読書感想③『ゾアハンター』
「失望はさせない」
そう、作家が言い切る。
これは、男のロマンが全部詰まった小説だ。
この物語は、レースから始まる。
選手たちは、二輪のバイクだって危ないのに、一輪車にエンジンをつけたトンデモなメカを駆使する。
レースと言っても、ただスピードを競い合うものじゃない。攻撃が、可能なのだ。
物語は、少し年のくった新人ライダーが、そんなレースで圧倒的な勝利を収めるところから、始まる。
じゃぁ、そのライダーがレースで勝ち上がっていく話か、というとそうでない。
彼は、黒川丈は、その後、策謀が交差する事件に巻き込まれ、頭以外を失いサイボーグになる。
ぶっ飛んでる。
そう、ぶっ飛んでる。
彼を伸したのは、新しい生物、ゾーン。
環境問題と、人類の将来を解決するべく、遺伝子改変が進められた。ちまちま注射なんかをして肉体改造をしていられない。だから、「感染」によってその版図を広げるように設計された。
その結果、生み出された生物が、研究所から逃げ出し、密かに増殖した。
その生物は、ゾーンという。
ゾーンは個体自体が進化をし、飛ぶ必要があれば翼を持ち、人を切り裂く必要があれば強靭な爪を持つことができる。
ただし、その代償に多大なエネルギーを要する。
そして、ゾーンは人を襲うようになる。
襲われた人は、感染し、食べ残しの肉片から身体を再生させてゾーンになる。
もちろん、人間が母体となった彼らは知能をもつ。
つまり、バイオハザード。ただし、凶悪ゾンビには知能アリ。
そして、ゾーンに対抗できるのは、抜群の格闘センスを持つ黒川丈、ただ一人。
彼を、ゾアハンターと呼ぶ。
アツい。
アツいとしか言いようがない。
戦いに生きることを選んだ男が、その戦いの果てに何を得るか。
これ以上の、ネタバレはしたくない。
だから、自分の目で確認してほしい。
何せ、作家自身が「失望はさせない」という物語なのだから。