#11 本には全ての答えが書かれている
本日お話を伺うのは、小布施町に遊びに来たことがある人はもしかしたら泊まったこともあるかもしれない!?ゲストハウスkokoroの芋川さん。芋川さんの忘れられない一冊とは?
芋川:最近素敵と思った本を持ってきたのだけれど、忘れられない一冊っていうと別にもあるな。そっちから話してもいい?
志賀:是非是非!
芋川:藤原ていさんの『流れる星は生きている』っていう本。
これは彼女が戦時中暮らしていた満州から幼い3人の子どもたちを連れて、1年以上かけて日本に引き揚げた時の体験記なのだけど、私の中で革命的な気づきをくれた忘れられない一冊。「本を読めば全ての答えが書いてある」っていう気づきをね。
志賀:本にはすべて書かれている…
芋川:本が好きになったのは中学生の時だったの。当時、多分日々の仕事がうまくいってなかったんでしょうね。たまに父と母がいい争いをすることがあったの。そういう時、弟は年も離れているから私を頼ってきていたのだけれど、私自身もどうしていいかわからなくて、相談の仕方も相手もいないなか居心地が悪いと感じていた時期があってね。そんな時、私が行ったのは図書館だったの。
志賀:図書館が居場所になった時期があったんですね。
芋川:そうそう。とても居心地が良かった。読みたい本があったわけではなくて、ふらっと足を運んだだけだから、ぼーっと書棚を見てたの。そうしたら目に入ったのがこの本。
志賀:なぜ沢山ある本の中で目に留まったんですか?
芋川:多分だけど、星っていう字に惹かれたの。星がとても好きだったのよ。この本は、星の本というより経験談だったのだけど、内容がもう壮絶だったの。戦時中の満州から子ども3人も連れて引き揚げてきて、やっと引き揚げてもご飯も家もろくにない。それでもお母さんは子どもたちのために頑張る、そんな話。それで思ったの、「私は家もあるし、家族もいる、美味しいご飯もあるし、暖かい布団もある。とっても幸せじゃん」って。悩みが吹っ飛んで元気になった。それから本はとても良い友達になったのよね。
志賀:なんて素敵。本が対話の相手であり、メンターのような存在になっていったんですね。
芋川:そう。今でもそう感じることが沢山あって、最近良かったのは、原田マハさんの『生きるぼくら』。
いろんな課題がいっぺんに解決できそう、って思った本だった。最近引きこもりや子育てに悩んでいる方々は多いでしょう。平たく言うと、長年引きこもりの子が、母親が手紙を置いて家を出て行ったことから、人を訪ねて外に出て、農業をしながら生きる力を取り戻すような話なのだけど、私は手紙を置いて出て行った母親に感動しちゃって。すごく愛を感じたの。
志賀:読んでないからわからないですけど、そこに「愛」を感じたんですね。なんだか人によっては母親の手紙を置いて去るやり方には色んな意見が出てきそうな…。
芋川:そうよね。でも私はすごく目から鱗だった。「こんな去り方があるのか!」って、なんとなく普通、この子が頼れるのは自分だけだから自分が頑張らなきゃとか、もう勝手にしなさいとか、或いは逃げるように放置とかありそうじゃない?でもね、携帯と家のお金は払い続ける、っていう手紙と、年賀状だけが机に置いてあるの。恨み辛みや泣き言も一切なく淡々としてるの。そうやって子どもを手放すやり方もあるんだなって。その淡々としたところというか、自分のスペースもきちんと守りつつ、必要最低限は子どものこともケアする自律した感じに、すごく愛がある感じがしたのよ。
志賀:不思議。芋川さんにはそう感じられたんですね。私だったらその本のどのシーンが印象に残るんだろう。そういう、読み手によってグッとくるところが違うから読書って面白いんですよね。
芋川:本当にそうだと思う。読書会とか、あったらいいのに。是非やりたいね。
志賀:私も企画したいです!まずは、今日芋川さんにおすすめしてもらった本、読んでみます!素敵なお話、ありがとうございました!