見出し画像

【陽だまり日記】はじめの鳩ぽっぽ

【朝】
朝とは、人間たちが最も忙しい時間帯である。
通勤中、ふと足元を見ると、鳩が人々の足取りに追い立てられていた。
まるまるとしたフォルムが、右、左、左、右と忙しない。
時折、ぽ、ぽ、ぐるぅと小さく鳴いていて、なんだか可笑しかった。
今日もお互いに頑張って生きましょうね、ぽっぽさんや。

【昼】
正午を迎えた私は足早に執務室を後にする。
今日はとてもさむいからと着込んだ肌着は、UNIQLOの超極暖。
優秀なこの肌着は、あたたかな執務室では苦行に近いほどの温もりを私に与え続けた。
お陰で限界が近い。
外へと躍り出ると冷気に体が整うことサウナのごとし。
私は、いつになれば冬の体温調整をマスターできるのだろうか。

【夜】
夜の電車には、人々の疲労が沈殿してる気がする。
誰もが皆、視線を落とし、スマートフォンを弄りながら、今か今かと最寄り駅に着くのを待っている。
そんな中で、なんとなく目を引く白髪の女性がいた。 
ベージュのコートに綺麗な纏め髪。
彼女は、生成色のブックカバーで包んだ文庫本を優雅に捲り、次のページへ進んでゆく。
まるで彼女だけ違う世界に身を置いているようで、ただ、穏やかだった。
とある駅に着くと満足そうに本を閉じて、真っ直ぐ前を向いて去ってく。
良い時間の流れを纏えるひとは、美しいのだと思った。


いいなと思ったら応援しよう!