
一流鮨屋の味を圧倒的コスパで:大阪中之島 鮨 豊
2024年で、いや人生の中で、一番ええ鮨を食べたかもしれない記録。大阪中之島にある「鮨 豊」さんに行ってきた。
グルメサイトによると「一流鮨屋の味を圧倒的コスパで」が売り文句のお店だった。庶民感覚で「コスパが良い店」と聞くと「五千円前後かなぁ…」と思うところ、こちらは15,000円~20,000円程度のコースとなっている。
より手の届かないレベルの鮨が、ギリギリ手が届くくらいの価格で提供されている意味で「コスパ」と呼ぶパターンもあることを知った。
地図を頼りに向かうと、1Fには新聞社があるし「マンションじゃん」と感じた。

階段で4階まであがると入り口があるも、「やっぱりマンションじゃん」という感想になる。

でも、中に入るとゴリゴリの高級鮨っぽさを醸し出している。この落差がUser Experienceってやつだ。知らんけど。

席に着くと、まな板ほどの板があり、そこに握っていただいた鮨が提供されるシステムだった。

大将と対峙して闘争の中で食べたいものを選ぶのではなく、コースの開始時刻(17時~と20時~の二部公演)が固定で、他の御一行も含めて7~8人で同時にサーブされるのが、コスパの秘密なんだろう。

お飲み物ということで、富山 満寿泉の純米酒をいただいた。料理の邪魔をせず、ほどよく個性もあってよい。

時間も経つので思い出しながらにはなるけれど、メンバーで共有したアルバムに付けてくれたコメントも拝借しつつ、経験を反芻する。
口の中に入れるとエビがほぐれて濃厚な甘味が広がる。シャリは赤酢が効いていて、お米の粒が感じられる。他のネタも、ちょうどよく仕上げられているので、食べる時に醤油を付ける必要がない。

いぶした藁の香りが効いていて、カツオのうまみがよりいっそう引き出されていた。

高級になるほど不愛想になる…と書いていた本もあるけれど、このお店はそういった闘争的な要素はなく、めっちゃフレンドリーに説明してくださる。

鮨の美味しさは、漁船で水揚げした後にどういう処理をするか?というところから始まっている。だから、漁師との関係づくりも含めて鮨なんだとか。

季節のネタやら、あまりなじみが無いけどツウ好みそうなネタとか、たたみかけてくる。


イクラの粒の方が多くてシャリが見えていないけれど、こう見えてイクラ丼。半熟卵くらいに加熱されていて、弾力ある粒がはじける。シャリの1粒1粒と交じりあってうまみ広がる。

基本はコースのところ「どれにしますか?」と選ばせてくれるのもあった。どれを焼くか決めたのが、後から来る。


ええ値段したけれど、鮨という概念を広げてくれた経験だった。
アオリイカの濃厚な甘さを堪能した。包丁で切れ目を入れることで、口当たりも変わる。ハケでしょうゆを浸透してゆく様子が、もう食べる時の想像を掻き立てる。

メヒカリは軽く炙ることで、甘味が強調されて絶妙な美味しさだった。


弾力がしっかりしていて、脂がのっていて、ブリの醍醐味が感じられた。

さわやかでほわっとした美味しさのあるサクラマス。少量の塩によって輪郭が際立っていた。

ブリの再来。少し熱を加えることで、また違った側面をみせてくれる。薬味が良さを引き出してくれている。

ちょっと変化球的なものも出てきたりする。


物凄く脂の乗ったやつがテーブルに登場する。高級鮨店に名を連ねる漁師さんで、知る人は知るらしい。


ずっと口の中に入れていたいくらいなのに、うまみを放ちながら溶けてしまう。マグロは雪の結晶。

ビジュアル的には、カニのかたまり。口の中でほぐれるタイミングで、濃厚な味が広がり、後から覆われしシャリの旨さが出てきてオペラ調に絡んでくる!←とメンバーがコメントを残していた。

続いて、熟成マグロのブロックが出てきた。切り落として使うようで、橋の方を触らせていただいた。参加型アトラクションかな。

こそぎ取ったトロを、味の付いたシャリとともに海苔で巻く。

クルっと巻いて、鶏卵になる前のキンカン(鶏卵になる前のん)を上に乗せて、食感を味わう。鮨・鶏・風呂・寝ろの高級版だ。

無限におかわりできそうな気がした、しじみ汁。ひれ酒みたく、ふたで閉じ込めた蒸気を、いただく直前に解き放つ。


穴子が出て、握りとしては〆だった。希望すれば、コースからの課金でネタも追加できるけれど、ボリューム的にもちょうど良かった。

余韻に浸りながら、珠洲の塩のジェラート。

一生続けばよいのに、という素敵な時間だった。ひとしきり一同で感動して、振り返りをして、謎にエンドロールまで作った。
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