#429 "そもそも"って大事だし、面白い!年末年始に読んだ本
おはようございます。
仕事が好きだし、楽しいと言い合える女性が増えることが喜び、小田木朝子です。
このチャンネルは、育休を戦略的に過ごしたい人のためのオンラインスクール育休スクラより、仕事、キャリア、両立にちょっと役立つヒントを配信します。
今日もみっちゃんが考えてくれたタイトルコールでスタートします。
みっちゃん、ありがとうございます。
今日の放送は、年末年始に読んで面白かった本の勝手にレビューをさせてもらおうかなと思います。
つれづれなレビューですので、「そういう本を読んだのね」ぐらいな感じでライトに聴いていただければと思います。
ジョブ型雇用社会とは何か?
何の本を読んだか?ですけれども、岩波新書で『ジョブ型雇用社会とは何か
正社員体制の矛盾と転機』タイトルからして固いのですけれども、こんな本がありました。
著者は、 濱口桂一郎さんという方です。
私もたぶんこれを本屋で見かけたら、あまり手を伸ばさないタイプのカッチカチの本です。
帯に惹かれちゃったんですよね。
帯に何て書いてあったかというと、「ジョブ型雇用の間違いを一刀両断」。
これを読んでドキッ。
「ジョブ型」この言葉は、去年から新聞に載らない日はないぐらいいろんな所で発信されていたので、なんか知った気になっている、理解した気になっているけれども、「もしかして私も間違っているんじゃないか?」こんな感じでドキッとしたのと、新聞の書評を見て、面白そうな勧められ方をしていたので、ちょっと手に取ってみたのがこちらの本になります。
読んでみたらめっちゃ面白かったんですよ。
「え、まじそうだったの?そうだったのか、ぐう、違えてたな」そんな発見だとか、日本の雇用システム全体についていろんな解説がされているのですけれども、自分の中では「当たり前だ」、「こういうもんじゃない?」と思っていたものが、説明されてすごく整理されていく、つながりが見えていく感覚が、めっちゃ面白いなと思いながら読むことができました。
今日は、そんな本を勝手にデビューさせていただくという放送にしようかなと思ったのですけれども、 著者の濱口さんという方は、今、割と普通に使われている「ジョブ型」、「メンバーシップ型」という言葉を作った方だったんですね。
2021年にこの本が出ているのですけれども、本を書いて出すに至った経緯というのが、「ジョブ型」というこの言葉が、今、間違った捉え方をされているケースがすごく増えていて、そこに憂慮をしていた。
なので、きちんと説明する必要があると思って本を書きましたというスタンスになっております。
「ジョブ型」という言葉は、去年ぐらいから一気に普及して、新しい言葉なのかな?と思っておりましたけれども、なんとこの言葉が発信されたのは、2009年だったそうです。
『新しい労働社会: 雇用システムの再構築へ』こういった本を、同じく濱口さんが書いたことで定義されたのが、こちらの言葉。
最近なぜ話題なのか?というところでいくと、2020年の経団連の報告書の中で、「ジョブ型への転換」みたいなところが書かれたことによって、メディアも含め、一気に「ジョブ型」という機運が世の中に広がっていったという流れだそうです。
欧米と日本と雇用システムの違い
「ジョブ型」、「メンバーシップ型」というのは、雇用システムの欧米と日本との違いを表現するために、濱口さんがつけた言葉で、欧米型の雇用システムを「ジョブ型」と分類し、日本型の雇用システムを「メンバーシップ型」と分類して、この違いを理解するための学術的概念みたいな感じで名付けたのが、こちらの「ジョブ型」、「メンバーシップ型」だそうです。
これらを「そもそも何か?基本に立ちかえってきちんと理解しようね」というのが本のスタンスで、さらに大事なのは、「どっちが良くて、どっちがだめだということを価値判断する本じゃないからね。そもそも何かをきちんと知るということと、価値を判断するということは別物なので、この本のスタンスは、それぞれの違いをきちんと理解するための本だよ。」そんな親切に満ち溢れた本でした。
私も改めて、「そういうことであるな」と理解させていただいたのが、まずこの「ジョブ型」なのですけれども、ジョブ型の雇用システムというのは、シンプルに言うと、ジョブに人をつける。
ジョブ基準の雇用システムのことを「ジョブ型」と呼んでいて、主に使われているのは欧米だよ。そういう話です。
「メンバーシップ型」というのは何かというと、人基準の雇用システム。
ジョブに基準を置くのか、人に基準を置くのか、どっちに基準を置くのかといういうことで、「ジョブ型」、「メンバーシップ型」という雇用システムの大きな特徴を表現しているのが、こちらの言葉になります。
もう知っている方は、「そりゃそうですよね」というところだと思いますけれども、さらりとお聴きください。
「ジョブ型」、「メンバーシップ型」の特徴
「ジョブ型」の特徴というのは、「職務記述書」いわゆるジョブディスクリプションといわれる、遂行してほしい職務について書いたもの。
これがいわゆるジョブなのですけれども、このジョブに対して、そのジョブができる人を置いていく。
なので、ジョブ基準と言われる雇用システムなんですよね。
そのジョブ自体に価格がついているのも、ジョブ基準のジョブ型の特徴になります。
職務記述書に書いてあるのは、あくまで遂行してほしい職務が書いてあるのであって、能力が書いてあるのではないというところも特徴になります。
それに対して、「メンバーシップ型」はというと、どの仕事に就くかは会社が決める。
なので、ジョブに価格をつけるのではなくて、人に価格を付けることによって、その人がどの仕事をやっても同じ給料を引き受けるというシステムになっているということです。
「ジョブ型」になると、成果で評価される?
この本の中で「よくある間違いですよ」と指摘をされていたのが、「ジョブ型」になると、成果で評価される。
労働時間じゃなくて、成果で評価されちゃうみたいな論調がありますけれども、これは違いますよ。
「ジョブ型」の評価対象は、そのジョブが遂行できているか、できていないかであって、能力評価に移行することと、ジョブ型に移行することは、イコールではありませんよという説明がされています。
ジョブ型になると解雇しやすくなる?
もう一つよくある間違いとして指摘されていたのが、ジョブ型になると解雇しやすくなる。
こういう論調もよくあるのですけれども、これも違いますよ。
ジョブ型であるかどうかではなくて、ヨーロッパおよび日本に関しては、雇用規制がある。
一方で、雇用規制がないのは、世界的に見ても主にアメリカだけだよ。
解雇自由なのはアメリカです。
なので、ジョブ型かメンバーシップ型かの違いではありませんというのが、大前提になるそうです。
ただし、解雇規制があるというのは、解雇してはだめなわけではなくて、正当な理由なく解雇してはだめというところになりまして、じゃあ、そこにジョブ型かメンバーシップ型かの違いがどこにあるかというと、ジョブ型であるヨーロッパに関しては、雇用規制はあるのですけれども、該当するジョブがなくなるというのは、正当な解雇理由になるので、ジョブがなくなることによっての解雇ができるところが、ヨーロッパの解雇規制。
一方で、日本の場合は、ジョブがなくなるというのは正当な解雇理由にはならないんですよね。
配置転換だとか、違う能力を身に着けて、違う仕事に就けるようにする。
そういった手立てを尽くして、それでもなおという時に、正当な解雇理由が成立するのであって、単純に一つのジョブがなくなるだけでは、正当な解雇理由にはなりませんよというのが、日本の雇用規制になります。
「そもそも何か?」いろんな観点から考えていきたい
私の今の説明は、たぶん100ページ中のほんの1ページを解説しただけなのですけれども、それでもきちんと理解すると、なるほどなと思えるじゃないですか。これがすごく面白いなって思いますよね。
本をちゃんと読んでいくと、歴史の中で育まれてきた雇用システムだとか、その中で培われている社会の価値観と、雇用制度、雇用システムというのは、ちゃんと結びついているんだなというのが理解できますので、単純に制度を変えれば変わっていくかというと、そういうものではないというところも、一方でよく理解できるなって思います。
そうなってくると、目の前にある概念だとか言葉が、「そもそも何か?」というのをちゃんと押さえていくというのは、改めて大事だなって思いましたし、今年私は、物事を批判的に考えるという抱負を掲げましたので、早速本のおかげで、言葉の鵜呑みではなくて、正しく理解するということに近づけたのはうれしいなと思いました。
そして、一方で反省したのが、新しいものや新しい概念がすべて解決してくれるような気になってはだめだなと思いましたし、ニュースだとかいろんな情報に触れるにしても、いろんな観点から考えるということが必要なのだなと思いました。
この本で、そもそも「ジョブ型」、「メンバーシップ型」とは何か?というところが理解できたのですけれども、そうなってくると、今、様々な企業の取り組みとして、ジョブ型への転換移行みたいなニュースが流れているというのは、単純な欧米型のジョブ型になるというよりも、メンバーシップ型の上にジョブ型を組み合わせた、どんな会社もたぶん新しい日本版ジョブ型みたいなものにトライをしているんじゃないかなと思いまして、そういったこともちゃんと理解できるようになりたいなと思いました。
興味のある方は、ぜひ本を読んでみてください。
それでは、今日も一日良い日にしましょう。
小田木朝子プロフィール
「仕事が好きだし、楽しいと言い合える女性が増えることが喜び」小田木朝子(おだぎともこ)です。
このチャンネルは両立女性のためのオンラインスクール“育休スクラ”から出産後の変化を柔軟に乗り越え、仕事がもっと楽しくなる“知恵とヒント”を平日の毎朝配信しています。2回の育休を経て、現在人材育成・組織開発を行う株式会社NOKIOOの役員をしています。
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