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写真と解説

思潮社の現代詩文庫『丸山薫詩集』(1989)、辻征夫の解説「詩人の風貌――二、三の作品について」。「私が丸山薫の写真を初めて見たのは、1961年の12月18日、創元社の全詩集大成『現代日本詩人全集』第11巻でだった」150ページ。創元社の1953年の、その本は、ここにもあって、私も、写真を見ることができる。この写真について辻征夫は「どこかの、埃ぽい道端に立っている丸山薫は、皺の寄ったよれよれのズボンのポケットに両手をつっこんで、カメラを正面から見ている。ネクタイも少し曲っている。表情は、笑みを含んでいるわけでもなく、会話の途中という感じでもなく、要するに、何でもなく、目が覚めたら背広を着てそこに立っていたという感じで、ただ立っているのである。」150~151ページ。辻征夫の文章を読んで、そして、写真の丸山薫を見ると、埃っぽいような道端であるし、よれよれのズボンのポケットに両手をつっこんでいるし、まっすぐ、こちらを見ているし(完全に笑顔ではない、と言えるのかどうか)、たしかに、ネクタイが少し曲がっていて、表情は、特別な本の写真だ!という緊張がなくて、そこにいる――そして、現代詩文庫でも、写真の丸山薫を見ることができる。ベレー帽で、少しは、人に見られていることを思っているようだ

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