海の上の放物線 #海での時間
1997年 夏 私は天国にいちばん近い島で数日間を過ごしました。
そこはニューカレドニア、南太平洋に浮かぶ小さな島
「ニューカレドニアのラグーン:リーフの多様性とその生態系」
として、2008年に世界自然遺産に登録されています。
(ニューカレドニアはフランス領なのでフランスの世界遺産になります)
豊かな海が育んだ珊瑚礁群と希少な海洋生物がすむ大自然
その海の色をどんな言葉で表現したらふさわしいのでしょうか。
ビジネスクラスで行くニューカレドニア6日間フリーパッケージツアー
このツアーを見つけた瞬間、私は妄想でビジネスクラスに座っていました。
たしか、JALとエールフランス航空が共同運航する記念のスペシャル企画で、ビジネスクラスにウソみたいな価格で乗れるツアーでした。
この機会を逃したらビジネスクラスなんて乗れないでしょーよ!
と、鼻息荒く友人Ⅿを誘いツアーに申し込みました。
ツアーは島に着く前、成田空港にいる時から天国気分でした。
なぜなら、ビジネス・ファーストクラス専用の待合室を利用できたからです。
そこは現在の空港ラウンジとは少し違って、床にはカーペットが敷き詰められ、ソファとローテーブル、木製の棚などがゆったりと配置されており
とても落ち着いた雰囲気の部屋でした。
(外国の小説によく出てくる、マホガニーの高級家具って感じのアレです)
その部屋には、7、8人がおもいおもいの場所でくつろいでいました。
日本人は私と友人Ⅿだけで、他の人はフランス語で話をしているようでした。
そして機内では、ゆったりした座席とさまざまなサービスがあり、
食事もコース仕立てで気分はどこぞのお嬢様でした(笑)
そんな優雅な空の旅を満喫して到着したニューカレドニアの海。
冒頭にも書きましたが、あの海の色をなんと呼べばいいのか迷います。
紺碧、コバルトブルー、ターコイズブルー、アクアブルー、などなど
海岸沿いの通りから見える海、離島のビーチの海、船から眺める海、
どの海も素晴らしく、どこまでも美しい色をしていました。
そんな美しい海をじっくり味わうために、離島のビーチで1日を過ごすオプショナルツアーに申し込みました。
その小さな島は完全にに観光の為の島で、リゾートホテルが一件あるだけ
島に住んでいる人はおらず、ホテルの従業員と宿泊客と、
私たちのように日帰りの観光客がいるだけの、のんびりした島でした。
その島に渡る為のボートは日よけの屋根が付いた小型のもので
15人ほどの観光客が乗っていたように思います。
海上をすべるボート、心地よい海風を浴びながら
どこまでも美しい海の色に魅了されていたその時
私のすぐ近くに座っていた日本人観光客の中の
ひとりのオジサンの手から放たれたそれは
私の目の前でゆっくりと放物線を描いて
どこまでも美しい色をたたえる海へ、のみ込まれて消えました。
人は、本当に予想外の出来事に遭遇すると言葉を失います。
まさか、こんなに美しい海にタバコをポイ捨てするなんて・・・
そのオジサンはなんの躊躇もなく、無意識にいつもの行動をしたのでしょう
無意識、無自覚のもたらす習慣とはおそろしいな、とその時思いました。
今も美しい海をみると、あの放物線がスローモーションで蘇ってくる忘れられない海での時間です。
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