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#0023 鰤

11月4日(土)にスーパーに買い物にでかけたところ、北海道産天然鰤(ブリ)が激安で売られていました。翌日の夕飯に照り焼きにして食べたのですが、脂が乗っていて、とても美味しかったです。

木下斉さん主催の「狂犬ツアー@釧路」(6月9日-10日)に参加した際、白糠町で「極寒鰤」というブランドで地場産品開発プロジェクトに取り組まれている株式会社イミュ―さんとのご縁をいただき、北海道の海の変化を知ることになりました。

私の故郷である釧路市は港町。
祖父が水産加工業を営んでいたこともあり、北海道の海の変化、とくに魚種の変化について、より注目するようになりました。

そこで今日は、最近気になっている海の変化に関する報道を通じて、漁業資源をどう活用すると良いかについての考察を書いていきたいと思います。(2969文字)


●美味しい鰤が北上している

スーパーの店員さんに鰤について尋ねていたところ、以下のことを教えてくれました。

  • 北海道産の質の高い鰤の入荷が増加傾向

  • 大手小売りも北海道にブリの目利きのできるバイヤーを配置できていない

  • 今年は「え?ここでこれが獲れるの?」という事例が全国で多発

  • 現地ではこれまで獲れなかった魚種が水揚げされた場合、目利きのできる人がいない、加工できる業者もないのて、お宝が地方に眠っている可能性が高い

最近、北海道の海の魚種の変化が報道されています。
スーパーの店員さんのお話からも、海の変化のリアルが伝わります。
国内で様々な研究が進められていますが、海水温の変化が影響しているのは間違いなさそうです。

ちなみに鰤の漁獲量は、北陸地方が多い印象ですが、意外にも北海道が上位にランクインしています。

  • 1位:長崎

  • 2位:島根

  • 3位:岩手

  • 4位:北海道

  • 5位:千葉

鮭の定置網に鰤がかかることが多いようで、2000年代から数百トン程度獲れるようになり、2010年代から1万トン程度に急増したとのこと。全体に占めるシェアも近年は8%台で推移しています。

他にもフグの主産地が北海道になっていたりと、海洋の変化をうかがい知ることが出来ます。

●鰤を食べる習慣がない北海道

水産加工業を営んでいた祖父は新潟県寺泊の出身で鰤を食べる習慣がありました。なので、私にとっては比較的よく食べる魚種ではありますが、北海道では刺身や寿司以外で調理して食べる習慣がありません。

フグも食べる習慣がありません。私自身、フグを初めて食べたのは社会人になってからでした。

●厄介者を資源としてみれるかどうか

10月3日にイミュ―さんの白糠工場を見学させていただいた際、ブリしゃぶ、ブリのりゅうきゅう、ブリのたんたか(赤しそ)をご馳走になりながら、白糠沖の鰤事情についてご教示をいただきました。

どれも脂がのっていて最高に美味しかったです。ゆかりご飯の「ゆかり」とポン酢の組み合わせが忘れられません。
本当に美味しいので是非召し上がってください。

地元ではなかなか鰤の活路を見出すことができずにいたところを、地域外の既存の鰤マーケットにアクセスするだけでなく、適正価格で販売できるように、ブランド化して行ったところは本当に素晴らしい取り組みだと思います。

恐らく地元では鰤を厄介者として見る人が大勢を占めていたと思います。
その厄介者を資産として見れるかどうか、地元では何も価値がないものとしか見られていないものを価値のある資産としてみれるかどうかが、変化にしなやかに対応して再び地方をライジングさせるカギなのです。

スケールを日本に広げてみても、同様のことがいえます。観光立国を目指す日本として、国内のことしか知らない人だけで考えるのではなく、外を知っている人が入ることで、今まで資産として見られなかったものが、マネタイズされるといったことが十分あると思います。日本は南北に長い国土で四季や気候が多様です。文化も多様です。同じ国でここまで多様な文化を持つ国はあまりないと思います。こうした魅力を最大限発揮していくには、外のサービスを体験したり、外から見える日本の魅力がわからないといけないのかもしれません。

●変化をチャンスに!

小学校低学年のときに「くしろ」という社会科教科書の副読本があり、大正時代にマグロが大量に獲れたという説明の中に釧路港に大量に水揚げされたマグロが映っている白黒写真を覚えています。

社会科副読本「くしろ」

北海道新聞の記事によると、数十年周期で起こる魚種交代が起こっていると言います。海面近くを大群をなして回遊する魚を対象にしたものですが、食物連鎖を考えると、それをエサにする魚も一緒に移動するのではないでしょうか。

9月にNHKで放送されていたドキュメンタリーでは、さんまの漁獲量減少を調査すると、サンマのエサとなる動物プランクトンとともに遠洋に移動していることが分かりました。さらにイワシとのエサの獲得競争に負けてしまっているとのこと。そこに人間の乱獲が水産資源の減少に拍車をかけているわけですから、サンマの漁獲量が減るのは至極当然だなという話です。

沖合からサンマが減るのも鰤が増えるのも自然の変化です。
マグロ→スケソウダラ→イワシという風に、港町釧路も魚種や漁獲方法によって変化をしながら今日に至っています
日本の漁業も、そして港町釧路も大きな変化の潮目に来ているのではないでしょうか。

サンマが不漁で昔のように大衆魚として食べることは当面無理です。
むしろ、多数の乗組員を危険に晒して、高い燃料を燃やして遠洋に出ていかないと獲れなくなっているのですから、500円を払ってありがとうと思って食べなければなりません。サンマは高級魚です。

こうした海の変化は、昔の釧路の人たちも乗り越えてきたはずです。
これは政府単位でも動かないといけない話と思いますが、水産大国としての地位を再興することは、観光立国を目指す方向性とも一致すると思います。
変化をチャンスに変えていくために、当事者のマインドも然りですが、凝り固まった制度をほぐしていく取り組みも必要なのではないかと考えています。

  • 漁業者が複数の魚種を対象に操業できるようにする(鮭だけでなく鰤も獲る)

  • 加工業者は広域で連携して魚種の受け入れ態勢を整備する(地場だけでは完結できないので広域で取引できる体制を構築する)

  • 小ロットでも適正価格で販売できるような商品開発とブランド化

  • 水産資源を管理して大漁(大量)消費の常識を卒業する

まとめ

無責任に思ったことを書きましたが、せっかく北海道で美味しい鰤やフグなどが獲れるのに、それを安値で買われてしまう現状は素直に悔しい限りです。

今回は鰤を取り上げましたが、フグなどの他の魚種もそうですし、ブドウや米などの農産品の質も気候の変化で高品質のものが獲れるようになっているそうです。

釧路にフォーカスすれば、釧路湿原や阿寒湖、摩周湖、そして世界三大夕日など、唯一無二の観光資源が豊富にあります。その多くが、まだまだマーケティングやマネタイズされていないように思います。

もともと釧路に暮らしていて、今は釧路の外にいる人間だからこそ気付けるものがきっとあるはずだと、イミューさんの取り組みや工場見学を通じて感じたところなので、そうした視点でこれからも釧路の推し活をしていき、ゆくゆくは釧路に携わる仕事が出来たらと思っています。


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