9月１７日　気をつけよう

「スイカと現金の併用は出来ますか？」と３０代の男性。
今日は早上がりで、割と機嫌が良かったので人に優しく接して、さらにご機嫌にやろうと、
「申し訳ございません。併用は出来ないんです。」と２０代の僕。
すると男性は、「使えねえなあ。」と聞こえるか聞こえないかくらいの声を、しっかり僕に聞かせるように言った。この瞬間、僕は耳鳴りがして言葉に詰まってしまった。男性はすでに１０８円を出しているのにも関わらず、僕はこの後彼をどうしたらいいのか分からなくなってしまい、１５秒程その場で立ち尽くしてしまったのである。

この１５秒間の間で僕が考えていたことは、この瞬間にバイトを辞めれるかどうかである。答えは不可能、２秒で出た。残りの１３秒は下唇を噛むようなことしか出来なかった。
そして僕はゴムのようになった喉を必死に振るわせて「ちょうどお預かりします。」と言った。
彼は、ニタニタと笑った。
１５秒間の葛藤の上で、僕が負けを認めたことをあざ笑ったのである。１５秒間生死を彷徨った自覚があるのだろうか。母親からまともな教育を受けず、僕に友人等の愛するべき人の存在がなく、今後の全てを諦めていた場合、僕は彼を殺していたかもしれないと思う。

見知らぬ人には、まともな態度を取っておいた方が無難であるということだ。これは自分にも言える。