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SanQueHadsu 3/3

"Bottling the VINEYARD" 初年度に発行した「サンクスレター(2018年6月/結城酒店)」に寄稿いただいたコラム「"さんきゅうはづ"というぶどう(著/竹田 耕平)」を全3回に分けて紹介します。
※ リターンのワインが届きそれを呑みながらちょっとしたロマンに浸ってもらおうという意図で作成されたものです。原文のまま掲載します。

"さんきゅうはづ"というぶどう(著/竹田 耕平) 3/3

赤湯におけるマスカットベーリーA栽培の歴史は、昭和11年「名前はまだない」時代に移入され、善兵衛先生から苗木の委託養成を引き受けていた鷹次によって、"さんきゅうはづ"として普及していった経過を述べてきた。

紫金園に現存するさんきゅうはづ(マスカットベーリーA)の古木(2017年撮影)

私もひとりの地元消費者としては「紫金園に現存するあの古木こそ、そのときの樹だ」と信じたいところではあるが、残念ながらその確証は得られなかったという。

「(客観的な根拠がないので)やっぱり"推定"の表記はそのまま残しておくしかない」と結論づけたプロジェクト当事者たちの実直な姿勢には、一種の好感を覚えるが、解き明かせない謎にかえって惹きつけられてしまうのも事実である。

もしかすると"モノ好き"への第一歩なのかもしれない。


善兵衛先生との歩みについては、岩の原葡萄園様より貴重な資料提供をいただいていたが、その皆様が今年(※2018年)の3月9日に紫金園に来園されるというので私も同席した。

2018年3月9日 岩の原葡萄園の皆様が紫金園にお越しになったときの記録写真

古木に触れながら善兵衛先生と赤湯のぶどう栽培者たちが歩んできた歴史について情報交換した後、紫金園の園主が古木の枝を切って贈呈し、岩の原への里帰りが実現した。
生まれ故郷で接いでいただき、そこからぶどうが実り、ワインになるのだと思うとその日が待ち遠しい。

善兵衛先生の初来園から百余年ぶり、善兵衛先生の生誕150周年にあたる年のしかも3月9日の出来事である。その夜、午後8時6分を見計らって、マスカットベーリーAのワインをグラスに注ぐことにした。新しい歴史のはじまりに立ち会えたような気分に浸って味わうワインはまた格別であった。


「赤湯のぶどうの歴史について」とのお題で依頼をいただいたが、客観的事実と筆者の妄想、希望的観測までも混ざった拙文のままで、紙面が残りわずかとなってしまった。

これまでのぶどうの長い歴史を、これからの「ぶどうの夢の実現」につなげていきたい。今宵、赤湯のぶどうに思いを馳せながらワイン談義に花を咲かせる、そんな楽しいひとときの一助となれば幸いである。

ここ南陽市赤湯のぶどう栽培・ワイン醸造のさらなる発展を祈り、筆を置くことにする。(完)

著者/竹田 耕平(たけだ こうへい)
元山形県立村山産業高等学校長。山形県南陽市在住。

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