アート×福祉②前例のないことの第一歩
私たちあしおとでつながろう!プロジェクトは障害のあるタップメンバーに、”メッセンジャー”と名付けた、イベントのフロントに立つ仕事を依頼することにしました。
これまで、ただ楽しみとしてタップに取り組んできた障害のあるメンバーを、案内人側に抜擢していく事になるので、計画を進めながらも、私の心の中は緊張でいっぱいでした。代表おどるなつこがプロとしてパフォーマンスのお仕事をいただけるようになるまでにも、実はかなりの時間がかかっています。なんでもそうだと思いますが、経験値を重ねる中で確実になっていくので、初めはこわい!
パフォーマンス業はやり直しのきかない一期一会です。お客様も環境も違うある場所での偶然な瞬間の積み重ねを、設定時間内に、お客様を含め全員の成果として体験するようなことを、確実に実現するには?
アイディアを実現化していくための文書やデータも紹介していますので、ご興味ある方はぜひ参考にされてください!
はじめのいっぽ
2017年度末の助成報告会でその構想を話した際に、審査員のお一人から次年度のイベント参加枠をご協力いただいて、まず初回“メッセンジャー”実現の目標にしていたのが2018年8月の「ダンス縁日@象の鼻テラス(横浜市みなとみらい)」です。港の公園にある開放的な屋内テラスでで行われている夏休み企画の「ダンス縁日」には、例年親子連れのご参加が多いとのこと。
https://zounohana.com/schedule/detail.php?article_id=927
時間帯や立地的なことも考えて、この中区でのイベントは、地下鉄で一本のNPO法人ジョイカンパニー(泉区)への外注作業として、メッセンジャー3名+ヘルパー1名での派遣を依頼しました。ジョイカンパニーは、必要な支援を受けながら楽しく仕事をする地域作業所。お菓子工房運営やペットボトルのキャップ選別などの作業をしながら、2012年から始まった月1回のタップセッションでは、20〜30名の方が大変盛り上がって踊られています。
障害特性?裏返せば能力です!
まず、外注先であるジョイカンパニーの支援体制とメンバー選出について相談。施設側の選出手順としては
・「外部でこんなお仕事があるのですが、興味ありますか?」と打診。
・積極的な意思のあった方の保護者やグループホームに確認。
・当日の行程を元に送迎までを調整。
こうして、普段のタップセッションでも積極的な3名がメッセンジャーに決まりました。行程は、昼食後にジョイカンパニーからヘルパー1名が3名を引率し準備・本番・片付けを行い、終了時刻に保護者とガイドヘルパーによる現地お迎え解散、と決まり、その他演目の相談をして、2ヶ月後に本番当日を迎えました。
初めは、おどるなつこのサポートとして場にいてくれるだけでも良いと思っていましたが、初回メッセンジャーたちは、当日それ以上の役割を担ってくれました。なかでも、オリジナル振付を考えて「およげたいやきくん」を発表したメンバーには感動しました。普段の昼休みに自分の好きな歌でタップを踊っているとのことで演目に組込みましたが、現場で初めて生演奏キーボードと合わせても全く動じる事なくソロを披露!
障害特性と言われる事が多いようですが、聴覚過敏や、定期的な繰り返し・構成・構造に強い興味をもたれる方は、こちらが説明せずとも、音楽の構造を理解されていることが多いです。環境の変化が苦手な方も多いため、事前に会場情報を共有しておくこともとても大切なのですが、これは、表現者が新たな箱(劇場やイベント空間)で何かを上演するときにまず確認するポイントでもあります。つまり、メッセンジャーに依頼する際は情報の渡し方にコツがあるだけで、必要な情報はプロの共演者と変わらないのです。
新たな体験を無事務め終えたメッセンジャーたちの表情はとても高揚していて、普段あまりお話をされない方が、終演後に東京新聞のインタビューにも答えられていました。勤務後に本番に駆けつけてくださったジョイカンパニー職員の方々の、その様子を見守る喜ばしい表情も、とても印象的でした。始めての晴れ舞台は無事成功したのです!
メッセンジャーの仕事を依頼する手順
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