「王とサーカス」米澤穂信
前から気になってはいた。
以前紹介した「満願」とともに2年連続”このミステリーがすごい”で1位を獲得していたからだ。
ただ、あらすじも何も知らず、題名の字面で勝手に幻想的な小説を想像していた。
また購入した理由が雑で。。
漫画の全巻セットを購入した時に、あと少しで送料無料になるからと追加で購入した古本だ。
そんなだからすぐに読むということはなかった。
積ん読、の中から本を選ぶ時、その時なんか疲れていたんだろうね。
SFは設定を理解するのがタルい、海外小説は翻訳の文章を読むのに力がいる、となって高校生が活躍する小市民シリーズの記憶が頭にあり、読みやすいだろうと勝手に想像して読み始めた。
王様とサーカス団がいる世界観で、ミステリーが起こると思ってた。
全然違った。
そのせいで最初は戸惑った。戸惑ったのだが途中で止めることが出来なかった。
あらすじ。
舞台はネパール。
主人公は女性で、フリーの雑誌記者。
観光記事を書くために現地に前入りしていたら、ネパール国王が殺されるというショッキングな事件と遭遇する。
犯人は皇太子。
(これは実際にあった話で、その後ネパールはかなり混乱し、最終的に王室が消滅した、というのを後で調べて知った。)
そんな実際の事件によって情勢が不安定な街で、主人公はある殺人事件と遭遇する。
殺されたのは彼女が国王殺害事件の取材を申し出た軍人。
この事件は国王殺害事件と関わりがあるのか、それともなにか他の理由が、もしかして自分が取材した為に殺されたのか?
海外の事件に対し、外国人という無関係な立場から不幸を飯のタネにする、記者という仕事に大義名分はあるのか?ジャーナリズムとは一体何なのか?
そういった悩みを抱えながら彼女は事件の真相に迫るという内容。
本の半分くらいまでは、ジャーナリズムに対しての思いと王の殺害による不安定な情勢、そして主要な登場人物たちとの日常が描かれる。
幻想的でショッキングな事件が二転三転するかなと期待していた自分にとっては、ちょっと現実的すぎる内容。
まるで社会派と呼ばれるリアリティを追求したミステリーを読んでいるような。
でもこの作者の文体が性に合うのか、すらすら読み進めることが出来た。
ちょっと不思議な感覚だった。
事件の真相に迫るところでは、他の作品のような本格的な謎解きが繰り広げられて、あれ!?面白い!!なにこれ!?ってなった。
米澤穂信、読むたびに印象がころころ変わる。
あなどれんなぁ。