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詩集

161
詩、ポエム、詞のタグが付いた投稿を一つにまとめたものです。
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2020年8月の記事一覧

呼吸するための呼吸

二つ目の交差点を
左に曲がると
行き止まり

真夜中
点滅の信号
左右見ずに渡る

誰かの思惑通り
そんなこともない
全て予定通り
そんなはずもない

不規則に揺れてる
と思ったら消えそうで
消えそうかと思ったら
まだいる

呼吸している間だけ
存在している

存在するためだけに
呼吸している

蝶番

蝶番

夜の電車の中から
窓の外を見ると
目の前の夜景と
ガラス窓に反射した
自分と背後の夜景とが
重なり合って
現実には存在しない
景色が見える

自分を蝶番にして
二つの別の世界が折りたたまれて
一つの世界が生まれている

蝶番を乗せた電車は
ミシンのように
折りたたんだ二つの世界を
縫い合わせながら進む

この電車を降りる時
縫い合わせていた糸は
一瞬でほつれ
二つの世界は何事も無かったように
元に

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平行線

平行線

あなたが一言

狂え

と言えば

私はいつだってそうするのに

あなたは決してそれを言わない

あなたが一言

跳べ

と言えば

私はいつだって体の全てを使ってそうするのに

あなたは決してそれを言わない

私が

悲しみ

苦しみ

憂い

涙の一つも出ないような

虚しさの淵に立っていても

腹を空かせ

喉を乾かし

睡魔をもたらし

心臓を動かす

あなたは私に

何を求めているの?

もっとみる
暗いうなり

暗いうなり

その威嚇は声にならない
空気を震わせ伝わっていかない
波動ではなく拡散
継承ではなく分裂
源泉は自己否定であり
無知性は加速装置になる
勝負手のはずのパラダイムシフトは
おそらく成就しないだろう

幼稚な優生思想と不寛容の塊を
ほとんどすべての人は受け入れない
階級や身分が誰かの心を癒すことはないし
植え付けられたルサンチマンが
解消することはない

言葉遊びはどこまで行っても遊びでしかなく
正確

もっとみる
夢から醒めて

夢から醒めて

夢から醒めて

何をしよう

最初に戻って

どこへ行こう

何十回も見た

何百回も聞いた

同じ風景

同じ音

同じ未来

同じ過去

待ち人

待ち人

何もないように見えて
溢れかえっていて
何でもあるように見せて
中身は空っぽのまま

くだらないようでも
意味がちゃんとあって
意味があっても
くだらないことには変わりなく

通り雨が降った後に
虹がかかって
願い事の全てが
前触れもなく
叶ったなら

くらし

夕陽みたいに
紅く紅く染まって
焼け落ちたら
それはそれで幸福

平熱以下の心持ちでは
この世界を歩き回ることは
難しい

暮らしの中
繰り返し
何かを得たり
失ったり
くだらなくても
何もなくても
ただ闇雲に
怠けたいだけでも
ただ闇雲に
眠りたいだけでも
だんだんと
着実に
擦り減っていく

言葉の裏
探っても
真意なんて
もう見えないから

鼓膜がただ
必要以上に
震えているだけだと
思うよ

もっとみる
ヌカルミ

ヌカルミ

足取りは重く
呼吸は浅い
休みたい
ヌカルミの中

話は聞こえてる
視界も悪くない
動けない
ヌカルミの中

記憶の断片
取るに足らない
すがれない
ヌカルミの中

もういい
もういい
もういい
もういい

概念としての

概念としての喜び
      怒り
      哀しみ
      楽しみ
      絶望
      希望
      不安
      安心
      心
      体
名前をつけて拘束されて
意味を与えられて窒息しそう

もっと
言葉から
遠く離れて
鳴る音のように
ゆらゆらと漂って
価値と積み重ねの世界から
何にも悟られることなく
一切の痕跡を
残さず

逃げ切れ

こうふくのじかん

こうふくのじかん

誰かここへきて
素直に歌って
誰かここへきて
笑顔を見せてよ
誰かここへきて
悲しいフリして
誰かここへきて
涙を見せてよ

見納め
すべて
こうふくのじかん
終わっても
また始まる

どこにも
入れない
どこにも
隠せない
どこにも
逃げれない
ここにも
もうすぐ

おはよう
おやすみ
さよなら
こうふくのじかん

狂的な天体

狂的な天体

光る間接照明
光源ははるか後方

世界を照らす光と
私は無関係
な訳もなく

ああ 薄暮の時に消えそう

暗く淀む風景
点滅は目視不可能

視界の悪い前方
見えない
だけど 行かなきゃ

ああ 暗夜の霧に溶けそう

駅

ふらっと出かけて
そのまんま
電車の架線の影が
魔物に見えた

引かれたレールの上
ひかれて

5秒数えて
目を開けて
架線の影はなくなって
扉がひらく

淀んだ空気
さらに
淀んで

だらっと座って
終点
来た道戻っただけ

にかっと笑って
それっきり
そこには
もういない

ないひと

ないひと

夕暮れ待たずに
夜が来たら
何もせずに
じっと身を固める

それでも何かが
心をえぐるなら
呼吸を整えて
鼓動を止めないで

いやしくも
さもしくも
まぶしくも
ないひと

憂鬱な感情で
埋め尽くされたら
出来る限りの
作り笑顔を

それでも何かが
心に混ざるなら
言葉を重ねて
壁を作って

かなしくも
さびしくも
たのしくも
ないひと

宙ぶらり

宙ぶらり

すれ違うのに
時間なんていらない

触れていたいと思うのに
理由なんて何もない

いつまでたっても
このままなんて
言われるまでもない

行き場のない想いは
一体どこで成就されればいいのか
見当もつかない

重ねた時間と
それ相応の
うしろめたさだけがある

それは幻想
まちがいなく妄想