#0068 みなと緑地PPP: 港湾緑地活用の新時代へ
一昨日(12/26)の午後と昨日(12/27)の午前にかけて、国土交通省港湾局主催の意見交換会・勉強会に参加してきました。
テーマは港湾法改正により新たに誕生した「みなと緑地PPP」を中心に港湾緑地の利活用手法を研究し、意見交換を行うというものだったので、仕事は勿論ですが、釧路で活かせることはないかを念頭に参加しました。
今日は参加しての簡単な振り返りをしたいと思います。(4115文字)
○ 港湾緑地の現状と問題点、官民連携の必要性
港湾緑地は、港湾法の港湾環境整備施設(港湾の環境を積極的に整備し、向上させることを目的とし、港湾で働く人他一般人に対し、憩いの場、スポーツの場を提供する緑地、海浜、植栽、広場、スポーツの場を提供する緑地、休憩所等)であり、釧路港においては釧路市が港湾管理者として管理しています。
住民が散歩をしたり、労働者が休憩をしたりする港湾エリアにおけるオアシスとも言える場所です。
しかし、老朽化や財政難により、これらの緑地の魅力が低下し、維持管理も行き届かず雑草が繁茂するなど、エリアの価値低下を招いています。
ここで重要になるのが官民連携です。
民間の資金と知恵を結集させることで、緑地の再生とエリアの賑わいの創出が可能となります。
例えば、Park-PFIで再整備をした南池袋公園は、嘗ては浮浪者が多くて治安も悪く、子供が遊べる空間ではなかったそうですが、園内を綺麗な芝生で解放感を作り出し、カフェ等の民間収益施設を設置することでファミリー層が安心して利用できる空間に生まれまわりました。カフェは公園管理者の豊島区に使用料を支払い、豊島区は使用料を原資に公園の維持管理や美化に充当するカタチで稼ぐ公共施設を実現しています。民間事業者として公園内での事業リスクを取る勇気は必要ですが、公園で生まれる収益が公園のために使われて循環している点や、周辺エリアの価値向上にも寄与している点においてPark-PFIの成功事例ではないかと考えています。
南池袋公園の事例は、Park-PFIという新たなアプローチがいかに有効かを示しており、都市の緑化・活性化、周辺エリアの価値向上に不可欠な戦略となり得るのではないでしょうか。
都市公園法の改正により誕生したPark-PFIは、民間事業者に公園内での収益化を促し、その収益の一部を公園の美化と維持に還元することを可能にしました。
上野公園や日比谷公園に昔から松本楼などの飲食店や物販があるのは、嘗ては公園で自由に商売が可能だった名残りで、商売をする代わりに地代を公園を管理する自治体に納め、それを原資に公園の維持管理を行っていました。
徐々に公園に対する規制が強化され、公園は今では何でもかんでも禁止だらけになっています。最近はよく高齢者が子供の声がうるさいと自治体にクレームを入れる事案を聞きますが、どんどん公園の居心地が悪くなり、本来のあるべき姿から遠のきつつある気がします。
そこで公園の在り方を見直そうと登場したのが、Park-PFIです。これは都市公園法を改正して公園内に設置できる建物の規制を緩和したり、管理者の自治体がお金を徴収して維持管理に当てられるようにした仕組みです。名古屋の久屋大通や南池袋公園のPark-PFIの成功は、この新しい潮流の象徴だと思います。
○ みなと緑地PPPとは
このPark-PFIと同様に、港湾法改正により、港湾緑地でも「みなと緑地PPP」制度が導入され、緑地が持つ新たな可能性を開花させつつあります。これらの制度は、港湾部の緑地が持つ可能性を示し、緑地の美化・治安の改善など、私たちの暮らしを豊かにしつつ、自治体の経営にもプラス寄与するものと思います。
みなと緑地PPP制度は、港湾緑地の未来を刷新するための規制緩和です。民間事業者が自治体が管理する港湾緑地を活用し、収益施設を通じて自治体に還元するアプローチは、港湾緑地の持続可能な美化と維持管理を実現するとともに、ただの草地ではなく、イベントの開催、バーベキューやレストラン・カフェの設置も可能にすることにより、人が集まる稼ぐ公共インフラになる可能性があります。
この官民連携の手法により、財政負担は軽減され、同時に質の高い公共空間が誕生します。港湾緑地が再び人々の心を捉え、地域コミュニティの絆を深める場所となる可能性があります。
具体的な制度活用のメリットは次の通りです。
ネックとしては、制度利用にあたっての行政手続きが大変だという点です。
港湾法で規定されている手続きプロセスのイメージは次の通りです。
○ 新たな挑戦
港湾の官民連携事業には、寺田倉庫が主導した天王洲アイルの成功事例があります。バブル期に最も予約が取れなかったといわれる第一ホテル東京が閉館するなど、東京も東京なりに盛者必衰かあります。
バブル以降、もともとの地権者が離れていき、大手ファンドが地権者になると、エリアのまちづくりを意識する地権者がいなくなってしまい、そこで立ち上がったのが寺田倉庫です。
同社は自己資金あるいは金融機関からの借入で水辺エリアを独自に開発し、20年近い歳月をかけて天王洲を生まれ変わらせています。
この事例をまるまるコピペすれば良いというわけではなく、それぞれの地域に適した戦略が必要です。
港湾施設の実態を総合的に把握していることや、土地勘があるという点でも、地元の倉庫会社や港湾に携わる事業者(釧路港では三ツ輪さんなど?)が民間側でイニシアティブを発揮していくことが求めらる気がします。
二宮尊徳の教えである「積小為大」の教訓が大事で、できることから小さなことから積み上げていく必要があるのではないかとも思います。
公共側も単に民間に任せるのではなく、地域のニーズを理解し、市場と向き合いながら、共同で価値あるプロジェクトを生み出すことが求められます。「賑わい創出」という魔法の言葉で民間に丸投げする例はPFIで「あるある」ですが、安全面など、より民間がリスクを負うような、みなと緑地PPPなどではそのようなことはあってはならないと思うのです。
○ 港湾緑地活用の将来性
成功への道は簡単ではありませんが、適切な計画と協力により、新たな魅力を創出し、持続可能な未来を築くことができます。みなと緑地PPPなどの官民連携の制度は、これらの緑地をただの休息場所から、人々が集い、交流し、楽しむ場所へと変貌させる可能性を秘めています。このような空間は、都市の持続可能性、利便性、そして魅力を大きく向上させることでしょう。
未来に向けて、港湾緑地の活用はさらに進化する可能性があります。技術の進歩、環境意識の高まり、コミュニティのニーズの変化など、様々な要因がこの進化を促すでしょう。最終的には、これらの取り組みが地域の経済を刺激し、より良い生活空間を創造し、地域コミュニティの結束を深めることに寄与することが期待されます。
みなと緑地PPPは、港湾緑地を再生し、都市の魅力を高めるための官民連携の手法です。都市公園法の改正によって生まれたPark-PFIに続き、港湾法の改正により生まれたみなと緑地PPPの導入が、民間の資金と創造性を解き放ち、公共空間が新たな価値を提供する場となることが期待されます。
地方の取り組みは、地域に適した戦略と密接な協力により、地域に根差した成功を築いています。これらの取り組みが、持続可能で活気ある都市生活への道を開き、地域コミュニティを一層結束させることでしょう。