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【最新作云々53】みんな、汚穢から生まれて汚穢に帰るんだ... ハリウッドの特殊効果の第一人者が三十余年を費やして己の脳内をぶちまけた阿鼻叫喚のストップモーションアニメ映画『マッドゴッド』

 結論から言おう!!・・・・・・こんにちは。
 "13日の金曜日"といえば言わずと知れたジェイソンですが、以前英会話教室に通っていた頃に講師のお兄さんに「ジェイソンといえば『ジェイソンX』の出来が特に酷いから是非一度観てみて」といわれた覚えのある、O次郎です。

遂にジェイソンは宇宙へ・・・といっても宇宙空間じゃなくて
宇宙船内だからビジュアル的には"狭い陸地"ってだけだけど。
恐らく、誰もが脳裏には浮かびつつもあまりにお粗末ゆえに
手を出さなかったのをやっちゃったパターン…。

 今回は最新の洋画『マッドゴッド』です。
 旧『スター・ウォーズ』シリーズに始まり、『ジュラシック・パーク』や『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズの特殊効果を担った鬼才フィル=ティペットが1990年に着想して以降、自宅をスタジオとしつつ、クラウドファンディングも重ねて遂に作り上げた全編ストップモーション・アニメによる地獄絵図にして彼自身の脳内宇宙そのもの!!
 グロテスクな生物たちの饗宴に、巨大で暴力的な機械群に撒き散らされる命の血飛沫・・・全編セリフ無しの物語ゆえにただただ目の前で繰り広げられる狂気の世界にクギ付けになれます。
 サイケデリックでパンクな人形アニメーションの世界をどうぞご照覧あれ。
 それでは・・・・・・・・・"タルピー"!!

※人形アニメーションというかクレイアニメーションだけど…個人的に思い出すのはコレか。長寿作品なのかと思ったら意外にそうでもなかったっていう。まぁ、造るの大変そうだもんね。



Ⅰ. 作品概要

※Wikiのページが存在しないため、映画公式ページをご参照ください。

(あらすじ抜粋)
「天国よりも地獄に惹かれる」と語る天才ティペットの潜在意識から溢れ出したのは、かつて誰も見たことのないダークファンタジー。孤高の戦士アサシンが荒廃した地下世界に潜り、拷問された魂、老朽化した地下壕、蠢く不気味なクリーチャーたちのあいだを巡っていく。グロテスクなその質感の全てに生命力と共感が宿っていることに、驚きを禁じ得ない。地獄の向こう側の狂気に到達した時、あなたは何を目撃するのか。脳がゲシュタルト崩壊する、未踏の84分間を全身で体感せよ!

 というわけで、非常に簡単に言ってしまうと"地獄めぐり"をただただ眺めて刮目して楽しむ作品です。
 描写や展開それぞれの意味性を考えるのではなく、目の前の異形がどのように動き回ってどのように"中身"をぶちまけるのか…そんな作品です。(*´艸`)
 デジタル全盛の世の中に気の遠くなるような歳月を要して一コマ一コマ紡ぎ出された画面は細部まで凝りに凝っており、またそれだけ造り込まれた事物やキャラキターを盛大に弾けさせるので、エコとかSDGsとかいう概念にも真っ向から喧嘩を吹っ掛けているような異端中の異端作。
 意味やメッセージを考えるような作風ではないですが、上記のような細密でサイケなビジュアルに加えて耳障りな金属音のノイズ(さながら『鉄男』のような)が奏でる不協和音音楽との相乗により、何度でも観たくなるような危険な中毒性も秘めています。

冒頭の地獄へ降りていく戦士のシーン。
途中までは彼が異形の化け物とトラップの中を潜り抜けて深奥に潜っていく
アトラクション的スペクタクルなのですが、その最中で憐れ肉塊となって以降は
観客の感情移入のしようが無く狂わされます。
・・・どうでもいいけど『バイオハザード』シリーズのハンクっぽい?
地獄に潜る潜水艇。
細部のボタンやレバーまで驚きの精巧さに加え、
重力振やドアの重みまの"演技"までバッチリ。
地獄で蠢く異形のモンスターたち。
冒頭の戦士が彼らから逃げ回る図のみならず、
地獄で大量に生み出されるウンコ人間たちを蹴散らしていく構図も。
ウンコ人間が蹴散らされてウンコに却ってまた…という輪廻がエグイ。
そしてモンスターたちの"表情"の豊かさにも目を見張るものが。
それぞれの登場の仕方や光の当て方によって巧みに"演出"されています。
さらに男の子のロマンのモンスター同士の対決もバッチリ。
身体中の肉と骨を軋らせながら周囲の構造物を破壊し、雄を競います。
財宝や植生といった動物以外の造形も実にケバケバしい色使いで相当にドラッギーです。
アクセサリー類が幼児の玩具そのままに安っぽいのがこれまた下品な世界観にピッタリ。
醜悪な中にもどこか愛嬌を感じるクリーチャーも。
目玉のみならず髭や眉毛も質感が細やかでチープさを感じさせません。
そして中盤でティペット監督ご本人もちゃっかり登場。
マッドドクターとして被検体の体内を掻っ捌いてグロテスクな嬰児を取り出します。
手術用手袋にべったり滴る血糊がなんともおぞましいことおぞましいこと…。
基本的に小サイズの人間体は大量に整然と生み出されて行進しつつ、
モンスターに喰い散らかされたり踏みつぶされたり、あるいはプレス機に巻き込まれたり。
そこからまた大量に生み出されて何事も無かったように徘徊する姿には
命の尊さなどどこへやら、という。
電飾や電流ギミックもかなりの迫力で、
しかもその場で大概ショートするので大盤振る舞いも良いところ。

 というわけで物語の推移というものが極めて気迫なのでそのヴィジュアル的な妙味をダイジェストでお伝えしましたが、この強烈さは論より証拠、スクリーンや後のソフト化、配信で是非とも観てもらいたいです。
 これだけの大作をほぼ独力で作られていたのでそりゃ~30年は掛かるだろうな、というところですが、もしこれが2000年前後にフルで完成して広く世の中に出されていればアナログからCGデジタルへの移行がもっと緩やかだったかもしれません。
 それぐらいのアナログの可能性と拡がりを感じさせる作品です。



Ⅱ. おしまいに

 というわけで今回は最新の洋画のストップモーションアニメーション作品『マッドゴッド』について語りました。
 "独力の驚異のクオリティーのストップモーションアニメーション"ということで『ジャンク・ヘッド』を連想される方が多いかと思いますが、あれの希望成分を全て抜き取って地獄を注入し、体液・分泌物・吐瀉物を全体的にまぶしたのが本作、という具合でしょうか。

 数ある芸術作品の形態の中でも、これだけ制作者の頭の中が丸ごと反映された世界はそう無いのではないかと思いますし、なればこそこのマグマを一度は体験する価値有りかと思います。
 最近は記事の文字数がやたら長くなりがちなので今回はこのぐらいにて。
 それでは・・・・・・どうぞよしなに。




ちなみに僕は2022年最後の劇場で観た見納めの映画がコチラでした!!
・・・強烈だったものの不思議と夢に出て魘されるようなことは無かったですよ。( *¯ ꒳¯*)

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O次郎(平日はサラリーマン、週末はアマチュア劇団員)
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