もしも今DTM歴0日に戻れたらこうする
元々はバンドでベースを弾くのが中心だった自分が、作家になりたいと言ってDTMを本格的に始めてそろそろ3年が経ちます。
その間にシングル8作、アルバム4作、提供してきた曲たくさん、といっぱい曲を作って、色々試行錯誤もしてきました。
※こんな曲を作ってきました↓
機材にしても制作テクニックにしても最初の時点から情報収集をして、個人的にはいい選択をしたつもりでしたが、今振り返って「これはなくても良かったな」「最初からこうしていれば良かった」ということはいくつかあります。
それを踏まえて、もしも今DTM歴0日のスタート地点にいたら、こういう機材の選び方をしてこういう技術の身につけ方をする、というのをまとめてみます。
コロナ初期に比べたら、音楽制作始めるぞ!という人はだいぶ少なくなってきたと思うんですが、これから始めたい、始めたばかり、という人でしっかり頑張りたいという気合の入った志高い人が、より良いルートで音楽制作の道を進めるように解説します。
機材編 -DTM歴0日ならこう選ぶ-
初心者の機材の選び方で基本的な方針は「できるだけ使ってる人が多い、市場シェアの高いものを選ぶ」がおすすめです。
大勢が買ってるなら売れてるわけだし、売れてるなら品質にも投資が出来るしサポートも手厚いし、何かトラブルがあった場合にネットで他のユーザーが情報を出してる確率も高いわけで、機材選びはDTMに関しては長いものに巻かれた方がいいです。
DAW
選び方① 好きなアーティストが使ってるものを選ぶ
DTMの中心はDAWなので、まずDAWを選ばないといけないんですが、正直どれ選んでも曲は作れるので、好きなアーティストが使ってるものと同じものを選ぶといいです。
画面開いて自分がテンション上がるものがその人にとって一番いいDAWです。
澤野弘之さんが好きならLogicですし、
中田ヤスタカさんが好きならCubaseでしょう。
僕みたいにIlleniumとか海外のエレクトロニックのプロデューサーが好きなヘッズならAbleton、
どこぞのボカロPが好きならStudio Oneにしておけば、憧れの人と同じ画面!という優越感もあって曲作るのが楽しみになるかもしれません。
選び方② 持ってるPCのOSで決める
好きなアーティストが何使ってるか分からない、という場合は持ってるPC(または買おうとしてるPC)のOSがWindowsかMacかで選べばいいと思います。
個人的にWindowsにするならAbleton、MacならLogic一択です。
Cubaseとかそれ以外のDAWは僕が使ったことないのでよくわからないというのと、この2つにした理由はどちらも標準音源やエフェクター、サンプル音源が充実してるから、ということです。
AbletonならMacでも動くんですが、LogicはMacじゃなきゃ動きません。OSとの相性や、一度買えばMac OSのアップデートと一緒にアップグレードされたりもするLogicはMacユーザーなら買いです。他に比べたら安いし。
あとGarage Bandはやめましょう。Cubase AIのような機能制限ついた無料版みたいなのもダメです。「無課金勢です」とか言って機材に投資しない人をSNSでもこのnoteでもたまに見かけますが、そういう人の曲が音楽的にもサウンド的にもクオリティ高いものだった試しがありません。
真剣に取り組んでいたら、自分の曲が悪い音だったり、自分のしたいことに制限が加わる状態はとても受け入れ難くなるはずです。
無料のDAWはトラック数とか内蔵音源とか、何かしら制限が加わってることが多いので、ちゃんとやるならちゃんとお金払ってフルで機能を使えるようにしておけば後々困らないです。(その点でもLogicはグレードがないので初回払い切りでフル機能使えるのでおすすめ)
オーディオインターフェース
これもぶっちゃけ何でもいいんですが、僕だったらAudientのiD14がおすすめです。今自分が使ってるから、というのが理由ですが、初心者に戻ったとしてもAudientを選ぶと思います。
値段を考えたら他より一頭抜けたサウンドクオリティだと思います。また、内蔵のマイクプリアンプが優秀でギターやベースを弾くタイプの人なら黙ってAudientにしとけ、と思います。
世間的にはSteinbergのUR22CとかFOCUSRITEのScarlet Soloとかが入門機としては人気みたいですね。見た目がテンション上がらないので僕は選ばなかったんですが、品質的にはどれも必要十分ですし、最初はそのくらいのノリで選んでいいです。
スピーカーとヘッドフォン
モニター機材も色々蘊蓄はありますが初心者だったら多分音の違いなんてそんなにわからないので、これも難しく考えず楽器屋さんに行って、実機に自分のスマホ繋がせてもらっていつも聴いてる曲を流してカッコよく聴こえたものか、机に置いて見た目に萌えるやつでいいです。
そういう意味では、僕は初心者に戻っても今使ってるJBLを選ぶと思います。低音が嘘くさくなくて大好きです。
世間ではYAMAHAのHS8とかも人気みたいなのでそっち選んでもいいですが、僕は音が平坦すぎるように聴こえて無理でした。
ヘッドフォンはSONYのMDR-CD900STを「業界標準はこれだから」という理由で選ぶ人が多いんですが、あのヘッドフォン聴いてて辛くないですか?音が平べったくてカリッカリで、僕は聴くのが辛いので選びませんでした。
モニターヘッドフォンということならオーディオテクニカのM50xを選ぶと思います。これも世界レベルでベストセラーなモデルです。
MIDIキーボード
最初は打ち込みはマウスでポチポチするでいいと思うんですが、後々考えるとMIDIキーボードは欲しいです。KORGのmicroKEY2の37鍵がおすすめです。
実際自分も使ってました。コンパクトなので、その後、本格的なキーボードを買ったとしても、持ち運び用のサブとして活用できたりもします。
音源(生楽器系)
最初はDAWに入ってる標準の音源でもいいんですが、何曲か作ってみて好きなアーティストの曲と聴き比べて「うわっ…、私の曲、音悪すぎ…!?」と思うようになったら、まずKOMPLETEを買いましょう。
それも、SelectとかStandardではなくUltimateを最初から買います。Ultimateでなければ入っていない良い音源が多すぎるからです。お金がないならStandardにしてゆくゆくUltimateにアップグレードでもいいですが、Selectを単体で買うのは安物買いの銭失いというやつです。
(僕の場合、実際には13Selectから13Standard、13Ultimateへアップグレード、さらに14CollectorsEditionへクロスグレード して行きましたが、本当に無駄でした)
Xに流れてくる某DTM柴犬のアカウントに「これは買いやで」とか言われて都度都度セール品を買う必要は全くないのですが、音質として投資すべきところは投資した方がいいです。音源の世界で生楽器系は特にお金をかけたらかけただけのものが返ってきやすいカテゴリです。
僕が初心者に戻って音源を買うならまずKOMPLETE14 Ultimateを真っ先に、ブラックフライデーかGWのセール時期を狙って買います。
※2024年9月11日時点、何やら15も出るみたいですね。今なら15の方がいいです。
ピアノ、エレピ、ストリングス、管楽器、ベース、アコギ、劇判的なテクスチャー、民族楽器、FMシンセ、ギターアンプシミュレーター、リバーブやディレイ、サチュレーターなどのエフェクター…、とりあえず一通りの楽器が一定以上のクオリティで一気に揃います。
音源(ソフトシンセ)
LogicもAbletonも、標準搭載のシンセはなかなか悪くないんですが、何か足すとしたら今ならVitalを選びます。無料でそこそこいい音だからです。
人気のあるOmnisphereでもいいんですが、今っぽいEDM系のサウンドとかだとVitalのようなウェーブテーブルシンセにしておいた方がそれっぽい音は出しやすいです。
Vitalがたまにバグったりおかしいなと感じてそれがストレスになったら同じウェーブテーブルのSerumを、ちゃんとお金出して買うのがいいです。
理由は音作りが視覚的にやりやすい、わかりやすいシンセだからです。SpliceのRent to Ownという仕組みで月賦で買うのが、ドカッとコストかからなくていいです。
あとはアナログシンセをシミュレートしたもの(Sylenth1とか)も1つあるといいですが、まずはメインシンセを1つ決めてそれを使い倒すのが初心者にはおすすめです。
音源(ドラム)
ドラムもお金かけたほうがいいところではあるんですが何を選ぶか悩みどころです。無難なのはAddictive Drumsですね。生楽器系音源はストレージの容量を食う上に動作が重いことがあるんですが、Addictiveなら容量もほどほどだしサクサク動いてくれるのがおすすめポイントです。
スネアとキックはなかなかリアルでいいものの、シンバル系の金物はちょっと弱いな〜と思うAddictive Drumsですが、最初に買うドラム音源としては十分だと思います。
一番おすすめな買い方は好きな音色を3つ選べる「Addictive Drums 2 Custom」を選ぶことです。これを選んでStudio Pop、Metal、Percussionを選んでおけば一通りのジャンルは対応できると思いますし、実際僕はそうしました。
マイク
歌を自分で入れるというケースもあると思うので、マイクも買う人もいるでしょう。ガチでやるならコンデンサマイクを、ケチらずに買いましょう。僕ならAKGのC214を買うかなあと思います。
ぼくがかんがえたさいきょうのDTM歴0日目の人向け「機材はこの順番でこれを揃えろリスト」
PC:Macbook Air M1(をApple認定整備品で購入)
WindowsならマウスコンピューターあたりのBTOパソコンをスペックちょいマシで買うとMacよりは安いと思います
DAW:AbletonかLogic
オーディオインターフェース:Audient iD14
ヘッドフォン:Audio Technica ATH-M50x
スピーカー:JBL 305P MKII
マイク:AKG C214
MIDIキーボード:KORG microKEY2-37
生楽器系音源:KOMPLETE14 Ultimate
ソフトシンセ:Vital
ドラム音源:Addictive Drums 2 Custom
全部足すとざっくり30〜40万円くらいでしょうか。このくらい揃ってれば、音源のせいには出来ない環境が構築できると思います。
ボカロは専門外なのでわかりません。自分が好きな子を買えばいいと思います。AI音声ソフトに歌を歌わせたいならSynthesizer Vがゴリ推しでおすすめです。
PCからヘッドフォンまでを一気に買っちゃってそれ以降は毎月1つずつ買い足していくでもいいと思います。僕も半年くらいかけて全部揃えました。
技術習得編 -DTM歴0日ならこう学ぶ-
楽曲制作を身につける上で大切なのは、知りたいことだけ覚えるように情報を点で覚えるのではなく、体系的に基本を身につけることです。
体系的に身につけるにはやはり実際に、ゼロから曲を作って完成させるというプロセスを経験するのが一番いいです。
そして、DTMを始める前から作曲や楽曲制作の基礎を習得していることはごく稀だと思います。「それ、教えてもらわなかったら一生知らんかったわ」ということは僕自身ものすごく多かったので、最初は人から習った方が早いです。
好きな曲を耳コピしてDAW上で再現しましょう、とかもよく言われる練習方法ですが、初心者にはハードル高すぎで挫折すると思うので、まずは経験豊富なプロに手ほどきしてもらう方がいいと思います。
DAWの使い方をYouTubeで学習
DAWの操作レベルの話ならYouTubeにたくさんあるので、初日はまずYouTubeで自分のDAWの基本操作を覚えましょう。Sleep Freaksとかにそういう動画がたくさんあるので、まずはこういうものを観るといいです。
作曲・編曲・ミックスのプロセスを学ぶためにプロの個人レッスンにつく
曲作りもYouTubeで独学、という手段も全然あるんですが、YouTubeで学習する最大の弱点は「体系的に学べない」ということです。
パーツごとに動画がぶつ切りになっていて、どの順番で何を身につけていけばいいかわかりますか?初心者なら絶対正しく選べないはずです。
なので、実際の制作プロセスはプロの作家で初心者OKな個人レッスンをしてくれる方をググって探してお願いするといいです。
さっきのSleep Freaksでもそういうレッスンはしてくれるみたいですし、法人のスクールではない個人の作家さんでも受け付けてくれる人は大勢います。ネットさえ繋がるなら自宅からリモートで受けられるところもたくさんありますから。
カリキュラムは人によってスクールによって違うと思いますが、可能ならレッスンの仕方でお願いするといいのは、完全初心者ならドラムの打ち込みから各パート作っていって、最終的に1つの曲が出来る、みたいなステップバイステップな進め方で一連の流れを経験させてもらえる教え方をしてもらえると最高です。
ある程度曲が作れる、けどクオリティに自信がないという人は、2週間に1回でレッスンを組んで、毎回お題を先生に出してもらってそのお題に沿った曲を作って添削してもらう、というやり方がいいです。僕も最初の頃この方法で一気にスキルアップできました。
いずれにしても、教えてもらう場合は漠然と「DTM教えてください☆」と頼むんではなくて、
自分がしたいこと(シンガーソングライターが自分の曲をフルアレンジ出来るようにしたいとか、ボカロPとして一人で完結させて曲を作りたいとか、BGM作ってAudiostockで売りたいとか)、
自分の課題が何か(楽器の打ち込み方が分からない、アレンジが苦手、作業スピードが遅い、ミックスが上手くなれない、とか)を
はっきり伝えてそれに対して先生の見解を聞き、カリキュラムを組んでもらえるといいです。
レッスン費用の相場は数万〜20万前後とかでしょうか。スクールだとそのくらいで、個人で受けてくれる場合は1回1万円を月2回とか、そんな感じかなと思います。
間違ってもやっちゃいけないのは、ココナラとかで募集かけて「数千円でDTM教えてください」なんて探し方は最悪です。ろくな人が来ません。教えてもらうならしっかりプロとしてメジャーの仕事の実績がある方にお願いしましょう。
あまたあるブログ記事も「初心者向け!プロっぽくなるミックスのやり方」などと言って、中身読んだら「このプラグインのプリセットを使う→別のプリセット使う→終わり→いかがでしただったでしたでしょうか?(→アフィリエイトリンク踏んでね!)」というひどいものが多いので、読んじゃいけません。
シンセサイザーの音作りはSyntorialを使う
課題が「シンセサイザーの操作、音作りを覚えたい」だとしたらSyntorialをやるのが一番いいです。以前そういう記事を書きました。
覚えるべきは「概念・仕組み」
覚えるべきは「いいプラグインがどれか?」ではなく「自分が望む効果を出すために何が必要か」という仕組み、概念です。
仕組みや概念をちゃんと理解できていればDAW標準のプラグインでも近い効果は出せることも多いですし、それさえ分かれば「自分はこれがしたいからこれが必要」という観点で機材やプラグインを選べるようになり、メーカーや代理店のマーケティングに踊らされて使いもしないストレージの肥やしにしかならないものを大枚はたいて買う必要もなくなります。
だからレッスンを受けるにしても、講師がした操作や指示に対して「なぜそうするんですか?」という質問はした方がいいです。例えば「なぜサイドチェインをかけるんですか?」→「キックを聴かせるために他のパートの音量を下げたいからです」という答えを聞ければ、「聴かせたいものを聴かせるために他をどかす」という概念を知ることができ、それ以外の部分でもその考え方で応用が効くことがあります。
こんな調子で、ここに書いた機材を全て手に入れて、書いたとおりの方法でYouTubeで基本的な部分を覚えて、6ヶ月くらいレッスンつけてもらって並行してシンセの使い方も覚えて、自分で曲も作ってみて、とやっていれば、1年もすれば十分人に聴かせられるレベルの曲が作れる人になれます。
誰かの参考になれば嬉しいです。