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俺は怒ったぞー!!!!
…と云う訳で、およそ3年間の沈黙を破り私はとうとう旅行に出掛けてしまったのであります。
傳染病に對して遂に「顔を蹴られた地球」の如く怒りを爆發させた、時に西暦2022年7月21日の事。
行き先は本州北の果て青森縣は碇ヶ関…。
まずはそこへ行く手段でありますが、私にとっては旅行案内や時刻表を開いた瞬間から既に旅は始まっているのです。
イマドキはインターネットで手輕に何でも他人任せで出來る様になりましたが、私は自分の旅はあくまでも自分の手で組み立てるのが樂しい古いタイプの人間であります。
自分で時刻表の数字を追って驛で切符を賈って宿に直接聯絡をして部屋を手配する…。
インターネットを使えば安上がりにしかも容易に部屋を手配出來るとは言っても宿の人と直接交渉してこその利点もあるものです。
本の数字を行き交ってもう一人の自分がもうそこへ行っているのであります。
多少の金額と手間の差異はこうした樂しみには代えられません。
斯くして私はこの日より2泊3日の大旅行に出掛けたのであります。
私は月々のお給金から幾らかを自分の樂しみの為だけに貯蓄している謂わば「自分積立金」と云うものを設けている次第でございます。
昨今の傳染病のおかげでその貯蓄も、ほんのりまろやかな塩漬けになっており、更に御上からの100,000圓も加わった事で膨れ上がり…。
私の旅行の豫算は…、530,000(單位:日本圓)です……!
ですが勿論、フルパワーで出費する氣はありませんのでご心配無く…。
とりあえずその内の幾らかを今回使う事に致しました。
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やって參りました上野驛。
やはり北への旅は上野驛から始めるのが風流と云うものです。
〽ど~こか~で故郷の~香りを乗~せ~て~♪
…とカラオケの十八番、かの井沢八郎氏の歌も心の内に新幹線乗り場へ來ました。
本當なら地上13番線ホームより寝台特急に乗って…と云うのが夢でありますが、もうそこへ北へ向かうあの素晴らしい列車が來る事はありません。
私はこの仕事で乗る事が多くツマラナイ思い出ばかりの東北新幹線に乗らざるを得ないのでありますが、タダでは轉ばぬのが私のタチの惡いところ…。
どうせ座席も窮屈で車窓もつまらない新幹線。
いつもスーツ着て圖面や資料を讀んだ普通車なんて樂しい筈の旅行では乗らないのです。
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私にとっては旅とは移動も含めてこそのもの。
單に現地に行けば良いと云うのは旅に非ず。
移動が自分の樂しい思い出にならなければ本當の旅ではないと個人的に思い込んでいる者でございます。
斯くして、どうせつまらぬ新幹線。
せめてもの慰めに私はグランクラスと呼ばれている「一等車」に乗ってしまうのでありました。
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出入口のアテンダントさんから戴いたありがたいおしぼりと共にその券面も誇らしげな切符を早速に自分の座席に廣げてしまうのが私の庶民たる所作。
これでも人生で2度目のグランクラスです。
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早速に輕食の折詰を戴きます。幾ら注文しても全部タダです。
しかし、こう云う物は憚りを以って戴くのが眞の贅澤と云うものです。
旅の始まりはヱビスビールで乾杯であります。
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列車は大宮驛を出て遂に本氣を出し始めます。
景色は飛ぶ様に過ぎてしまい、木々の蒼さや家々の造形を樂しむ暇も無く通り過ぎてしまいます。
しかも窓の半分は東北新幹線特有の高い防音壁…。
このつまらない車窓にグランクラスのロゴの入ったグラスは綺麗に映るのであります。
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嗚呼、夜空に星屑の様な明かりが幻想的だったあのブルートレイン…。
抵抗制御の音も高らかに地と空の境を美しく魅せてくれたあの特急電車…。
そんな思い出は今は昔。
とりあえず世界屈指の高速鐵道を樂しみましょう。
時速300キロの世界を存分に樂しみつゝ、お酒は更に進みます。
…どうせタダなんですから。
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勿論、新幹線メニューだけで満足する様な事は致しません。
昔からの旅のお供はいつ如何なる列車に乗ろうとも忘れじの相棒なのです。
上野驛の賣店で賈った好物の押し寿司を日本酒と共に…。
いつも通勤電車で鮨詰めにされていた身の上としては、こうした優等列車で食する押し寿司と云うのはまた格別であります。
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車輛基地を観察する余裕も無く、新幹線は文字通り「ビュワーン♪ビュワーン♪」と走り去ってしまいます。
防音壁に遮られる様にして見える曇天に映える木々の美しさがせめてもの慰めです。
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いつの間にか雪駄も脱いで本格的くつろぎモードに入った私はウイスキー(オールドパー!)にスイーツのケーキを愉しみます。
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このオールドパーの空き瓶はアテンダントさんにお願いしてお持ち帰り致しました。
今では部屋の片隅のカフェカウンターに飾ってある素敵な旅の思い出です。
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ここ迄で麥酒2本、日本酒1本、ウイスキー1本を注文した身の上と致しましては頻繁にここを行き來するのでありますが、流石はグランクラス専用の車内トイレ。デッキも綺麗なものです。
何かと無機質的な新幹線に於いても木目調のアコモデーションや電球色の照明を取り入れたりと、なんとか温かみを出させようとする涙ぐましい工夫には頭が下がります。
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「私は今、一等車に乗っている」と云う氣概を奮い立たせてくれるインテリアです。
昔の特急では末尾に聯結されていた「マイテ」や「スイテ」と云った展望車に乗っている様なものだと云う事を忘れずに、あくまでも上品に振舞うのがエチケットです。
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…と云う訳で、憚り乍らも鐵路の旅は續きます。
よく見ると鼻緒の跡が日焼けで残ってしまっている何ともお見苦しい物が寫っておりますが、どうぞ平に御容赦の程…。
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切符も立派な旅の供。旅の彩りとして共に酒を呑もう!
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グランクラスに乗っていても車販が恋しい…。
そんな時はアテンダントさんにお願いすれば車販のメニューも取寄せてくれます。
これは別料金になりますが、今迄散々タダで呑み食いしていたのです。
この位は奉納しましょう。
お呑み物は今度は赤ワインを注文します。
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やっぱりコレが無いと始まりません。
東北の酒に大好物のホヤは附き物です。
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なんだかんだやっていると時の過ぎるのは早いものです。
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思えば遠くに來たもんだ…と口ずさんで狭くなった旅の世界を想うのであります。
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一戸、二戸、八戸と愈々青森に近附いてきました。
一息ついて喫茶タイムです。
尚、このケーキの入っていた紙箱も大切にお持ち帰り致しました。
(…ついでにメニュー表とスリッパもアテンダントさんにお断りの上、お持ち帰り致しました)
今では休日の午后のひと時にお菓子入れとして使われています。
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そして列車はとうとう新青森驛に到着しました。
お世話になった座席に別れを告げていざ、ほろ酔い氣分で北の驛に降り立つのであります。
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個人的に新幹線での旅はあまり好きではないのですが、新幹線自軆は好きだと云うとってもワガママな考え方をしております。
やはり世界に誇る新幹線。これからも活躍を期待しております。
かの鐵道唱歌に青森驛到着の歌詞にて
〽昔は陸路廿日間♪今は鐡道一昼夜♪
と云う一節がありますが、それも遠い昔になってしまった様です。
今は新幹線3時間半位ですから…。
日本人の力の偉大さを感じつゝ、私は名士にでもなったつもりで「一等車」の出口からプラットホームに降り立ちます。
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こう云う時期ですからわざとねぶた祭りの時期を外して來ました。
おかげで驛に展示されているねぶたもゆっくりと見物する事が出來ました。
何事も憚りを以て樂しむのが私の旅です。
さて、この後どうしようかしらん。
つゞく……