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「問」は「答」によって補完されることを形式的に要求する

「問-答」の構造

1.「問-答」という関係において、「問」と「答」は形式的に対である。
1.1.すなわち、「問」として主題化されたものは、それが「答」によって補完されることを形式的に要求する。逆に、「答」として主題化されたものは、それが「問」によって補完されることを形式的に要求する。ただし、我々の関心の向け方として「答」から主題化することは稀であるから、前者(「問」→「答」の関心の方向)が通例である。
1.2.ここでいう「形式的」はその内容の如何を問わないことを指す。「問」の内容がどのようなものであれ、その「問」の内容は、「問-答」という関係における補完物として、「答」の内容を要求する。
1.3.この場合、「答」にとって、形式が内容に先行する。「問」の内容が与えられると当時に形式的に「答」が要求されるが、「答」の内容は同時には与えられない。
1.4.よって、「問-答」という関係を了解する者は、「問」の内容が与えられた時点を起点として、「答」の内容を補完するよう働きかけを受け続けることになる。

2.「答」の内容は、「問」の内容に対して「適切」であることが期待される。
2.1.「適切」であると支持するためには、適切であると鑑別するための観点とその観点における適切性の水準が必要である。これらを、「適切性の鑑別規準」と呼ぶこととする。
2.2.「答」の内容は適切性の鑑別規準によって規定される。このことは、適切とされる「答」の内容には、適切性の鑑別規準に応じて可能な範囲があることを意味する。
2.3.また、純粋に理論的に言えば、適切性の鑑別規準によっては、適切な「答」の内容を原理的に与えられない場合(例えば、可能な範囲が空集合となる場合)や、あらゆる「答」の内容が適切である場合(例えば、可能な範囲が有限集合にならない場合)を考えることができる。

3.かくして「問」の内容に対する「答」の内容は多様であり得る。

「問-答」の構造に関する備考

4.「問-答」という関係を了解する者は、「問」の内容が与えられた時点を起点として、「答」の内容を補完するよう出発せざるを得なくなる。この時、まず考えるべきは適切性の鑑別規準である。この検討を欠く場合は「答」の内容の多様に直面し、逡巡、彷徨することになる。
4.1.しかし、『ある「問」に対する「答」の内容を与えるに当たって、その適切性の鑑別規準として何を採用するべきか。』というのは一つの「問」である。つまり、一段階上で「問-答」の関係が生じることになり、その「答」の内容(採用する適切性の鑑別規準)を得るために、さらに一階上の適切性の鑑別規準を要することになる。
4.2.かくして、一段階上の「問-答」の関係を無限に生成できるので、「適切性の鑑別規準」を得るための手続きは無限遡行に至る。

5.無限遡行を終止する方法としては、以下の記事で記載したように、理由に依らない決断又は選好が挙げられる。つまり、不合理(理由に依らないもの)が合理(理由に依るもの)の原初にあると見立てる。

5.1.しかし、理由に依らない決断又は選好というのは、ある種の情緒である。つまり、ある時には理由なくAと言い、別の時には理由なくAではないとすることを許容する。したがって、決断又は選好は、その決断内容や選考内容の一貫性を担保することができない。
5.2.他方、以下の記事で記載したように、決断や選好以前に「定義が基準を生み、基準が理由を生み、理由が判断又は選定を生む。」という整理があり得る。語の定義に依ることになるので、一貫性の担保の観点からは有益な理解である。

5.3.このように、主体の志向(決断又は選好)と客体の指向(語の定義)とでは、一貫性の担保という観点で差異がある。「問-答」という関係において「適切性の鑑別規準」を得るための手続きは無限遡行するとしたが、「問」が「答」にどれだけ一貫性を要求しているかが、その「適切」な終止の方法を指定するかもしれない。

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