デッサンじゃなくセンター試験を通ってきたぼくらのための発想力UPトレーニング
ここ数日、俗に「クリエイティブ」な職業についていない人に、どのようにクリエイティブな発想をしてもらうか、というワークショップの設計を仕事でしていた。
そのときに「非クリエイティブな人とクリエイティブな人には、どのような違いがあるのだろう」というテーマについてまたもぶつかることになる。
過去にも似たようなテーマについて考えていたけど、今日は続きとして具体的にクリエイティブな発想をする頭に鍛える方法についても考えてみたい。
美大生の発想力の源はデッサンで鍛えられた観察力
このときのnoteにはこんなことを書いた。
答えを端的に言ってしまうと、デッサンで鍛えられた「目」こそが美大生の発想力を支えているのではないか、と僕は思っている。もう少し細かく書くと、美大生はデッサンの時に再三言われた「描く対象を分解して細部まで捉えるように観察する」経験が発想のときにも活きるのだと思う。
このときに、美大生の「デッサンで訓練した、対象を細部まで捉える力」が彼らの発想力を支えていると書いた。この「観察する力」を鍛えれば、非美大生の僕らも発想力を鍛えることができるのではないかとも。
デッサンじゃなくてマークシート入試だった僕らは言葉の解像度を上げるしかない
じゃあ、デッサンをやってこなかった僕らはじゃあどうしたらいいのか。答えを端的に行ってしまうと、「言葉の解像度を高める」ということだと思う。
ある広告代理店の超一流のクリエイターの人に、いいアウトプットが出せるひととそうでない人の違いは「選ぶ言葉の解像度が高いかどうか」と言われたことがある。すごく簡単な例で言えば、冷房が効きすぎている夏の屋内にいる人を見て「寒そう」なのか「冷えている」のどちらの言葉が適切なのかをちゃんと選べるか、コーヒーの豆にこだわる人を「こだわる」と描写するか、それとも「小さな違いを発見することを楽しんでいる」と描写するか。そういった小さな言葉選びの1つ1つに現れるという。
電通や博報堂といった広告代理店のいわゆる「トップクリエイター」たちは大きく2種類に分けることができると思っている。1つは美大を出てデザイナーとして入社し、アートディレクター、クリエイティブディレクターとかけあがっていったタイプ。もう1つが、東大や早慶といった「偏差値の高い四年制大学」を卒業し、いわゆる美大じゃないけどクリエイティブな発想に秀でていたため、クリエイティブ職にあるタイプの2種類。
(すごく余談だが、電通や博報堂などのトップクリエイターは実は東大が多い)
つまり、クリエイティブな発想は別にデッサンをしなくたってできる。要はデッサンが「モノの解像度を高めるトレーニング」なのであって、非美大育ちの僕らは「言葉の解像度を高めるトレーニング」をすればいいだけなのだ。
同じ「痛い」でもacheとpainを使い分けるように
本屋でこんな本を見つけた。デッサンでの試験でなくセンター試験を通ってきた僕らは美大生に対して何を競えるかというと、覚えた熟語や英単語の数だったりする。
最近、こんな本を読んだ。
例えば、同じ「痛み」という表現であるacheとpainがどう違うのか、みたいなことをひたすら解説している本です。その本によると、頭痛のような痛みはacheだけど、擦り傷のような外傷はpainを使うのが一般的らしい。
英語は日本語と違って、客観的な言語である。日本だったら同じように「痛い!」と済ませてしまうところを英語は「ache」なのか「pain」なのかをちゃんと分けている。そういう同じ状態でも言葉を使い分ける、そんな小さな姿勢の積み重ねが先に言った「言葉の解像度を上げる」ことにつながると思う。
日常的に、言葉を正確に使い分ける癖をつけよう
デッサンをしてこなかった僕らは残念ながら「ものを見る解像度」が美大卒の人たちと比べて低い。でも一方でセンター試験のために延々と覚えさせられた英単語や、目を点にして読み込んだ現代文、すべてを「あはれ」で片付けようとする古文、そういった受験勉強の中で「言葉の解像度」に関して高いポテンシャルを養われてきたと思う。
ただし、それは意識しないとすぐに失われている能力でもある。良くも悪くも曖昧な言語である日本語をあやつる日本人の僕らは「痛み」をそのまま「痛み」と描写してしまうし、良くも悪くも曖昧にしておいても、なんとか文脈のちからで乗り切ることができてしまう。
大事なことは、そんな脳のデフォルトモードネットワークのような癖をいったん抑えること。そして、なるべく目の前の光景を正確に言語化する癖をつけてみることなのかもしれない。
曖昧にせずにきっちりと正確に言語化してみる。そんなことを毎日続けていれば、徐々に言葉の解像度が上がっていくはず。そして気づいた頃には、勝てないと悔しい思いをしていた美大生にも負けない発想力がついているかもしれない。
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