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”ソムタムエンジェル”リッテワダが一撃KOでトーナメント初戦発進、ロドリゲスがタナンチャイ下す~RWSスーパーウェルター級トーナメント①

6月より5階級で行われているRWS(ラジャダムヌン・ワールドシリーズ)トーナメントについて、注目のスーパーウェルター級の初戦が7月27日にラジャダムヌンスタジアムで行われた。

RWSトーナメントは、2022年より毎年行われているのもので、今年は5階級が対象となる。チャンピオンやランカーなどそれぞれの階級で8人が参戦して、半年を掛けて優勝者を決める。


RWSトーナメントについて

今年は男子のフェザー級、スーパーライト級、ウェルター級、スーパーウェルター級と、女子のバンタム級で実施となる。この5階級の中でも、スーパーウェルター級は昨年のウェルター級覇者のリッテワダ・ペットインディーアカデミーが参戦して、激戦区となっている。

昨年のスーパーウェルター級の優勝者、タナンチャイ・シットソーンピーノン、一昨年の優勝者で、現ラジャダムヌンスタジアム認定同級王者のダニエル・ロドリゲス(ドミニカ、スイス)とRWS優勝経験者3人が参戦している他、昨年ラジャのミドル級王座決定戦にも出場したペッチマイ・ソーコ―レークワッタナ、安定した強さを誇るイラン人、レザ・ヴェノムムエタイも高いパフォーマンスを期待できそうだ。その他はパベル・リシャノビッチ(ベラルーシ)、ルスラン・ナガエフ(アゼルバイジャン)、ガブリエル・ペレイラ(ブラジル)の外国勢で8人となる。

スーパーウェルター級トーナメント出場の8人(会場パンフより)
トーナメントの今後のスケジュール、第1ラウンドは7月27日に実施、決勝は12月14日

この辺りの階級になると、タイ人の体格にすると大柄で、外国選手も増えてくる。ダニエル・ロドリゲスやレザなどは、長くタイを主戦場に戦っている選手で、タイ人のムエタイファンからしても馴染みが深い。

トーナメントのタイ勢について、昨年、タナンチャイとトーナメント優勝を決勝で争ったヨーウィチャ・ヨーウィチャジムは、ウェルター級に転級した。同じく昨年トーナメントに出場したペットモラゴット・ペットインディーアカデミーは、ミドル級に転級し、同僚のリッテワダにスーパーウェルター級制覇を託した。

8人は、4人ごと2つのグループに分かれ、グループ内で総当たり戦(3回戦)を行い、上位2名づつが準決勝に進むことができる。準決勝、決勝は1回勝負だが、グループ戦はポイントで争う。1勝が3ポイント、ドローが1ポイント、KOポイントも設けて、1ラウンドKOは3ポイント、2ラウンドKOは2ポイント、3ラウンドKOは1ポイント加算となる。

この日のRWSでは、スーパーウェルター級初戦として、Aグループのレザ対パヴェル、ダニエル・ロドリゲス対タナンチャイ、Bグループのリッテワダ対ルスラン、ペッチマイ対ガブリエル戦の4試合が行われた。

リッテワダ対ルスラン

この日トーナメント実施前に、3試合が終わり、会場(ラジャ)が温まったところで、リッテワダとルスランが入場する。リッテワダは昨年トーナメントではKOを量産し、トーナメントのMVPも獲得した、スリン県出身の27歳。180センチの長身をほこるサウスポーで、元ルンピニースタジアム認定スーパーライト級王者でもある。戦績はこれまで、86勝16敗5分としている。

昨年RWS優勝後、休養を取っており、7カ月ぶりのリング復帰となる為、試合勘が戻るか、いきなり新しい階級で攻撃力は落ちないか、など懸念材料もある。

180センチのリッテワダと、187センチのルスラン

一方のルスランはアゼルバイジャンのキックボクシング王者と紹介されていた。タイでは、今年4月にはFAIRTEX FIGHTでクンスク・キャティジャルンチャイを2ラウンドで左フックでKOしている。身長は187センチとリッテワダより長身で、これまで16勝3敗の戦績。

試合が開始されると、リッテワダは高くガードを上げて前にルスランの出方をよく見る。ルスランはオーソドックススタイルから、長い脚で右ローキック、右前蹴りなど積極的に攻めてくる。左前蹴り、左ミドルキックでルスランをけん制するリッテワダ、徐々に左ミドルの数を増やしていく。

組み合った離れた後に右ハイキック、右ミドルを積極的に出すルスラン、リッテワダもキックで反撃も空振り。ルスランが右ミドルをダブルで繰り出し、二発目が浅く当たると同時に前に出る。そして左ガードが下がったところを、リッテワダの渾身の右フックがルスランのアゴを打ち抜くと、そのまま真後ろに倒れ、一撃でのKOとなった。

KOパンチの右フックを放ったリッテワダ
リッテワダのKOシーン、右フック一撃で終了

リッテワダは、過去にムエタイのキャリアを中断してアマボクシングでタイ代表チームに入っていた時期があり、パンチの技術も定評がある。スーパーウェルターでも、今回のような凄まじいKOを連発していくことを期待している。ちなみに、リッテワダのニックネームは”ソムタムエンジェル”で、タイのパパイヤなどを使ったサラダ、ソムタムが大好物だそうだ。

ニックネームは"SOMTUM ANGEL" 

ペッチマイ対ガブリエル

続いて行われたペッチマイ対ガブリエルは、ラジャダムヌンランキングでミドル級4位のペッチマイがスーパーウェルター級6位のガブリエルに先手を取られ、厳しい立ち上がり。189センチと長身のガブリエルは距離を長い距離を活かして、178センチのペッチマイを攻め込ませない。

ミドル級、スーパーウェルター級ランカー対決は白熱

しかし、3ラウンド残り50秒でペッチマイの右フックがガブリエルの側頭部を捉えて、ダウンを奪う。ペッチマイは、立ち上がったガブリエルを攻めきれず、そのまま試合終了、判定はドローとなった。

ギリギリでダウンを奪って、ドローのペッチマイとガブリエル


レザ対パヴェル

3試合目のレザ対パヴェル、これは多くのファンはレザの勝利を予想していたのではないか。パヴェルはスーパーウェルター級4位にランクされるものの、レザと比べてまだ知名度がない。ちなみにレザは同級3位である。

試合前のレザ(左)とパヴェル(右)の様子、揃って入場を待つ

試合は初回は、お互い多彩なキックを繰り出す中で、確実にミドルキックなどを当てたレザが取った。しかし、パヴェルの右のローキック(カーフキック)がレザの左脚の裏に度々決まる。

2ラウンド開始と同時にパヴェルが右カーフキックを連発するとレザはふらつき、パヴェルがパンチも繰り出して、勢いでレザをなぎ倒しダウンを奪う。立ち上がったレザの左脚裏にカーフキックを狙い、打ち続けると、レザは立っていられず、自らうずくまってKO負け。レザはダメージでしばらく立てない様子。波乱を起こしたパヴェルの今後の戦いも気になるところである。

勝利の瞬間、雄たけびを上げるパヴェル

ダニエル・ロドリゲス対タナンチャイ

そして4試合目はダニエル・ロドリゲス対タナンチャイ、昨年のRWSの優勝者と一昨年のRWS優勝者との激突である。ダニエルは昨年のRWSトーナメントでヨーウィチャに負け、デビューからの連勝を41で止められた。現在の戦績は42勝1敗となっている。

一方のタナンチャイはこれまで62勝22敗1分、今年、日本でK-1のトーナメントに出場したが、持ち味を活かせず、不完全燃焼のまま、初戦で敗退している。はまった時にはアッパーの連打でKOしてしまう怖さがある。両者とも身長は185センチと長身だ。

ダニエルの入場、ラジャダムヌンスーパーウェルター級王者のベルトと、RWS2022年優勝者ベルトと共にリングイン
ゴングを待つタナンチャイ、
ダイナミックな攻撃が魅力だが、、

この試合が実質上のAグループの決勝と言える豪華カードだったが、蓋を開けてみるとダニエルのパンチ連打が、タナンチャイを追い詰めるシーンもあり、ダニエルのほうが調子が良さそうだ。そのまま3ラウンドまでダニエルのペースで試合は進み、ダニエルが判定勝ちを収めた。

スーパーウェルター級のトーナメント次戦は8月31日に行われるが、リッテワダ対ペッチマイ、タナンチャイ対パヴェル、ダニエル対レザ、ルスラン対ガブリエルの組み合わせとなる。


※ラジャダムヌンスタジアムでの現地取材。記事中の写真は著者撮影のもの。

※動画は1:44あたりからリッテワダ戦



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