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日曜日、昼下がり、赤ワイン、曇天

 今日はめずらしく仕事の休みが重なった日曜日で、夫と二人で過ごす休日は四週間ぶりだった。四週間空いた話は、また別に書きたいと思う。

 昼を過ぎて、私たちは赤ワインを開けた。もう誰も、アルコールを飲んでも咎めるやつはいない。早々に乾いた洗濯物を雨が降る前に取り込んで仕舞い、グラスを片手にそれぞれのことをしている。私は「note」、奴はSwitchでモンハン。

 キーボードを叩いていると、「何。どうしたの、仕事?」とのたまう。

 ううん、ごめん。きみのことを書いてるんだ。


 夫と知り合ってから実際に交際に移る間は、一年くらいの時間があった。その間私は夫のことを「勧誘に来ておいて名乗りもしない、いけ好かないやつ」と思いながらも、大学のゼミで一緒だったちょっと憧れの男子に雰囲気が似ているという、ただそれだけで気になる存在だった。消防団に入団してみると、夫は副分団長というちょっと偉い立場の人間で、後に「図書館に勤める、変わった女の子。役職柄、新入団員には気を配っていた」くらいの認識だったと聞いた。面白くないから、端折る。

 つき合い始めたのは、一月の分団幹部の旅行に、新入女子団員の私ともう一人の女の子が同行し、ひょんなことから夫と二人きりで刀剣展に行ったことがきっかけだった。

 旅行からつき合うまでは実にスムーズで、二人きりで出かけた最初のデート時に「結婚を前提につき合ってくれ」と告白され、いったい私たちの間に何が起こったのか不思議なくらいの展開だった。スムーズすぎる展開と、瞬間湯沸かし器みたいな、次々とささやかれる甘い言葉のオンパレードに、私の頭はくらくらした。


 当時、三十四になる夫と、二十五の私。年の差、九才。

 きっと、彼の心臓のほうが、先に止まってしまう。

 そんなことを、ぼんやりと思った。


 交際期間も、結婚した今でも、ジェットコースターに乗っているかのような、アップダウンを繰り返している。

 大学時代の友人には「お前たち、なんで結婚までしたの」と笑われる。


 昼下がりはいつの間にか夕方になり、雲が空を覆い始めた。ねこは自分のベッドで社長のような貫録で、目を細めている。しゃちょー。まさに、我が家の社長。あなたを差し置いて、もうどこへも行けないもの。



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