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同志少女よ、敵を撃て

あらすじ
第二次世界大戦の最中、ロシアの小さな村に住む猟師の少女セラフィマは、ある日を堺に軍隊に入隊し、女性狙撃手として前線に向かうこととなる…

前回の「ウクライナ戦争…」の中で紹介されていたので読んでみたが、大当たりだった。とても気に入ってしまった。
小学生の時に何度も読んだ「ダレンシャン」シリーズといい、大学生の時にハマった「聖の青春」といい、どうも師弟ものがツボに刺さるのかもしれない。

この先本書のネタバレを含みます。
オススメの小説なので、ぜひ読了後に読んでいただければと思います。



この物語の切り口はいくつもあるが、もっとも惹かれたのは師匠イリーナのセリフだ。

「その気持ちで狙撃に向かえば死ぬ。動機を階層化しろ。」

このセリフを起点として、「同志」と「敵」がゆっくりと入れ替わり始める。

冒頭、セラフィマの動機は「敵を殺すこと」。つまり母を撃ち殺し、自分を犯そうとしたドイツ兵たちに、そしてセラフィマの思い出と共に村を焼き払ったイリーナに復讐をすることだった。

しかしセラフィマは訓練の中、そしてドイツ軍との戦闘の中で自分の動機の深層にあるものに気づく。それが「女性を守ること」であった。
「敵を殺すこと」は、自分の母をはじめとする女性たちに対する脅威を取り除くための手段であり、動機の表層の部分だったのだ。
そして同じように、それぞれの深層の動機を大切にするために戦い抜く同志たちと出会い、自分も意志を固めていく。

その結果として、ラストのシーン、かつての「同志」は「敵」に、殺そうと憎んでいた「敵」は「同志」に変わる。
鮮やかな視点の切り替わりに夢中で読み進めてしまった。

同じような読書体験を前にしたことを思い出した。それが小学生の頃に読んだ「ダレン・シャン」シリーズだ。

(この先、ダレン・シャンシリーズのネタバレも含みます。)


ダレン・シャンは、半ヴァンパイアの少年ダレンを主人公とするファンタジー児童小説だ。ダレンもセラフィマと同じく平和な日常をある日突然破壊され、平和を破壊した張本人である人物を師匠としてヴァンパイアとしての生き方を学ぶ。
その中で生まれる師匠との歪な絆、そして同郷の親友との対立…
もはや構造的としては「同志少女よ…」と「ダレン・シャン」は全く同じといっても過言ではない(?)

物語としてとても面白いだけでなく、20年以上前の読書体験を思い起こさせてくれる、久々に何度も繰り返し読みたいと思える小説だった。

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