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かわいいに一直線に

ちょうど1年前のこの季節に、私は新卒で入った会社を退職した。
勤続半年だった。
いま振り返れば頑張れたのはたった半年ぽっちかと思うし、6ヶ月もなんとか社会人をやりきったのだなと褒めてあげたい気持ちでもある。
理由は簡単、適応障害で会社に行けなくなった。
特にこれといった前兆はなく、ある月曜日の朝、急に行けなくなってしまった。
それからは休職して、復職できそうにもなく、泣く泣く退職した。
泣く泣くという表現は半分正解で、半分違うかもしれない。
辞めることが決まった時、とてもホッとしたから。
どんな顔して戻ったらいいのだろう。たった半年ぽっちで同僚達とは十分な信頼関係を築けているはずもなく、ただただ、戻るとしたらどんな顔で? そんなことを考えては嘔吐する日々だったから。

退職してしばらくして始めたことがある。
ぬいぐるみ作りだ。
幼い頃から手芸は好きだったし、何よりかわいいものが好き。
センスも技術もないけれど、何かを生み出してみようかな。
そうして初めて手芸屋さんに向かった。
季節は秋に差し掛かっていて、ふわふわとした冬らしいボア生地なんかがたくさん並んでいた。
ベタだけど、これでクマなんか作ったらかわいいだろうな。そう思って、いくつかの布と糸、針なんかを購入した。
正直、ぬいぐるみなんてまともに作ったことがなかった。幼い頃にフェルトで作ったマスコットは平面的で薄っぺらく、また私はそれを量産するのか・・・・・・?と思ったものの、ものは試しでやってみよう!と早速作り始めた。

いちばん初めに生まれた子。少し目つきが悪い
仲良しの猫ちゃんとうさぎちゃん

作ることが楽しかった。生み出していくことが生き甲斐だった。
エックスのアカウントを作成し、他の作家さんと呼ばれる方達と交流したりした。
私にはこういう生き方があるのかもしれない。
しばらくして、作成したぬいぐるみの販売を始めた。
すごく緊張したし、お迎えされるかわからないプレッシャーもあった。
だけど続けていくうちにリピーターさんがついたり、オーダーをおねがいしてくださったりして、それがとても嬉しかった。
ついに月の売り上げが10万を超えた。
目標にしていた金額だった。嬉しかった、私はやり遂げたんだと。
ここで少し燃え尽きてしまい、それまでの勢いは失速してしまうこととなる。

ぬいぐるみが見せてくれた景色はとても広かった。
適応障害になり引きこもっていた私と社会を繋いでくれる存在だった。
今は社会復帰に向けて努力していこうと思っているが、ぬいぐるみ作りはもちろん、編み物や絵の具、粘土などにも着手してみたい。

実は編み物は着手していたりする

私と世界を繋げてくれるもの。
そんなものに出会えたことは私の財産であり、こうなってしまった私のできる精一杯であったりもする。
いつでも心にきらめきを。かわいいと思うものに一直線で。
そうやって心にかわいいものたちを抱えて、一生懸命に私らしく生きていきたい。

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