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【日々】地上の明るさにやられたとき

Netflixにてようやく観た『ちひろさん』の、
[50:30〜]のシーンに、ハッと。

それは、
元風俗嬢で、海辺の小さな街にある弁当屋で働く"ちひろ"へ、
ちひろが務めていた風俗店の元店長"内海"が電話をかけた場面。

⚪︎⚪︎⚪︎

 ーこれからバジルと飲もうって話になってんだけど3人で飲まない?

あ〜 今無理
水の底にいるから

 ーフッ
  しょうがねえなあ
  じゃあま しばらく沈んどけ
  人の体は浮くようにできてっから

フッ
それって死んだら浮かぶって話?

 ーいや生きてようが死んでようが浮かぶでしょ
  もがかなければ浮かぶんだよ
  ジタバタするから沈むんだって

  じゃあ浮いてきたらどっか連れてってやるよ
  お前どこ行きたい?

⚪︎⚪︎⚪︎

"内海"役のリリー・フランキーさんの、電話越しの声がまあ格好いいのなんの、、、

関係値あってだろうけど、
"ちひろ"に対して親身に寄り添うわけでもなく、粗雑に扱うわけでもなく、自由に泳いだらいいさ的な、その人自身を見つつも、ラフに飄々とした関わり合い方に憧れるなぁと。。。
 
 
話変わって、
同時期に読んだ『あなたのための短歌集』

の、
p.40「頑張らなくてもいいんだよと思える短歌をお願いします。」へのアンサー短歌。

世の中や現状を、"もがくほどしずむかなしい海"と言い表しているのが、切なく冷たい印象だけれど、今がしんどい人にとってこれほど的を得た描写はないんじゃないかな。

 
「水の底」に「しずむかなしい海」。
もがかないほうがいいのはどうしてか。

それは、底に近づいている(気力が尽き始めている)状態で、もがく(追い討ちをかける)と浮上できたとしてもまた、いや今度はもっと沈みかねないから。
もしかしたら沈んで動けなくなるかもしれない。
 

Chevon の「マイペース」。
いま人に影響されて焦ってないか自分??ってときに、毎度毎度ストッパーになってくれる歌。

       生き急ぐことなんてないのにね
  周りを見て焦って返って空降って
  藻掻いて吐いた息の深さに
  足を取られて
  溺れてしまわぬよう
  涙が溢れてしかたない夜

 

底にいるのは良くないわけでなく、
ただただ底にいるだけ、それだけのこと。

海上から景色が変わって大いに戸惑うかもしれない。キラキラ泳ぐ人たちに追いつこうと、自分も周りから尊敬されたいと急きたくなる。


けれど底にいるから、誰かの宝物を発見したり、砂を歩く生き物を愛でたりすることができる。
海上の様子や生き物は一旦知ったこっちゃない。

いま水の底なのかも、と思ったときは
水の底で楽しみを見つけて、面白がる。

上がり下がりを繰り返しながら、
たくさんの泳ぎ方を知る oO

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