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「怖ガラセ屋サン」澤村伊智

最近のホラー小説界では一番大好きな作家が、本作の著者”澤村伊智”だ。
映画「来る」の原作、「ぼぎわんが来る」を読んでその面白さにひきつけられ、その後何作も読んだ。
ハズレが無い。
いつしか新作を待ちわびるようになった。
そして大好きな作家だと陥る状態なのだが、刊行されている作品、全部読んじゃうと楽しみが減る!!となり、読み渋るようになった。
常に2作品ぐらい未読があるのが安心する。
ちょっと変な性格。。

amazonのkindle、期間限定セールを探しをしていると本作が出てきた。
これはお得すぎる!!とすぐにポチった。

面白かった。

本作は短編集で、”怖ガラセ屋サン”と呼ばれる女性が、過去に悪いことをした人への復讐を、依頼を受けて遂行するというお話。
各話で趣向を凝らしている。
読み進めて行くと、今回は誰が標的となるのか、どういう怖がらせ方をするのか、ミステリー的な要素をホラーに組み込むのが上手な作者なので、それらがすぐにはわからない。
どういった展開になるのか楽しみになる。

という面白さの他に、ちょっと気になる要素がある。
この要素によって、面白いのだが、どこか全体的に霧がかかったような、作品の輪郭がつかめない不思議な雰囲気があるのだ。

それは何かというと、怖ガラセ屋サンの正体。。

本作、怪異が出てくる話と出てこない話がある。
この怖ガラセ屋サンについても、超常的な存在なのか、体をもった現実の人間なのか、が明記されない。
人間が怖い話なのか、怪異・心霊系の怖い話なのか、その境界線が非常にあいまいなのが、どこか作品の全体像をぼんやりとさせる。
すごい目くらまし。

基本、人が出てきて、怖がらされて、怖ガラセ屋サンによって過去の悪行が見えてくる、というお決まりのパターンでなのだが、どこか安心できない。
ふわふわふわふわと、怖いのだ。

本作の中でも恐怖の本質は”わからない”ことなんじゃないか?みたいな考察が出てくる。
この本自体に対する考察が作中に書かれている、メタな展開かと思った。


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