そっち側
太陽と雨雲が交互に顔を出す季節
お鍋より素麺が食べたくなる季節
長袖でいることが不自然になる季節
ノースリーブのシャツを着ている上司
心の中で
ああ、この人は大丈夫な人なのだ。
と、心がギュッと苦しくなる季節
できるだけ袖の長めなシャツを選んで
今日も愛されてきた人間を演じる
愛されてきたから毎日笑顔なのよ
愛されてきたから戦えるのよ
愛されてきたからどんなことにも
くじけないのよ
愛されてきたから、お金の大切さを学んだのよ
愛されてきたから、我慢強くなったのよ
愛されてきたから、自分が誰よりも可愛くて
仕方がないのよ
愛されてきたから
誰にも弱音をはけなかったの
愛されるって、よく分からない
心が苦しみ悲しみ痛みでいっぱいになったとき
心が割れそうになったとき
心が生きるのを諦めそうになったとき
頼れるのは、自分の体だけで
頼れるのは、小学生の時に貰った特殊なカッターだけで
頼れるのは、自分から流れる血液だけで
心以外を傷つけて心の痛みを紛らわす
頭の悪い方法でしょう
生きたくて
生きていたくて
生き抜きたくて
仕方がなかったの。
ノースリーブのシャツを着ている私
想像する
周りの人は心の中で
ああ、この人は大丈夫ではない人なのだ。
と、思うのだろうか