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筋トレが癌を予防する(1)

がんの宣告を受けると、今までの生活スタイルを一旦リセットして治療に専念する方がいらっしゃいます。
例えば会社に勤めていた人が治療のために休職、あるいは退職したり、これまで活発に行動していた人がショックで家に引き篭もるようになってしまったりします。
これらの行動は筋肉が衰えてしまう原因になりかねないため、がんの治療を続ける上でお勧めできません。
今までの生活を続け、なるべく積極的に行動するようにして過ごす方が良いです。もちろん無理はせず、体の負担にならない範囲です。

筋トレは健康なうちから行うことがお勧めです。
筋トレはがんの予防にも効果があるというデータが報告されています。

573人の大腸がんの女性を対象にした疫学研究の結果、大腸がん診断後に活発に運動を行なったグループはがんの再発が減っていました。
そして大腸がんによる死亡及び全体の生存率は、最も運動量が少ないグループと比べておよそ50%も改善していました。
他にも、前立腺がんや卵巣がんなどのがんにおいて診断後の活発な運動あるいは身体活動が、病気の経過を改善することが示されました。

アメリカの「食事と健康の調査」に登録された21万5000人超を対象にした筋トレなどの運動習慣と10種類のがんの発症率との関係を調査した結果、ダンベルやバーベル、あるいはマシンを用いた筋トレを行なっている人は行なっていない人に比べ、大腸がんの発症リスクがおよそ25%低いことがわかりました。
筋トレや運動はがん患者さんの生存率アップに貢献するだけでなく、がんの予防にも役立つことがわかりました。

欧米の全144万人の男女(19~98歳)を対象に、運動に費やした時間と26種類のがんの発症率との関係を調査したところ、最も活発に運動する人は、ほとんど運動しない人に比べてがん全体の発症リスクが7%低下していました。

筋トレなどの運動は、あらゆるがんの予後の改善、がんの再発防止、そして生存率の向上につながるという結果になりました。
筋トレなどの運動がなぜがん予防に役立つのかという理由については、完全に解明されたわけではありません。
現時点での推論としては以下の4つが挙げられています。
① がん発症の一因である慢性炎症を抑制する。
② 免疫細胞が活性化してがんが治りやすくなる。
③ 筋肉から放出される物質ががんを抑制する。
④ がんを誘発する高血糖の抑制に役立つ。

炎症には急性と慢性があります。
体のどこかが傷ついたときに起こるのが急性炎症で、生体防御反応として、患部に発熱、皮膚や粘膜の充血、痛みや腫れといった症状が起こり、傷は徐々に回復へと向います。
一方で慢性炎症は、全身や特定の臓器で燻るような軽度の炎症が長期に渡り続きます。この慢性炎症はがんが発症する要因になります。
そしてがんを進行させるため、炎症反応が強く出ているがん患者は早く亡くなります。炎症反応が弱いがん患者は長く生きられることがわかっています。

私たちには薬などに頼らなくてもこの炎症反応を抑える術があります。
それは運動をすることです。筋トレなどの運動には、体のほとんどの臓器や組織の炎症を抑える効果があることが確認されています。

筋トレががんを予防する(2)に続きます。

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