戦友とカヌレをひと齧り
「はらぺこさん、お誕生日おめでとうございます!近いうちにまたお会いしたいですね!」
私の誕生日にきっかり合わせてメッセージをくれた元職場の後輩。
よっしゃそれなら新年会!ということで後輩リクエストのカフェに出かけてきました。
約1年ぶりに会った後輩はさっぱりとしていました。
私が前職を退職してから数ヶ月後に「今、仕事量がやばくて辛いです…(涙)」と相談してくれたものの状況はあまり改善されず、もうヘトヘトになってしまって退職した後輩。
前回会った時は退職後まもなくで、「今はリハビリ期間中です」とどこかホッとしたような抜け殻のような様子だった彼女。
私たちが勤めていた業界あるあるだと思うのですが、押し寄せる締め切り&締め切り、の合間に良いものを作り続けていくためのインプットに追われ、常に何かに焦りを感じずにはいられない。
そんな環境でした。
人一倍責任感が強い後輩はすっかり摩耗してしまった。
本人曰く、「あの頃はやたらと自分で自分を追い込んでましたね」。
今はリハビリ期間を終えて新たな職場にてスタートを切ったそう。
「周りの人も温かく、ゆったりとした環境なんです」
穏やかな表情でそう教えてくれました。
「これまで自分の経歴が細切れになっている部分がコンプレックスだったのですが、今の職場でいろんな経験が生きているのが嬉しいです」
と、これまでを肯定した上で、
「こんなこともあんなこともしてみたい」
と、未来に向けての前向きな話も聞けたのが何よりだと思いました。
◇
私もあの頃を思えば日々もがもがもがいては結構な割合で沈み、だけれども時たまギフトのような達成感に突き動かされてはなんとかやってこれた約6年でした。
周囲から「なんでそんなに働くの」とも言われたけれど、決して器用ではない私は数をこなして骨身で会得していかなければならなかったから、絶対に必要だった通過儀礼。
…そんな経験値を生かしてこれからやりたいことをこっそり後輩に打ち明けたところ、「素敵ですね!いいですね!」と背中を押してもらえて、とても前向きなひとときでした。いい年始め。
ひとしきりそんな話をした後、オーダーしていた焼きたてカヌレが到着しました。
ここのカヌレはひと齧りすると外はホロリと苦く、中はもっちり、ジュワッと染み出す甘み。
かつての戦友もとい後輩も過去の苦みを糧に、もっちり実りある未来へと進めますように。(もちろん私もだ)