【虎に翼 感想】第34話 寅子と優三の婚姻契約成立
花岡の決断を尊重したい。
轟とよねは、“なぜ寅子に何も言わずに、きちんと話もせずに婚約したのか、寅子を捨てたのか” と責め立てたが、どう伝えればよかったか。
手紙で伝えられても、それはそれで傷つく。
学生時代の仲間越しに伝えられても、それはそれで傷つく。
わざわざ寅子に伝えるためだけに上京してこられても、結局傷つく。
あの食事のときに気持ちを伝えて、結婚して佐賀へ連れていったとしても、寅子の夢を諦めさせたと、筆者を含めた視聴者は、結局、何か言うだろう。
だから、これでよかったんだ。自分で決断をしたことが大事だから。
「誠心誠意、奈津子を愛する」と言い切れたのだから。
花岡には奈津子が合っている。彼女はきっと、花岡が気持ちを伝えるときに、先回りして彼の気持ちを汲んでくれる人だ。彼の性に合っている。
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「責任を負う勇気がない、寅子と釣り合わない」「“猪爪も奈津子さんも侮辱する行為ではないか」との非難の言葉も、花岡は反論せず受け入れた。
「ありがとな、轟。でも、もう決めたんだ。こんな俺が言っても何も信じてもらえないが、ここからは誠心誠意、奈津子を愛して、何も間違わず、正しい道を進むと誓うよ。ごめんな。」
花岡が轟にも婚約のことを伝えていなかったのは意外だった。伝えたとしても、轟は軽はずみに他人にしゃべる人間ではない。
時が経てば人間関係も変化する。ある種、二人の決別のシーンでもあったように思えてならなかった。
このときの花岡の「正しい道」の誓いが後々、辛いことのフラグにならなければいいのだけれど…
「この手があったか」
寅子は追い込まれていた。彼女の頭の中は、“どうすれば依頼をしてもらえるか” に支配されていた。
10年ぶりにお見合い写真を撮る。8時5分の時点では猪爪家は皆、お見合いさえすれば結婚相手が見つかると思っていたことだろう。このとき、寅子27才。
花江いわく “25(才)を過ぎては、難しい” クリスマスケーキ理論の壁は高く、なかなか見合いにこぎ着けられない。よねの罵詈雑言を避けつつ、方々手を尽くして相手を探す。
やっと見つけた後妻探しの医師にも、“弁護士をするご婦人は、なんだか怖そう” と断られてしまった。せっかくクッキー作ったのに…はるさん、クッキーも甘めなのかな…
いつもどおり依頼を断られたある日の帰り道、近所のおばちゃんにも、「頼まれてた親戚の子は、もうお相手が決まっちゃった」と告げられ、力なく玄関に座りうなだれていると…そこには優三が待っていた。
「それ、僕じゃダメかな」
優三の決意を褒めたい。花岡に背中を押され…いや、背中を蹴り上げられる形で寅子が行動を起こしたことで、優三も動き出した。二人とも潮流に乗り始めている。
(「あすなろ白書」でのキムタクの“俺じゃダメか”の相手は石田ひかりさん。その姉の石田ゆり子さんが今回、寅子の母役だが、これはオマージュなのだろうか?)
「はて、優三さんも、社会的地位を欲しいのか」
とりあえず、今はこれに乗っかっておこう。
共に法曹を目指した二人らしい婚姻契約成立の瞬間だった。
5/14の記事でも書いたけど、寅子のこの感情の機微に疎いところが、先々、仕事で何かやらかすんじゃないかと、とっても心配です…依頼者は、意外と本音を言ってくれないから…
ひとまずお二人さん、おめでとう。
「虎に翼」5/16より
(昨日の記事はこちら)