入を得るというものだ。
そのビジネスモデルが瓦解しようとしているというのが、本書の主旨である。
日本の広告費推移などで検索すれば、分かりやすいグラフがすぐに出てくるが、インターネットの広告費が、テレビの広告費を超えたのが2019年。
そこからコロナ禍を経て、すでに約5年が経過している。
インターネットとテレビの広告費の差は開くばかりで、今後もこの状況は変わらないだろう。
本書に書かれている通り、テレビも新聞も益々窮地に追いやられていくのは間違いない。
だからこそ、テレビ局も新聞社も稼ぎ方を変えていく必要がある。
業態転換が必要なのは分かっているが、これがなかなか簡単にはいかない。
まさに「両利きの経営」をやらなくてはいけなくて、様々なトライ&エラーを試みている最中だ。
今までは、各テレビ局がライバル同士で、視聴率競争をしているだけでよかった。
数字が取れるキャスティングをいかにできるか。
各芸能事務所、広告代理店、レコード会社などと蜜月の関係を構築し、そのムラ社会の中でのしのぎを削っていればよかった。
もちろんだが、今でもその関係性が完全に壊れた訳ではない。
視聴者に受け入れられるためのコンテンツを制作するためには、どうしても必要な力だと思う。
確かに映像コンテンツについては、映像作家というプロでなくても、誰でもスマホで撮影して編集まで出来るようになったという側面もある。
これはテクノロジーの進化の大きな要素だ。
限られた人しか映像を制作することが出来なかったのに、今ではスマホを持つ人なら誰でも出来るようになってしまった。
さらに、YoutubeやTikTokなどにUPすることも1タップで出来るので、「制作した映像を公開する独占性」についても、放送局という特別な流通経路に頼る必要がなくなってしまった。
テクノロジーの進化は「民主化」という名の元に、様々な業界のビジネスモデルを崩壊させている。
テレビ局は結局「放送波」という電波利権をCMという形でお金に換えて儲けていた訳であるが、本当に厳しい状況に陥っている。
そこで「コンテンツ(番組)を制作し、直接販売することで儲ける」という方向転換を図ろうとしている訳であるが、前述した通り、世界中の誰でもコンテンツを制作できる状況で、テレビ局ならではの特徴的なものを制作し、高い値段で販売し利益を確保していくのは、実は相当に難しい。
日本の中でも一部のテレビ局は生き残れるかもしれないが、全国の地域にある地元テレビ局は、さらに厳しい戦いを強いられている。
本書に記載されていることは、いちいちその通り。
この状況に意識を向けず、今でも昔ながらの考え方で働いているテレビ局社員というのも、さすがに減っている。
相当に危機意識を持って働いているはずであるが、それでは「どうすれば、我々は生き残れるのか?」という課題の解決方法について、明確な正解を出せない状況である。
これだけ時代の変化が激しい社会で、テレビ局に限らず、新聞社だって、他の業界だって似たような状態のはずだ。
間違いなく、明確な正解はない。
だからこそ「今できる最適解とは何なのか?」を、関係者で議論して、メンバーが納得し腹落ちして、手探りながら進めていく必要がある。
本当に難しい時代になったものである。
最近は私自身「話し合う」ということが、本当に大切だなと感じてしまう。
考え方や価値観、前提の知識レベルもバラバラなメンバー間で、向かうべき方向性をまとめていかなければいけない。
最近は社内でも議論ばかりを続けている。
我々も生きていく以上は、簡単に沈没する訳にはいかない。
改めて本書を読んで感じた次第である。
(2024/6/27木)