【感想】『彗星を追うヴァンパイア』※ネタバレ有
『チ。』が天文学という学科にまつわる物なのだとしたら、『彗星を追うヴァンパイア』は学術という知を探求する行為全体を指すバージョンの『チ。』なんじゃないかと思った。
つまり『チ。』のアニメにはまっている私にめっちゃ刺さる。
作中のヴァンパイアが、血を必ず必要としている感じでも無いのが逆に一周回っていい。むしろ逆に「吸う」という能力が対象としている範囲が概念的に広がっているのが、オーバースペック感ありつつ、馴染んでいるというか。無茶苦茶さが、手に負えない人知外の人外感を醸し出していて……好き。
作中で主人公(人間)とヴァンパイア(イケメン)は友達になるんだけどさ、友達で完結するのが良ッ。正直一瞬BLに転ぶのかと不安になった(BL苦手故)けど、あくまで最後まで友人なの最高。人外と人間の友人関係好きなので。
そしてそして、人外の長い人生に、人間と過ごした時間がガッツリ刻まれていく系な訳ですよ。そんなん好きに決まってるじゃんね。最高だよ。ヒンメルもそう言っていた気がする。
読んでいると、寿命の長い⇔短いの関係が、寿命だけじゃなく、彗星と地球がお互いに観測可能な時間?とリンクしていく感じもエモくて好き。
それがまた学術的探究という長い時間の流れと、それを構成する人の探究に掛けられる時間の短さを掛かってくるのもまた罪深く……。
主人公の生き急いでいる感、人生燃やしてる感が尾を引く彗星とリンクするのもまたヒヤヒヤさせられる。彗星って太陽に向かうにつれどんどん小っちゃくなってるらしいじゃん?(うろ覚えの彗星に関する記憶)
最後の主人公が算出した彗星の次の到来の時期を、主人公は寿命的に難しいからって(他にも理由があるが)、ヴァンパイアが観測して証明を任される展開もさらに涙を誘う……。
表紙の幻想的なイラストも相まって、儚さがヤバい。
泣かざるを得ない。
ていうか表紙……。全てが詰まってるよ。裏表紙まで繋がってるのもヤバいし、裏表紙のおまっ、お前ーー!
ここまでの感想読むとファンタジーって感じだけれど、この諸々が実際の史実の隙間で展開されていくから、より出来事の儚さが増してて良き……。歴史に刻まれる隙も無く、消えていってしまた思い出を、しかし人外はしっかりと記憶しているっていうのがいいよなあ。
成したことの大きさの割に、記録が個人の範疇に収まってしまっている無情さというかさ。
これはしばらく経ってからまた読むと、またジーンと来ていいやつだ。と、そう思った。
また後で読み返したいと思う。