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「事件は会議室で起こっていない」ことを体現する組織開発

 “安心”と“信頼”は、似て非なるものかもしれません。リーダーにとって、これらはどのような意味があるのでしょうか?


“安心感”のある組織

 信頼とは、利他的であるという考え方があります。すなわち、「相手は自分(私)を攻撃しない」という、期待が成り立つということを意味するというのです。
 一方、安心とは、利己的であるとします。すなわち、「相手は自らに損をもたらす行いはしない」という、期待が成り立つということを意味するとしています。
 例えば、炎上を引き起こす者は、それが自らに降りかかってくることを想像していません。ただ、自分の正義だけを主張しています。したがって、信頼に値しない者としてみなされるでしょう。
 逆説的に、信頼できる人物とは、自身の行動が相手に及ぼす影響を慮れる者ということになるのではないでしょうか。
 一方、安心感のある人物とは、本質的に無関心な人物なのかもしれません。
 なぜなら、自らに影響を及ぼさない限り、相手を否定することがない人物だからです。
 例えばカウンセラーなどは、まさに“安心感”を与える人物ではないでしょうか。
 だから、カウンセリング技法に基づくコミュニケーション・スキルを身に付けた者が多くいる組織では、安心感を醸成することができると言えるかもしれません。

“安全”である組織

 リーダーとなるためには、おそらく“安心感”だけでは足りず、信頼感までをも獲得する必要があるように思われます。
 しかし、信頼の根拠を、仕事そのものに求めると、自分の正義に固執することになってしまいます。
 すなわち、「私に任せなさい」と一方的に主導権を握ろうとしたり、「こうすれば上手くいく」と他の意見を無視したりするようになるでしょう。
 なぜなら、そのようになる原因の多くが、強い成功体験か、責任というプレッシャーに抵抗するための虚勢か、いずれかに見ることができるように思われるからです。
 このような事態を避けるためには、組織が“安全”である必要があるでしょう。
 例えば、会議室の外ではいろいろと発言するのに、会議の場では黙っているような人は、どの組織にもいるのではないでしょうか。このような人物が存在することは、その組織が“安全”ではないことを示しています。
 おそらく、このような状況から脱するためには、メンバーの過半数以上に“安心感”を持てることが、まずは必要でしょう。
 すなわち、発言内容には、プラスの評価はあっても、マイナスの評価はないとすることが重要です。

“会議”のない組織

 大抵の組織では、「〇〇会議」と称するものが、多く開催されています。
 しかし会議は、意見交換の場であり、それはディベートの場でもあります。
 ディベートは「勝ち・負け」を争うものであり、したがって、勝った者には責任が、負けた者にはマイナス評価が降りかかってきます。
 このような“会議”が、果たして安心感を与えたり、安全であると認識されたりするでしょうか。
 刑事ドラマでは、ホワイトボードの前に2~3人が集まって議論していると、徐々に人が集まってきたり、「ちょっと、聞いてくれ」と声をかけて、全員に情報を伝えたりする場面がよく出てきます。
 おそらく、このような、日々に声かけに基づく“打合せ”が大切であり、これが機能すれば、本質的に会議は不要になるとさえ思えます。
 実際、刑事ドラマで行われる「捜査会議」は、現場の意見をキャリア官僚に伝え、キャリア官僚の承諾を得る場としてのみ機能しているに過ぎません。
 そうは言っても、チョコチョコと仕事が中断されるような環境では、仕事に集中できないと考えるかもしれません。あるいは工場では、ラインに付いているとき、そのような機会を持つことは不可能です。
 しかし、例えば、大きな組織変更が噂されているようなときは、休憩時間も、その話題で持ちきりとなることでしょう。
 つまり、何を話し合うのかは、そのメンバーの関心度合によって決まるのです。
 それを“会議”と称して、一律に重要性を訴えたとしても、それはメンバーに響くことがないばかりか、その組織を、ただ、安心感を得られず、安全とも思えない場としていくのではないでしょうか。

ハブとなるリーダーのいる組織

 会議の予定が多いと、「働いている」という実感を持つかもしれません。あるいは、会議に参加していると、自分が組織の一員であると承認されているような気分になるかもしれません。
 しかし、それらは会議の本質ではありません。それらは、本来、仕事そのもので感じ取っていく必要があるものでしょう。
 戦国時代、2万の兵力は2千の兵力に勝ると過信した武将の多くは、致命的な失敗を起こしました。組織力とは、まとまることで力を発揮するのではなく、ネットワークが機能して初めて威力を持つということです。
 ネットワークの基本は、個と個の繋がりです。ただ、それを俯瞰してみると、チームとチームの繋がりも見てくるというものに過ぎないのではないでしょうか。
 そうであるならリーダーの役割は、そのネットワークのハブ(連結点)になることだと思われます。
 そして、そうなれたとき、メンバーはその人に信頼感を寄せ、その人はリーダーになっていくのだと考えます。

 なお、リーダーシップについては、「憧れの管理職になれるリーダーシップ」をご参照ください。

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岡島克佳
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