キミのまち

キミの嫌いなあの街には
今頃強い潮風が吹いているだろう

板塀続く舟宿や
ペンキの剥げた釣り舟は
跡形もなく

縁の薄い土産物屋と
オレンジ系のタイルの敷かれた遊歩道

様変わりした街
馴染みの顔はもういないのに
馴染みの顔がもういないから

キミの拒絶の意味がわからない

嫌いなはずの街の名を
時折口の端に上らせて

忘れたいもの
置いてきたもの
取り戻せると思うから?

楽しかったことはすべて忘れて
辛かったことをつらつら語り

捨てたのではなく
捨てられたと思うから?

キミが嫌いなあの街は
最近雪も降るらしい

帰ろうか?とは
もう聞かない

板塀の続く舟宿もなく
ペンキの剥げた釣り舟もなく
様変わりしたあの街は
もうキミの町じゃない

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