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まえがき

端的に【“白い”ねこのーと】は論争や議論についての考察を著述するものであるが,実は前身となった【“黒い”ねこのーと】なるブログがある。この記事では【“黒い”ねこのーと】に言及することによって【“白い”ねこのーと】の意義を叙述していこうと思うのだが,その前に次の略記をお断りしておきたい。それぞれ名前が長いので,基本的に以下からは【“黒い”ねこのーと】のことを黒猫本,【“白い”ねこのーと】のことを【白猫本】,或は【本書】とそれぞれ略記することがある。 また,これからたんに【ねこのーと】と書いたときは,本書のことを指すものとする。

さて,黒猫本の主目的は,言論による喧嘩や論争,もしくは議論などについての私見を整理することであり,人にその私見を伝える,わかってもらうことは埒外にあった。そのため全体的に見れば,内容もまとまりが悪く,思考整理のためだけの表現や,他人から見ればおそらく察せられないであろう文脈が散在していた。そのような意味で,黒猫本は思考の黎明期であった。

対して本書は,先述の不格好な黎明期を経て一定の体系を成した思想を,人に伝えることを意識した様式で叙述していく。つまり本書は,内容と表現いずれについても黒猫本より精緻になるように推敲するものである。 また,黒猫本では踏み入らなかった細かな話をこちらで敷衍したり,黒猫本では記していない新たな考えをこちらで記していく。

しかし,ここで次の2つをお断りしておかなくてはならない。ひとつは,黒猫本で頻出していたような「論理式」や,論理学の基礎概念などは,本書でも変わらず登場するということである。ここに関してはわかりにくさや苦手意識を感じる人が多いかもしれないが,本書とは別に【どろぼう猫の論理学入門】としてマガジンを設けることで対策を講じようと思う。一般的な論理学,特に命題論理は難しくないので,この機会に是非挑戦してみてほしい。本当は,私のような素人が書いたものより論理学入門という点で適当なものは世の中に氾濫していると思われるため,各々でそれらを手にとってもらうのも良いのだが,少なからず手間はかかるだろうし,なにより日本語で書かれた論理学の本は,その表現が四散しており,かなりの数の流派がある。(これはおそらく翻訳のせいであり,洋書ではそのようなことはほとんどないのだが…)そのため,本書で用いられる論理式の表記法と完全対応した入門書を本書のすぐ隣に私が置いておくことは,それなりの便宜が期待できる。

もうひとつは,これから本書を書いていくにあたって,その内容に鑑みていくつかのページ,テキストは有料になるということである。もちろん,全部が有料というわけではないし,有料のものを閲覧しようという際は通知と確認をまずとられるため,不本意に料金が発生するような心配は特にいらないが,無料の範囲で体系的な説明として完成するのかはまったく保障出来ない。このことは本当に,今のうちにお断りしておきたいのである。黒猫本は原則として私の思考整理のための著述であったが,本書については先述の通り内容が一定の(有機的な)系を成しており,人に伝える様式も採るため,啓蒙書としての機能が想定される。また,その内容も私が様々な経験と勉強を通して,更に度重なる思案の末に得られたものである。この完成した内容に私自身がなんらの価値も認めないとすれば,かかる経験と勉強をさせていただいた方々に対して非常に失礼だと感じるため,ご理解をいただきたい。その代わりではないが,黒猫本を書いているときに正直感じていたような「これ無料で公開するの損してる気がしないでも...まぁ,あまり人に伝わるような書き方しないし良いかな」といった抵抗は本書には一切なく著述していけるし,値段以上の質も保障する。そしてなにより,当たり前のことだが,払いたくない人は払わなくて良い。ただその場合に限っては,この本書が体系的な説明として完成することを保障しかねるというだけのことである。

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