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BIGYUKIのライブに行ったら、音楽の本質に気づいた

ブルーノートにBIGYUKIのライブを観に行ってきました。BIGYUKIのライブはもう何度も観ていて、これまでの全てのアルバムを持っていて、ここ数年僕のとても好きなアーティストの一人です。

BIGYUKIを知った時のこと

BIGYUKIを初めて知ったのは2018年の今頃の時期。

当時、「ありきたりじゃない、新しいことやってるジャズミュージシャンいないのかな〜」と思ってググってみたことがあり、その時に出てきたサイトで上原ひろみやロバートグラスパーに並んで「BIGYUKI」という名前があって、日本人?どんな音楽やる人なんだろう、と思ってYouTubeで動画を探してみました。

その時観たのが確かこの動画。

大量のシンセに囲まれて、それを演奏、というか操作する姿がまるでDJみたい。ルックスもファッションもカッコいい!それがBIGYUKIの第一印象で、動画のライブを観ていく中で、ジャズなのか?違うと思う、けどジャズを感じる、という不思議な音楽性で同時にエレクトロニックミュージックにも通じる雰囲気、一気に興味が湧きました。

そのまま渋谷のタワレコに行って彼のアルバムを2枚まとめて購入。その時すでにリリースされていたのが「Greek Fire」と「Reaching from chiron」で、その中にあったこの曲に最初にやられて2枚とも鬼リピして聴きました。

アルバム収録曲もマトリックスやターミネーターが元ネタというタイトルをつけるセンス、全体的にダークな雰囲気で壮大さを感じる空間処理。そして破壊的なシンセベースのサウンドと繊細でクラシックのルーツを感じさせるピアノという相反する要素が同時に存在する楽曲構成と、僕の好きなコンセプトが全部入り。

すっかりハマってしまって色々調べるうちに、ちょうど近い時期に来日公演があると知って速攻チケットゲット、平日の月曜から渋谷のWWWに行きました。

ライブがとにかくヤバい

初めて生BIGYUKIを観た時は度肝を抜かれました。

出てくる音の説得力の強さ、腹に来るビートと低音、聴き込んだアルバム曲ももはや原型を留めていないくらいにリアルタイムに変化していく巧みなインプロヴィゼーション、生楽器の演奏とシンセの電子音とサンプリング音が入り乱れてどこまでが人間でどこからが機械か分からないハイブリッドなサウンド。

一言で言うと、ジャズの精神でエレクトロニックミュージックを人力でリアルタイムに構築している音楽。

まるでマイルスデイヴィスが「Bitches Brew」の頃にやった、インプロとセッションを織り重ねて壮大なストーリーを紡ぐというコンセプトを、現代のフォーマットで再構築したかのよう。

おまけに当日はステージ後ろにVJが付いてたんで、映像の壮大さも相まって「すごいものを観てしまった」という強烈なライブ体験。

確かにこれは「新しい音楽」だ、と思い、この時からすっかりBIGYUKIのライブに中毒症状を起こしてしまいました。

その後は代々木上原のOPRCTのこけら落としライブ、ブルーノートで1回、ビルボードでソロパフォーマンスを1回に、今日のブルーノートと計5回もライブを観て、その度に他のアーティストではなかなか得られない刺激と気づきをもらっています。

BIGYUKIの音楽はダンスミュージックに通じる

↑これは今回の来日公演でやった「Soft Places」という曲で、今日のライブはこれを含めて「Freshly squeezed」「Nunu」「Simple like you」「LTWRK」「Watermelon Juice」などの既存曲に、現在制作中のアルバム(!)の制作途中の曲をいくつか、というセットリストでした。

今日のライブで改めて気づいたことはいくつかあって、

ギタリストのランディが、セットのほとんどの場面でギターを弾かず、サンプラーでボーカルチョップを出すことに徹している姿がまるでDJのようだったり、ジャズ的なソロ回しのようなものはほとんどなく、モチーフを元に展開させていったりドラムとシンセベースだけでグルーヴする様などはダブステップやハウスにも通じる、ダンスミュージックの要素を感じさせるものでした。

(↑の「Soft Places」の動画を観てもらえば僕が言わんとすることは何となく伝わるんではないかなと思います)

6月に観にいったPolyphiaも、BIGYUKIとは何もかも違うバンドですけど、ヒップホップを思わせる低音とフューチャーベースのようなグルーヴを感じたので、僕はそういう、電子音楽を独自解釈したように感じるバンド演奏が好きなんだと思いました。

大量のトラックより一音の説得力

あとは、冷静に考えるとBIGYUKIバンドの音の少なさに改めて気付かされました。

BIGYUKIの右手のシンセと左手のシンセベース、またはピアノ。ランディのギターとサンプラー、それにジャリスのドラム。パートとしては実質6パートで、その中で音色の切り替えはあるものの、3人でリアルタイムに出せる音数には当然限界があり、

なのに音楽としてスカスカなんてことはなく、立体感と説得力があって、

1曲で60トラック以上は普通に使う僕の曲に比べて、なんて音楽として豊かな印象があるんだろう、ということを帰り道に考えました。

説得力のない音が数字で言うと1だったとして、1+1+1と重ねても結局3にしかならず、一方でBIGYUKIは最初から1パートが10以上で鳴っているようで、だから6パートしかなくても実質60トラック以上の音楽的な情報が詰まった楽曲に鳴っている、と感じました。

現代のDAWを使った音楽はひたすらトラックを重ねる傾向にありますが、それとは真逆にいるライブパフォーマンスがシンプルでいながら音が強い、という事実、音楽の本質を改めて実感したことは、家で制作ばかりしてたら気づかないことだな〜と思いました。

というわけで、僕がやっている音楽とは全く似通っていないけど、BIGYUKIのライブには毎回色んな音楽的インスピレーションをもらっています。

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