愛ある毒の目撃者に−バンクシー展を観て
「バンクシーが札幌にやってくる!」と昨年末頃から話題になっていた『バンクシー展 天才か反逆者か』に行ってきました。
訪問前から「これはきっと鑑賞というより目撃、て感じかも」と予感していた通り、いやそれ以上に衝撃的でした。
展示はバンクシーの制作の裏側を覗き見できるようなスタジオの再現や専属カメラマンによる制作の様子の写真紹介からスタート。
バンクシーはストリートでサッとペインティングできるようステンシルの手法を取ることが多いようで、再現スタジオには数々のスプレー缶や型紙が散りばめられていました。
どこかストリート感あるBGM、マッドな気配の照明といった演出もあり、彼のミステリアスさをより一層引き立てます。
世界各国に残された作品を動画で観た後は、彼が作品に用いることが多いテーマ毎に展示が続きました。
こちら2点は「消費」をテーマにした作品だそう。
物欲に踊らされる人々、そしてその犠牲者となった者を描いたものが多く、なかなかにショッキングなものも。
「紛争」「軍隊」に関する作品も多くを占めていました。
「ディズニーみたいな可愛いキャラが描かれている〜!」と思い近づくと、捕らえられていたり処刑前と思われる場面だったり不穏な空気感。。
今の世界情勢を思い起こさずにはいられず、胸にグサグサと刺さります。
今回、この展示を訪れてバンクシーの吸引力の秘密を垣間見た気がします。
一見、とても微笑ましい場面やキャラクターを描いたり、有名作品のオマージュだったりと入口はとても広々。
けれども、表現内容やそこに秘めたであろうメッセージは昨今の情勢を痛烈に皮肉っていたりと、「う〜わ実は毒だった!」とまじまじ見入ってしまうものがほとんどでした。
その「毒」の根底に流れるものは、バンクシーが弱者に向ける温かな眼差しなんじゃないかと思います。
上の作品は私が最も好きな「Love in the Air」。
火炎瓶の代わりに花束を投げる様子が描かれています。
こんな風に「暴力ではなくくらえ花束!」という愛とユーモアを持って活動するバンクシー。
今後はどのような愛ある毒の目撃者になれるのか楽しみでなりません。